38 DNA鑑定!
PPOからログアウトし夕飯を食べている最中、こんな話を切り出された。
「俺のDNA鑑定?」
「ああ。やってみないか?」
DNA鑑定とは、本当にその親の子供なのかを調べたり出来る検査である。
「えっと……それ、違うDNAが出てくるんじゃないか?」
「でも霊に取り憑かれて変化したなら、DNAと姿は変化していても遺伝子上は父さんと母さんとの子供というのは変わってないかもしれないだろう?」
確かに筋は通っていなくもない。けど、それは……もし仮に親子の可能性が否定されてしまったら、俺という存在はどうやって親子である事を証明すれば良いんだ?
DNAが違うからやっぱりお前なんて子供じゃないって言われたら? 少し怖い……
「お、おい志月。体が震えてるぞ、大丈夫か?」
「……はあ、父さんデリカシーが無さすぎ。多分志月は、DNA鑑定で親子関係が否定された時の事を想像しちゃったんだと思うよ」
姉さんが全て代弁してくれた。こういう時ありがたい。
「ああ、すまん! 別に疑ってるって訳じゃないんだ。そこから逆算すれば別の原因が見つかるかもしれないだろう?」
「……そっか、少し安心した」
ひとまず落ち着く。確かに有用かもしれない。
「それにDNAの方から辿ったり元に戻す方法を見つける、なんて事も出来るかもしれないからな」
「でも人間は専門外なんじゃ?」
「大丈夫、父さんならいくらでも伝手はあるんだ。色んな所に頼み込んでみるよ」
「父さん……ありがとう。そういう事ならDNA鑑定、受けてみようかな」
少しでも元に戻れる可能性があるなら試してみたい。
「そうか。それなら明日確かめに行くか?」
「明日?」
「ああ。今は技術が進歩して当日中に分かるようになってるからな、結果はすぐ出るさ」
「分かった。行こう」
こうして、翌日DNA鑑定をする事が決まった。
◇
翌日。父さんに連れてこられたのはとある大学。
「……なんか、もっと民間っぽい所に行くのかと思ってた」
「普通はそうだよ。今日は知り合いに頼んだから特別待遇だ」
これって職権濫用とかにならないんだろうか。まあ、使わせてもらう以上文句は言えないが。
ちなみに今日は父さん、母さんと俺の3人で来ている。姉さんは買い物があるらしい。
中に入ると、父さんの知り合いらしき人物が出迎えに来た。
「いらっしゃい、良く来たね」
「数年ぶりなのに突然で済まないな」
「なに、お前との仲だ。気にするなよ」
なんだか友情を確かめ合っている2人を見ていると、看護師さんから声を掛けられた。
「それじゃあこっちに来てね。DNAを採取するから」
そう言って母さんと2人で奥の小さめな検査室へ連れて行かれる。
「えっと、採血とかするんですか?」
実を言うと注射はかなり苦手なのでやりたくない。下手したら泣く。
「ううん。綿棒を口の中に入れるだけよ」
「たったそれだけで分かるんですか?」
「そうよ。凄いでしょ?」
そんなのできちんと検査出来るのに驚く。当然、DNAの採取は2人ともすぐに終わった。
「はい、終わり。お父さんの分ももう取ってあるから、数時間後には結果が出るはずよ」
「そうですか。ありがとうございました」
そんなにすぐ出るのか。ある意味、タイムリミットでもある。もちろん結果がどうであれ子供なのは変わらないが、それでももし違ったらと思うと……怖い。
しばらく待っていると、父さんが帰ってきた。
「いやあ、不倫なんてしてないよな? って言われちゃったよ。特徴とかも全然違うしな」
「ああ、確かにDNA検査と言ったらそうなるね。で、どうやって誤魔化したの?」
「姿については染めた髪とカラコンって言っておいた、幸い日本人顔だしな。他は適当にはぐらかして何も聞かないでくれって言っておいたよ。変な噂が流れないと良いけど」
「浮気なんてしてたら怒るからね?」
そう言って2人が笑う。当然浮気なんてしてる訳がない。出てくる結果は、2人の子供かそうじゃないかの2択だ。
◇
数時間後。父さんの友人が結果の紙を持ってやってきた。
「結果が出たよ」
「どうだった?」
「100%2人の子供で間違いない。浮気してなくて安心したよ」
「だからしてないって」
良かった……俺はちゃんと父さんと母さんの子供だ。緊張の糸が緩んで、精神的な疲れもありふらついてしまった所を母さんに抱きとめられる。
「大丈夫?」
「うん。安心した……良かった……」
とりあえず良い結果は出て、ひとしきり喜んだ後に父さんが難しい顔をする。その原因は……
「けど、DNAは元と一緒か……」
父さんが考えているのはきっと『DNA的に子供で間違いないなら、明らかに特徴が違うのはどう説明するのか』という部分だろう。普通は絶対にあり得ない。
「どうした?」
「いや、何でもない。今日はありがとう、助かったよ」
「ああ、また今度飲みにでも行こう」
「日本に居る内にな。それじゃあまた」
そう言って父さんの友人と別れ、全員で車に乗り込む。
「志月、これで間違いなくお前は父さん達の子供だ。安心したか?」
「うん、安心した」
「それなら良かった。なら次は……どうしてDNAが同じなのか、だな」
不安は1つ消えたが、今度はまた1つ謎が増えてしまった。次から次へと出てくる原因に頭が痛くなった。
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