第15話 尾行
同じ学校の制服を着た三人が前を歩いている。
ひとりは、
もうひとりは私と同じくらい背が高くて髪の長い女の子、
真剣な凜華の後ろに立って、楽しそうな放課後の三人を見た。クラフトショップでなにか作って、ぶらぶらとウィンドウショッピングしてる。けっこういろんなお店で食べたり飲んだりして、黒瀬さんだけおなかいっぱいって顔してふたりに振り回されている。ちょっとかわいい。
「黒瀬真緒が、魔王の生まれ変わり」
!?!?
叫びそうになって、口をおさえた。
「確かに、似て、いるけど」
そう、魔王の姿を私たちは知っている。……名前もしっている。「ディア」
「だって、太鳳は……検事になるって言って、自分の学力だけで学年首位にいるような女よ。権力に従うような女じゃないのに」
「検事って権力の象徴っぽいけど」
「だから、従う側じゃなくて、従わせる側になるってこと!もっと高い位置を見てる子だったのに、急に生徒会長のいいなりっておかしいのよ」
教室で感じた光、その光で私たちも過去を思い出した。
美音ちゃんも、過去を思い出して、黒瀬さんに懐いたってこと?
美音ちゃんのことになると、凜華って冷静じゃなくなるから、まあ……でもなあ、魔王軍の復活って、まじならやばくない?
「確証は?」
「……ともえにまだ言ってなかった」
「なに」
「私、魔力が見えるの」
「!?!?」
いよいよファンタジーだな!?
まつ毛バシバシで、髪を緩く巻いた理論主義で、リアリストな凜華の口から、「まりょくがみえる」とかギャップすぎて、やっぱり笑いそうになる。
でもそっか、みえてるから、この人混みの中、3人が見つけ出せたんだ。っていうか、何日も見えてたのに、だまってたの?なんで……。
「なんでだまってたのさ」
「ともえに余計な心配かけたくないから」
「私にだって、凜華の心配させてよ」
「だから、イヤ」
「は?!そんなに頼りない!?」
ぷいーっと横を向いてしまう。もうこうなると、凜華はなにも言わない。
でも私の視線を感じると、困ったように見てくるから、憎めないし、きっと私に悩みを共有させたくないほどの痛みを抱えてたんだ。すごく可愛く見えてしまう。恋、こわい。
「魔力ってどういうかんじにみえるの?」
仕方ないから、凜華が口を開いてくれそうな話題に変える。
「炎が、黒瀬の周りにまとわりついている感じ。黒くて赤くて、辺りを覆い尽くすほどの巨大な火柱みたい。太鳳は、緑色の球体に守られている。もうひとりの虎走碧は、白い羽のようなものが舞ってる。何らかの精神操作じゃないかしら」
前を行く美音ちゃんをみて、ちょっと黙る。
魔力があるならさ、騙されてるとか支配されてるんじゃなくて、自分から、黒瀬さんに近づいたってことじゃない?つまり美音ちゃんは魔族の生まれ変わり。私たちが、気付かず倒したかもしれない相手だ。
「私たちだって魔法、使ってたよね、魔力とはちがうの?」
ビジュアルを思い出す。
ジルが、赤く光る玉のついた杖を持っている。その杖から、稲光のようなものを出して魔物を焦がしたり、勇者と私の剣と弓に、力を増大させる魔法をかけたりしてた。
「ジルが携えてた賢者の杖は、たぶん魔王軍が遠隔で魔法を電波みたいに送って、蓄えておける杖だったんじゃないかな。ジルはそれを手に入れて、解読して、使えるようにしてた。魔法を他の人が唱えても使えたから、アルだって使いこなしてたわ。魔物を狩るのに、魔王軍の魔力を借りてたなんて、今の倫理観だとヒドイって思うけど」
「ジルってもしかして、すごいあたまがよい?」
「たぶんね」
虎走碧さんがこちらに振り向いて、私と凜華は慌てて建物の影に隠れた。
しかしすぐに、雑踏に飲み込まれて行ったので、ほっとした。
「気付かれたかと思った~」
「たぶん、気付いた。こっちまで、羽が飛んできたから。あの人が一番厄介そう」
「そうなんだ……?」
凜華は、私には見えない何かを追い払うような仕草をした。なんとなく、見えないけど、触れさせたくなくて、凜華を引き寄せる。凜華が、困ったように眉を寄せた後、鎖骨辺りに頭を乗せた。
私にとっての凜華がそうであるように、美音ちゃんが一番、凜華にとって厄介だとおもうんだけどな。
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