37 体との付き合い方!
サムエルと別れた後、俺はギルドへ向かった。中へ入ると、居るのは和希だけだった。
「おはよう、数日ぶりだな」
「ああ」
実は父さんと母さんが帰って来る直前に入って以来、姉さんが帰って来るやら神社に行くやらでPPOにはイン出来ていなかった。他のメンバーには2人が帰って来た事以外は伝えていない。
「和希が助けてくれるって言ったのに結局意味が無くなっちゃってごめんな」
「あのタイミングなら仕方ないさ。それで、その後はどうしてたんだ?」
「えーっと……」
俺はあの後何があったかを説明する。
◇
「つまり、志織さんが帰ってきて、お前の家は幽霊物件で、サムエルさんが神主で、その姿になった原因は何かに取り憑かれてるせいって解釈で合ってるか?」
「まあ、大体はそんな感じだ」
「なるほどな。とりあえず志織さんには後で挨拶しに行こう。それにしても、そんな事になった原因が霊とはなあ……」
「本当に信じられないよな……まあ、この姿になった事自体信じられないが」
原因は分かったが、元に戻る方法が見つからないというのは中々歯痒い。
「それで、その……」
「何だ?」
和希が聞きづらそうに質問してくる。
「もし、元に戻れなかったらどうするんだ?」
「……その時はその時だ。そうなってから考えれば良い」
「そうか……」
本当はずっと目を背けているのは良くない……が、そうとでも言い聞かせないとやってられない。
「ただ」
「ただ?」
1つ心境に変化はあった。今の自分の体との付き合い方の事だ。
「この姿に慣れる努力は少ししてみようと思った」
「それは……大丈夫なのか?」
「すぐに戻れる可能性が薄くなったしな。しばらくはこのまま過ごさないといけないと考えたら、慣れた方が生活が楽になると思った」
実際、今は服などを変に意識してかなり精神的に疲れる生活をしている。ずっと疲労し続けたくないなら、嫌でも慣れるしかない。
「なるほど。自分で決めたなら文句は言わない」
「ありがとうな」
本当は心配なのは微妙に不安が入り混じった表情を見れば分かる。それでも飲み込んでくれた事に感謝する。
そしてこの話題はこれきりにしようと思ってくれたのか、和希が次の話題を切り出した。
「それにしても、サムエルさんが神主かあ。申し訳無いけど、ちょっと想像出来ないな……」
「だろ? あまりにも意外すぎてびっくりしたわ。まあ、PPOと違って髭は生えてないし髪を下ろしてるのもあるんだろうけど」
実際、最初は気づかないくらい様になっていた。現実との差なんてそんなもんなのかもしれないが。……俺もPPO内でくらい髪を染めてみようかな?
「でもなんというか……神主でもオフではオンラインゲームやったりするんだな」
「な、想像した事も無かったわ」
自分と全く同じ感想の和希に同意する。
「けど、サムエルさんがギルド入ってくれるならパーティバランスはかなり良くなるな。実力も申し分無いし」
「タンクが1人しか居ないのはちょっと気になるけどな。探してみるか……」
誰か居たかなあ。タンクでまだギルドに入って無いプレイヤー……あんまりアテは無いけど考えておこうか。
「まあ、サムエルのおっさんに関してもまだ他のメンバーからの了承取れてないから要相談案件だな」
「そうだな」
その後は適当に雑談をしながら過ごし、しばらく経った頃に他のメンバーが全員出揃った。
◇
「……という訳で、サムエルさんがギルドに入りたいと言ってきました」
みんなにサムエルの件を伝え、入っても良いかを尋ねる。
「うん、実力はムーンちゃんとヤマトくんが保証してくれてるし、パーティのバランスも取れるから僕は良いと思うよ。他のみんなはどうかな?」
「俺はもう聞いてるから大丈夫だ」
「私は良いと思うなー。1回会ってるし、ムーンちゃんも何度か組んでるって事だから変な事もしないと思うし」
1番変な事をしてくるのはお前だろ、とパメーラに突っ込みたくなるのを堪える。
「うん、私も大丈夫かな。パーティのバランスも良くなるしね」
ちなみに、星奈には裏で軽くだがサムエルの事は伝えてある。すぐに信用したのも俺が実際に会ったことがあるからだろう。
「それじゃ、決まりですね。後で私からサムエルさんに伝えておきます。いつ合流出来るかとかも今度こっちに伝えますね」
「うん、頼んだ。それじゃ、後は自由にして良いよ」
話が終わったのでそれぞれ解散していつも通り自由になる。
「そういえば……」
「どうしたんですか、パメーラ?」
「いや、サムエルって名前は旧約聖書から来てるのかなーって」
「良く知ってますね……」
「えへへ、最近偶然知っただけだよ」
そう言ってパメーラがはにかむ。……ちょっと可愛い。
「それにしても旧約聖書ですか」
……それ、神主的に大丈夫なんだろうか。
後日本人に聞いた所『どうせニックネームだし。後から知ったから今更変えられないんだよ』とのこと。それで良いのか、神主。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます