第2話

男たちはよく見るとキツネの

お面をつけていた。

ひとりはやせていて、ひとりは

太り、ほかのみんなは中肉中背といっ

たところだった。

「やい、おまえはだれだ?」

やせている男がボクにこえをかけた。

どうやらリーダーのようらしい。

「わからない。きがついたらこの森に

まよいこんでいたようなんだ。ここが

どこかおしえてほしい」

「ふう、知る必要はない。おまえはいま

ここで死ぬんだ」

男たちが刀をこしざやからぬいた。

ボクはビビった。

そしてあわててその場からにげだしはじめた。

「こら、まて」

おとこたちがおって来た。

ボクは小学校の徒競走で一等賞になったほどで

脚には自信があった。

ボクはどんどん男たちからはなれていった。

ずいぶんはしったところで、ボクはいきを

荒げながら、うしろを振り向いた。

だれもいなかった。

ボクは安心してまたとぼとぼと森の中を

さまよいはじめた。

この森にはよくみると、今まで見たこともないような

キッカイな植物がいっぱいはえていた。

笑っている大きな花や、怒っている花。

みな気色がわるいほど、いろあざやかで、

ボクを妙なきもちにさせた。

すると、もりのおくからイルカがあらわれた。

ぜんしんにくまのいれずみを彫っている、奇妙な

イルカだった。

「オマエは誰じゃ」

ぼくがそういうと、いるかはしばらく

考え込むようなポーズをとってから、

「イルカです」

と、そう答えた。

それはそうだろうとボクはおもいながら

うなずいていると、

「わたくしはじつは世界一の大財閥の御令嬢

堂前奏美さまの使いとしてやってまいりました

魔法使いのものです」

と、イルカ様がおっしゃった。

「魔法を教えてくれ。奏美をナンパするのに

使う」

「そんなよこしまな気持ちでは、到底

奏美さまのハートはゲットできますまい」

イルカが静かにくびをふった。

「どうすりゃいいんじゃ」

「あなたさまが世界一きれいな心の持ち主に

なればいいのでございます」

イルカがそういったので、ボクはせせら笑った。

「そんんなん、なれるわけないじゃん。こころも

からだも汚れまくっとるわ」

ボクは辺りを改めて見まわした。

「んぇ、それよりボクはだれ?ここはどこ?」

「ここは異世界の森。あなたさまは奏美さまの

運命の人かもしれません」

「か、も?」

「わたくしたちは奏美さまの命によって、

奏美さまの運命の白馬に乗ったおうじさまを

お探ししているのです」

「で? 見つかったの」

「まだです。ですからあなた様がそうであれば

わたくしは過重労働から解放されるわけですが」

「で、世界一きれいな心の持ち主になるには

どうすればいいの、おせーて」

「いまさら、それは無理というものでございます」

「ムりなんかーーーーーーーーーーーーい」

ボクは思わずいれずみイルカにつっこみを

いれてしまった。



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