049:助けて、ポリスメーン!
いや〜、満足満足。
お腹いっぱいだし、レベルも上がったし大満足!
本当にパイセンには感謝してもしきれないッスよ。
ありがとうございますッス。助かったッス。
『満足したのならそれでいい。次は無茶しないようにするんだな』
はいッス。パイセン。
ところでパイセンはどんな冒険者に出会ったんッスか?
さっき冒険者がどうとか言ってたので気になってしまって。
あと禁忌の洞窟とか、その他もろもろたくさん聞きたいッス!!
『いいだろう。汝は孤児。親に何も教わっていないのだからな。我が教えようではないか』
孤児じゃないけど……まあいいか。
この洞窟とか、この世界の人間について知れるのならなんでもいいや。
小さな洞穴で壮大な話が始まるこの感じ、すごくワクワクするなぁ。
ではミミックパイセンよろしくッス!
『うぬ。まずは我が戦った冒険者について話そうか。今までにたくさんの冒険者と我は戦った。我を宝箱だと思い込み、蓋を開けた哀れな冒険者は皆、我があの世へと葬り去ってやった』
おおー。騙して襲う。ミミックらしい。さすがパイセンだ。
『先ほど汝に与えた魔石や宝石の一部が我の戦利品のようなものだ。もう何人倒したかなど数までは覚えていない。人間族との戦闘もつまらないものばかりで、記憶に残っている戦いはゼロに等しい』
戦いは印象的ではなかったんッスね。
では、顔はどうッスか?
顔とかは覚えてないんッスか?
肌が白くていかにも勇者って感じのイケメンとか。
頬に傷がある猛者感がぷんぷんするイケメンとか。
髪がさらさらイケメンでも、くっきり二重イケメンでも、声がイケメンでも、なんでもいいのでイケメンはいたッスか?
『その汝が言ういけめんというのはなんだ?』
あっ、えーっとッスね。かっこいい人のことッスよ。
今回私が聞いてるのは外見のかっこよさッス。
この際、女性でもかっこよければ可ッスよ。
目の保養になるッスからね。なんなら同性でもありな気がしてきたッス。
とにかく!
人間がいるってのはなんとなくわかっていた。でもまだイケメンがいるという確信はない!
だからミミックパイセンの記憶の中に、もしも、もしも、もしも! イケメンがいるのなら……まだ希望がある!
私の夢に一歩近付くってこと!!!
あっ、私の夢は教えらんないッスよ。恥ずかしいので!
『よくわからんな。汝が言うかっこいい感じ、というのを我は感じたことはない。敵は敵。それでしか見ていないからな。ただ強い者にはそれなりの称賛はある。私の記憶の中にはひとりも冒険者は該当しないがな。冒険者以外の人間族を含めてもな』
な、なるほど……。
まあ、魔物からしたら人間なんてそんな感じの感覚ッスよね。
人間からしても魔物とかは敵でしかないわけだし。
ゲームとかの世界とは違って、そこのところはリアルだなぁ。
まあ、この世界はリアルな世界なんだけどね。
それじゃ、パイセンの記憶の中の強者ってどんな相手だったんッスか?
『古龍だ』
こ、古龍……。
うわぁ。なんだかヤバそうな名前。
絶対強いじゃん。
『禁忌の洞窟で古龍に勝てる者などいない。我もそうだったように』
あのドラゴンカップルも古龍なのかな?
だとしたら私って最悪なスタートを切ってたんじゃね?
さすが禁忌の洞窟と呼ばれるだけあるはこの洞窟。
最悪すぎるわ。
というかパイセンはその古龍と戦ったんッスね。
生き延びたってことはパイセンも相当強いんじゃないッスか?
『
え、何その5本の指に入るみたいな言い方。
あっ、そうか。ミミックには指というか腕自体ないから、そういう言い方になるのか。
なるほど。勉強になるわ〜。
って、5本の牙に入るだって!?
パイセンってめちゃくちゃ強いじゃないッスか!
気配っていうかオーラっていう、なんか強者感ぷんぷんしてたんッスよね。
『それは汝が言ういけめんというものに当てはまっているということか?』
あっ、いや、それは全然違うッス。
まあ、私以外のミミックからしたら、どんなふうに思われているかわからないッスけど。
って、え? 何この展開?
なぜにイケメンかどうか聞いてきた?
ま、まさか私のことを襲おうとしてる?
そ、そうだ。今までのことを思い出せ私!
この洞窟あちらこちらで魔物たちが交尾しまくってるじゃんかよ!
そうだ。絶対にそうだ。
パイセンは私を襲おうとしてるんだ。
そもそもそういう行為ってさ、互いの了承があってこそできるんだと私は思ってる!
無理矢理なんて絶対にダメなんだから。強制わいせつ罪よ!
ポリスメーン、ここです。ここー!
たとえ命の恩人でも私の初めては捧げられないわ!
