044:ミミックVSクラーケン〝宿敵〟

 フラグ回収だーー!!!

 って、リアクションはこの辺にしておいて……相手はクラーケンか。

 この層を抜けたければ、私を倒してみろ、ってやつか!?

 上等だよ。やってやるよ。

 それにクラーケンは私の宿敵……越えなきゃいけない壁だ。


「ルォオオオオオオーンッ」


 あっちはあっちで私に恨みがあるはずだ。

 岩の下敷きにされたんだからな。

 だからこうして待ち伏せしてたんだろ?

 って、クラーケン、ストーカー気質やばすぎだろ!!!

 ネチネチしやがって!

 元彼が突然現れたみたいで背筋ゾクッとしたわ。

 あっ、私彼氏なんて出来たことないんだけどね。 (てへっ)


 って、呑気にてへぺろしてる場合じゃない。

 そう言えばてへぺろって死語だよね?

 って、そんなこともどうでもいいんだよー!!!


「ルォオオオオオオーンッ!!!」


 ひぃいいい!!!

 やる気満々かよー。


 まあ、私もやる気だけはバリバリあるんだけどね。

 あの頃の私とは違うってところを見せつけてやろうではないか!


「ルォオオーンッ!」


 おっ、魔法陣が私の前に8つも出現したぞ。

 これはあの時の墨の魔法か。

 確か岩を溶かす強力なやつだったよね。

 前回は1つの発動だけだったのに……クラーケンさん、あんたいきなり本気ですか!?

 まあ、本気を出してもらわなきゃこっちも困るがな。


 墨の魔法による攻撃が8連発で発動された。

 1発1発の発動速度は遅いけど、8連続で発動されるとちょっと躱しづらい。

 でもスケルトンキングの魔法の方がもっと躱しづらかったぞ!!


「キィイイイ (うらぁああああ)」


 よしっ、綺麗に躱せたー!!

 私のスピード舐めるなよー!

 この勢いのまま反撃だー!


 闇属性魔法を体に付与させて……攻撃力と防御力、そして身体能力をアップっ!!!

 そしてクラーケンの触手に狙いを定めてー!!!

 必殺――ダークネス噛み付き攻撃ボックスファングッ!!!


 なっ!?

 躱された!?


 私の攻撃を躱すってことは、攻撃を受けたらまずいってことだよね。

 いや、それ以前にそれを理解してるってことが問題だ。

 こいつ……かなり頭が切れる。


「ルォオオオオオオーンッ!!!」


「ギィイイイイ (うわぁああああ)」


 しまった。他の触手に意識を向けてなかった。

 くっそ。モロに喰らっちゃったぞ。

 でも私の体はあの時よりもかなり頑丈になってる。

 痛いことには変わらないけど、ほぼ無傷だ!!

 だからと言って安心してらんないんだけどねっ。


「ルォオオオオオオーンッ!!!」


 ぬひぃいいいい!!!!

 触手の連撃がやばすぎるぅううー!!!

 鞭のようにしなる触手が私を叩き潰そうと狙ってくる。


 反撃の隙どころか逃げる隙もないぞこれ。

 って、魔法陣も!?

 この猛攻の中、墨の魔法はまずいって!!


 8本の触手に8つの魔法陣……躱し続けるのは賢明じゃないよね……。

 それなら――


 必殺――ダークネス回転攻撃スピンアタックッ!!!


 無理矢理突破口を開くまでよー!!!


 私は闇属性魔法を体に付与させ、回転しながらクラーケンの猛攻から逃れた。

 何発も攻撃を受けちゃったけど、あのまま躱し続けるよりは遥かにマシだよね。

 くっ、攻撃を受けた箇所がジンジン痛む。

 墨の魔法を受けたところなんて溶けちゃってるし!

 というかジュージュー聞こえる!!!

 洗わないとずっと溶け続けるんじゃね!?


 進化して頑丈になった私のボディ、さらに闇属性魔法を付与させていたのに、こんなにもダメージを受けるのか。

 やっぱりクラーケンの攻撃力は桁違いだな。


 でも、防御力の方はどうだ?

 前回の戦いは、私の牙の貫通攻撃しか効かなかったけど……それは私の攻撃力がクラーケンの防御力よりも遥かに弱かったからだ。

 今の私の攻撃なら通じる可能性がある。

 さっき私のダークネス噛み付き攻撃ボックスファングを躱したってことはそういうことだしね。

 自分の防御力よりも私の攻撃力の方が高いと見極めた。だから躱したんだ。

 その考えに貫通攻撃が含まれているかは知らんけどな!!


 貫通攻撃以外も通用するのか、今確認してやんよー!

 たこ焼きになりやがれー!!


 私はくちを大きく開けて念じた。

 念じた直後、口内に魔法陣が構築される。


 必殺――闇のダークネス光線レーザービームッ!!!

 ――ヴォヲォーンッ!!!


 口内に出現した魔法陣から凄まじい黒色の光線がクラーケンに向かって放たれる。

 これはさすがに躱せまい。それに墨の魔法でも相殺できないだろ。

 それ以前に何もかもが間に合わないはず。

 確実に決まったな。


 攻撃が決まったと確信した瞬間だった。

 クラーケンは8本全ての触手で防御の構えをとって、私の闇のダークネス光線レーザービームを防いだ。


 そうだよね。

 躱せないのなら防げばいいよね。


 触手ごと貫いて欲しかったってのが本音だけど、でも今のでわかったよ。

 私の攻撃が通じてるってね。

 だって、キミの触手、焦げてるんだもん。ノーダメージって感じが全然しない。

 たこ焼きの臭いがして…………こない。焦げ臭っさ!!! 焦げ臭っさ!!!


