転生したらちょっと理系チックな異世界だった件について
名も無き名無し
転生したらちょっと理系チックな異世界だった件について
俺は小島誠。帰宅時、暴走トラックに轢かれ、死にました。
目を覚ますと巨人が二人。手を伸ばしてみるとそれはそれは小さな手。俺は、異世界転生したらしい。
前世に未練はない。死んだように働く以外何も無かった。
ここにくる前、何やら神を自称する胡散臭いやつに転生ボーナスとやらを頂いた。全魔法適正…くくく、心機一転、勝ち組人生歩ませてもらいますか!
五年が経った。俺は未だに魔法が使えない。なんなら読み書きすら出来ない。なぜなら俺の家は農家。教育の必要も無ければ、する余裕もない。俺は仲良くなった貴族のボンボンに頼み込んで、図書館に籠らせてもらうようになった。
それから七年。俺は十二歳。魔法は思っていたのと違った。
まずは前提知識として中学相当の数学の学力が必要だった。俺は根っからの文系だったので体が数字を拒否したが、飲み込みの良い若い頭となんとしても魔法で無双するという目標のために必死こいて頑張った。
ただ、自分より実年齢が三十五下の子供に数学を教わるのは屈辱だった。
次に魔法。魔法は『魔素』を使ってどうこうするのだが、いかんせん俺には魔素が少なかった。
人体が魔法を使うには、ヘモグロビンの鉄元素の魔素を使わなければならないのだが、これが貧富の差が激しく出る。
貴族のボンボンは高山トレーニングによって血中のヘモグロビンを増やす。圧倒的な魔素量の前に適性は意味をなさず、俺は臨床魔法を諦めた。
しかしまだ夢はある。魔法はまだまだ未解明の分野が多い。研究で無双してやる。
何とか魔法学校に入学することが出来た。学費は奨学金を借りた。そして学校に入学して、俺は絶望した。
女子が少ない。昔理系の友人が大学に女の子が居ないことを嘆いていたが、まさか異世界で自分がその環境に置かれるとは思いもしなかった。
内容もどんどん意味不明になってくる。俺はがむしゃらに勉強を続けた。
魔法学校を卒業した後、俺は大学へと行った。研究に携わり、先進魔法で一攫千金た!と意気込むのも束の間、俺は挫折した。
原子の周りを回る『魔素』。これが魔法の源と言われている。こいつには不思議な性質があった。
まず、光魔法を二つ穴が空いたスリッドに通す。すると光は強めあったり弱めあったりするので明線と暗線が出来る。つまり、魔素は波動性を持っている。
しかし、今度はある条件下で強い魔法の光を当てると、直ぐに魔素が飛び出す。これは矛盾だ。なぜなら波ならばエネルギーを伝えるのに時間がかかり、すぐには魔素が飛び出ないからだ。
俺含め凡人はそのことに頭を一生悩ませていた。しかし、天才はいる。悔しいが。
アン・イヤーン・ショタ・イーン…彼が提唱したのは、魔素が波動性と粒子性、どちらも持つということ…そしてそれに関わる公式を複数出した。
それはニテール・ボーアが提唱する水素原子の魔力軌道の…うわああああああああああ!!!!
俺は魔法を辞めた。そして今は実家の農作業を手伝っている。魔道具を使って。
まあ…こんな人生も悪くないかな。俺は開き直った。
転生したらちょっと理系チックな異世界だった件について 名も無き名無し @nonamesnanashi
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