だって私の初めてはイケメン冒険者に、そう! 運命の相手に、って決まってるんだから!
誰でもいいって思ってた時期もあったけど。でも、やっぱりイケメン冒険者がいいの!
最近だとイケメンなら誰でもいいって思い始めてるわ。冒険者じゃなくてもね。
でも人間のイケメンがいいのよ。魔物じゃなくて人間の!
『汝よ、落ち着くのだ。物凄い速さで思念伝達されても、何を言っているか全く理解できない』
あっ、ごめんなさいッス。
またひとりの世界に入ってしまい、勝手に盛り上がってしまって……以後気をつけます。
って、そうじゃなーい!!!
ミミックパイセンは私を襲おうとしてるんッスか?
『なんの話だ? 同族を襲ったりなどはしない。同族は敵ではないのでな』
ふぅー。なーんだ。襲わないのか。安心した。
って、信じられるかー!!!
証拠は? 証拠はないんッスか?
絶対に襲ったりしないって証拠は?
『同族同士で殺りあうなど、下等生物がやること。我々
な、なんだろう。この説得力は……お堅い喋り方のせいか?
でもまあ、パイセンが襲うところなんて想像できないよな。
わかったッスよ。
でも襲ったりしたら絶対に許さないッスからね。
もし襲ってきたらポリスメン案件ッスよ!
私は断固拒否ッス!
『わかっている。汝も我にとっては守るべき対象に含まれている』
うぉおお。なんかかっこいい。
一瞬だけど姫を守る騎士とかに見えた。
ナイトよナイト。ナイトボックスよ。
『汝は我に心を開きつつあるな』
ん?
まあ、そりゃ、食べ物を分け与えてくれた恩人でもあるし、同族で守ってくれるとも言われたし、それに初めてちゃんと会話できた話し相手でもあるし。
そうだ。思えば、ちゃんと会話したのはパイセンが初めてだ。
でもなんでパイセンは日本語を話せてるんだ?
いや、日本語じゃないか。スキルやらなんやらで翻訳されてるんだろうきっと。
思念伝達とも言ってたし、言葉よりも思っていることや考えてることが伝わってるって感じだろうからね。
まあ、深く考えてもわからないからこれくらいにしておこうかな。
この思考も全部聞かれているはずだしね。
『まあ、全て思念伝達によって伝わってくるが、理解できない言葉も含まれているせいで、正直なところ何を言ってるのかよくわかっていない』
そうッスよね〜。ははは。
変なこと考えるのはやめておこう。特にいつもの妄想とかね。
『ところで汝よ。我に心を開きつつあるのだな?』
あっ、はい。そんな感じッスよ。
心強い人生の、いや、箱生のパイセンって感じッス。
『では我と子孫を残そうではないか』
は?
『何か不満でもあるのか? レベルが上がって体も治っているだろ?』
いやいやいやいやいやいやいや。
あんた何言ってんのさ!
数分前に自分が言ってたこと忘れたの?
同族を襲わないとか、高貴な存在とか、真顔で言ってたかんね?
それに私言ったよね!
襲ったら許さないって。断固拒否だって。
『何を言っているんだ? 襲ったりはしない。我は子孫繁栄の提案をしているだけだ』
だからパイセンの方こそ何言ってるの!?
それを襲うって言うんだよ!
私ずーっと拒否ってるじゃんか!
『さっぱり意味がわからん。なぜ子孫を残すことを拒むのだ。
ひぃいいいい!!!
襲わないって言ってくれたのに!!
『襲っていないではないか。攻撃などしない。子孫繁栄のための……未来の
本気だ。パイセンは本気で私と交尾しようと考えてやがる。
伝わる。伝わってくる。同族だから感じる思念伝達とやらのスキルで。
それに襲うという意味が、私が言っている意味と少しズレてるってことも理解した。
この世界の魔物にとって交尾は襲うことじゃないんだ。たとえそれが無理矢理だったとしても。
なんか話が噛み合わなくなってきたと思ってたんだよね。
『まぐわいは子孫繁栄だけのためではなく、レベルも上げることができるのだぞ。汝にも悪い話ではないだろう』
やっぱりレベルも上がるのか。経験値三大欲求説は当たってたっぽいぞ。
って、そんなこと言ってる場合じゃないぞ。
ここから逃げないと!!
『どこへも行かせぬ』
――ぬあ!?
ミミックパイセンの舌が体に巻き付いて身動きが取れない……。
なんて強さなの!?
このままだと犯されるー!!
魔物に犯されるー!!
汚されるー!!
私の初めてが奪われるー!!
『さあ、
嫌だー!!!
嫌だー!!!
絶対に嫌だー!!!
誰かー助けてー!
痴漢よー!
いや、
ポリスメーン!!!
犯罪者はここでーす!!
「キィイイイイ!!! (ポリスメーン!!!)」
強制わいせつ罪で逮捕してくださーい!!
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