第3話

いれずみイルカに連れられて

ボクはまたとぼとぼと歩き始めた。

「人生ってうまくいかないね」

ボクがそういうと、

「そういうもんですよ」

と、イルカのぶんざいで

人生の事をイルカが語り始めた。

「あっしには、妻が三人、子供が隠し子を

含めて十五人いたんですが、職を失って

全員、路頭に迷っちまったんです」

「それで?」

「すぐに大金持ちになりました」

「うまくいっとるやないかーい」

ボクがそうつっこむと、

「あんいもかも、ソーやじいさんから

魔法のレベルアップの仕方をおしえても

らったおかげです」

「魔法のレベルアップ」

「はい、わたくしは一円を五円に変える

魔法しか知らなかったのですが、いちまんえんに

変える魔法を伝授してもらったのです」

入れ墨イルカが生意気に目を閉じて盛んに

頷いた。

「それで、それつかったの?」

「もちろん」

「それ重大な犯罪だよ」

「申し遅れましたが、わたくし、マフィアの

ドン、浦沢と申します」

「魔法使いでもあるわけだ」

「はい」

入れ墨イルカが拳銃を腰の

ホルダーから抜いた。

「あのさ、ソーやじいさんどうしたの」

ボクはさっきから気になっていた疑問を

入れ墨イルカにぶつけた。

「もう、この世にはいねぇよ」

急に入れ墨イルカが入れ墨ゴリラに変身して、

口調を変えた。

「悪いがオマエのいのちもここまでだ」

「待って、んあんでもする」

「じゃあ、奏美の命をうばってこい」

「なして?」

「あいつ、安月給でおれたちをあごでこきつかいやがって

気に入らん。だから殺したいんだ」

「こうかいするぞ」

「しねぇよ。もう汚れ切ったからだだ。あばよ」

入れ墨ゴリラがけん銃の引き金をひいた。

弾丸がボクにむかって飛んできた。

ボクはとっさに弾丸を箸でつまむと

そのまま握り潰した。

入れ墨ゴリラは信じられないといったような

顔をしていたが、やがて

「魔法を、使えるのか、」

といったきり絶句した。

ボクにも意外だった。

まさかこんなことができるとは夢にも

思っていなかったからだった。

「空よ落ちろ」

ボクは試しにそう絶叫してみた。

そんなことできるはずがないと思っていた。

だが、空が轟音とともに落ちてきて

辺りは真っ暗闇になった。

気がついて、空をみあっげると

空の一部がぽっかりと口を開いたように

抜け落ちていた。

「あすこから、ぬけだせる」

そう思ったボクは抜け落ちていた空の

一部に向かって、思いきりジャンプした。

ボクのアタマに異常な衝撃が走った。

ぽっかりと開いていたと思った

空の一部は鋼鉄のような

固い壁で覆われていたのだ。


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