21 妖魔の大群討滅戦 08 青年は人間を信じない
バートたち冒険者集団は妖魔共に
バートが村の代表の老人に話しかける。
「この村の近くに
「感謝いたします。あなた方はここに留まって村を守ってくださるのでしょうか?」
「それはできない。この地域全体で妖魔共があのような動きを見せている。我々はそれらの撃破を任務としている」
「ならば、幾人か村に残って守ってくださいませぬか?」
「それもできない。村ごとに我々の人数を減らしていけば、こちらの戦力が足りなくなる」
「……わかりました」
「まあでもこの辺りの妖魔共はあらかた排除できたと思うぜ。この村が近いうちに襲われる可能性は低いと思う」
「……はい」
不安に駆られている村人の言葉を、バートはにべもなく切り捨てる。だがそれもバートたちからすれば仕方の無いことだ。彼らの任務は地域一帯で
「この村は食料などの物資の備蓄は十分だろうか?」
「は、はい。いくらか妖魔共に略奪されましたが、村の者たちが生活するには十分な蓄えがあります。周囲から逃げ込んできた者たちの分もなんとかなります」
「そうか。エルムステルの商人のマルコム氏と彼の仲間の商人たちが、妖魔共の襲撃で
「は、はい。あまり大量に売ることはできませぬが」
「承知した。マルコム氏に伝えておこう。あと妖魔共の陣地に村から略奪したとおぼしき食料などがあったが、あれはどうする?」
「妖魔共に一度奪われた食料を口にするのは……」
「承知した。我々で持って行ける分は持ち出していいか? 持って行けない分は焼き捨てるとして」
「はい。お願いします」
バートが妖魔共の陣地に残された物資の始末を村人たちに任せずに自分たちで処理すると申し出たのも理由がある。そうしなければ、村人たちは回収した食料を自分たちでは食べずに商人に売るのではないかと疑っていた。それほどに彼は人間というものを疑っている。
もちろん妖魔共が自分たちが食うために奪った食料に何かを仕掛けているはずがない。だがそれを口にするのをためらう人間がいるのは当然だ。冒険者にもそれをためらう者はいるだろう。それでも彼が物資を全て焼き捨てずに回収すると申し出たのは、この先彼らが十分な物資を補給できるか不明であるためだ。冒険者たちも飢えたまま戦うことはできないのだから。
妖魔共から回収した物資を食べるのは後回しにはなるであろうし、魔法を使って毒などが仕込まれていないかチェックもしておくことになる。穀物類はともかく、肉類は何の肉か知れたものではないから、バートも焼き捨てていくつもりではあるが。
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