 恐らくだけど攻撃が通じるのは闇属性魔法による攻撃だけ。

 ただの物理攻撃は今まで通り弾かれて終わり。 (貫通攻撃以外はね)


 だから魔法を上手く使えれば勝てる。

 スケルトンキングの時とは違ってクラーケンは、自分の防御力に絶対的自信を持ってない。過信してないってやつだな。

 だからあっちも上手く立ち回りながら攻撃を仕掛けてくるし、何なら私の攻撃を上手く防いだりもする。躱したり、必要に応じて距離を取ったりもする。

 くねくね動いたりするの鬱陶しいぞ。触手も本体もっ!!


 だからこの勝負、相手の動きを読んで致命傷を与えるほどの攻撃を与えた方が勝てる。


 ふふっ。笑っちゃうわね。

 もうあんたを格上なんて思ってない私がいるんだから。

 格上相手の戦術で挑んでないんだから。


 ただ、長期戦になるとやっぱり私の方が不利になる。

 魔法の使い過ぎによる魔力の枯渇。この欠点がある時点で私の方が不利だ。

 魔石を食べれば魔力は回復するけど……体に埋め込んだ非常食兼お洒落の魔石の数にも限界がある。

 ゴールドボックスに進化して体に埋め込められる魔石の数はだいぶ増えたけど……それでも足りるかどうかわからない。

 だからさっきみたいな空振りは命取りになるぞ。

 この魔石が尽きた時……その時が私の負ける時。

 無駄なく計画的に魔法を発動することができれば、勝てない敵じゃない。


「ルォオオオオオオーンッ!!!」


 でもこの触手攻撃を攻略しなきゃ、近付くことすらできないぞ。

 掴まれば触手プレイ。叩かれればSMプレイ。

 なんて卑猥ひわいな魔物なんだ!!

 って、そんなこと言ってる場合じゃねー!!


 ――ドガゴーンッ!!!


 威力やべー!!!

 やばすぎるー!!!

 墨の魔法は8発同時発動、触手攻撃は最初から全力の8本。

 クラーケンめ。最初から本気で私を仕留めにきてやがる。

 相当恨んでるんだな。

 だが、こっちだって正当防衛でやってたんだよー!

 その恨みも逆恨みってやつだぞー!!!


 逆恨みに文句を言いながら私は闇属性魔法の発動を念じる。


 必殺――闇のダークネス光線レーザービームッ!!!

 ――ヴォヲォーンッ!!!


 クラーケンの頭部目掛けて闇のダークネス光線レーザービームを放った。


 この間合いでスピードだ。躱すのは不可能!

 たとえ防がれたとしても、触手にダメージを与えられる。

 攻撃の数はあっちの方が上だけど、的確にダメージを与えているのは私の方だ。

 勝てる。勝てるぞ。


 勝つ未来が見えた瞬間だった。


 ――なっ!?


 クラーケンは頭部と胴体を内側――触手の方にめり込ませて、闇のダークネス光線レーザービームを躱しやがった。

 そんな動き予想してないし! てか、予想できないし!

 骨がないことはわかってたけど、内臓は!?

 どうやったら頭部と胴体を触手の方にめり込ませられるのよー!!


 くっそ。無駄なく計画的にって考えた直後にこれかよ。

 私の考えを先読みしてんのか!?

 お前人間だったら絶対にスマホとか勝手に覗くタイプだろ!

 本当にストーカー気質やばいぞ!

 色々と文句を垂れてるけど……これが戦闘経験の差ってやつね。

 実感したよ。


 でもこっちには人間様の知恵もあるんじゃー!!

 アラサー舐めてもらっちゃ困るぜー!


 必殺――闇のダークネス光線レーザービームッ!!!

 ――ヴォヲォーンッ!!!


 また顔を狙ってきた、って思っただろ。

 だからまた顔と胴体を内側にめり込ませたな。

 だけどその予想は大外れだ。

 今回狙ったのは、お前の胴体の少し上だ!


「ルォオオオ!?」


 そうだ。忘れたとは言わせないぞ。

 お前にとってはトラウマ級の出来事かもしれんがな。


 私が狙ったのは岩だ!!!

 ちょうどいいところに岩があったんでな。

 あの時と同じように岩雪崩で攻めてみましたー!!!


 潰れてタコ煎餅になりやがれー!!!


「ルォオオオオーオッ……」


 前回の岩雪崩ほどではなかったけど、岩でクラーケンを潰して動きを止めることができた。

 ちょうど魔力が枯渇して疲労感も出てきたところだ。

 この隙に体に埋め込んである魔石を食べて体力と魔力を回復しよう。


「ルォオオオオーンッ!!!!!」


 って、もう復活しやがった!?

 早すぎないか!?


「ルォオーンッ!!」


 うわぁああー!

 軽々岩投げてくんなー!!!

 って、危なっ!!


 辛うじて投げてきた岩を躱すことができたけど――


「ギィイイッ!! (ごがはッ!!)」


 凄まじい威力の触手攻撃を受けてしまった。


 あぁ……わかったよ。

 相当本気なんだな。

 どうしても私を殺したいんだな。


「ルォオーン、ルォオーン、ルォオオオーンッ!!!」


 雨あられの如く降り注ぐ触手攻撃が私の体を破壊しようとしてくる。

 激しい猛攻だ。

 魔力が枯渇した私には魔法でどうにかする術はない。

 それに披露した体ではこの猛攻を防ぐことも躱すことも無理だ。

 たった一瞬の――暗闇の中で針に糸を通すような僅かな勝機を見つけて……それを逃さまいと、全力で畳み掛けてきてやがる。


 あぁ、くっそ。

 これ、詰んだわ。

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