033:レベルアップと進化と魔法

 熱い熱い熱い――熱い?

 あれ?

 あれれ?

 熱く……ない……?


 私はスカルドラゴンの炎に焼かれたはずなのに。

 なんで熱くないの?

 それどころか暖かい。

 ものすごく心地が良い。

 安心感に包まれているかのような……幸福を身に纏ったような……不思議な感覚だ。


 もしかしてこれって……いや、もしかしてなんかじゃない。

 これは――


 《個体名〝ミミックちゃん〟はレベル16に上がった》


 やっぱりレベルアップか!

 ということは全回復だ。

 失った体も、五感も全て回復するぞ!


 そうかそうか。

 ジェネラルスケルトンに合体進化して強くなった分、経験値も多くなるよね。

 めちゃくちゃ運が良かった。

 これが奇跡ってやつか!?


 って、うわぁ!!!

 いきなり視界が復活した。

 と思ったらやっぱり燃えてるじゃんか!!


 熱い熱い熱い熱い熱いあついあついあつい!!!!

 痛覚とかありとあらゆる感覚も復活したぞっ。


 って、このままじゃレベルアップしたばかりなのに死んじゃうじゃんか!!

 緊急回避だ。エスケープ、エスケープ!!


 どりゃー!!!


 ――ゴロゴロゴロゴロッ!!!


 転がって炎を消すぞ。

 このまま燃え広がったらレベルアップした意味がない!


 《個体名〝ミミックちゃん〟は〝ノーマスボックス〟から〝シルバーボックス〟に進化しました》


 ――は!?

 今なんて?

 進化?

 進化って言ったか!?


 消火活動でいっぱいいっぱいであまり聞き取れなかったぞ。

 というかレベルアップ以外で何か喋るの初めてじゃね?

 めちゃくちゃ大事な気がするんだけど、なんとかボックスがなんとかボックスに進化したしか聞き取れなかった。

 でもはっきりと進化という言葉は聞き取れたぞ。

 ということは私、進化してるってこと!?


 ちょうど消火できたところだし、自分の体がどのように進化しているか見てやろうじゃないか!!


 スカルドラゴンから十分な距離を取って、自分の体を確認する。

 私の目は口の中にあるけど、意外と視野が広いのだ。

 そもそも目がある位置を口と呼ぶのか、顔と呼ぶのか、はたまた箱の中と言えば良いのか疑問だが、とりあえず今はどうでもいい。

 私がどのように進化を遂げたのかを確認せねば。


 おおっ!!!

 お、おっ??

 ん?


 変化という変化はないな。

 強いていうなら木材の部分が鉄? 銀? みたいになってるくらいかな?

 それとちょっとだけ大きくなった?

 ひとまわりくらいかな、大きくなった気がする。

 決して太ったのではない。

 これは成長だ。だから太ったわけではない。


 ただ進化したからって、スカルドラゴンには勝てる気がしないぞ。

 ジェネラルスケルトンがスケルトンの30体から40体分だと考えると、スカルドラゴンは70体から80体分くらいだよね。

 単純計算であのジェネラルスケルトンの2倍は強いってことになるぞ?


 無理無理無理無理無理。

 進化したからって私自身2倍も強くなってるとは思わないもん。

 そもそも2倍強くなってたとしてもダメじゃん。

 良くて相打ちしかできないよ。


 それにスカルドラゴンは私の苦手な炎を出してくる。

 木材の部分が銀っぽくなってるから炎に強くなってる可能性もあるが、それは可能性の話だ。

 大体さっきの炎だってめちゃくちゃ熱かったし……。

 進化しても苦手の炎は克服できてないってことね。とほほ……。


 でも進化って普通は身体能力とか戦闘能力とか大幅に上がるよね。

 なんなら魔法とかスキルとかも新しいのを習得したりとか……


 《個体名〝ミミックちゃん〟は〝闇属性魔法〟を獲得しました》


 は!?

 闇属性魔法だって!?

 え?

 嘘!?

 私、魔法使えるようになったの?

 獲得ってそういうことだよね?

 魔法覚えちゃった系なの?


 というかどうやって魔法使うのよ?

 教えてください。脳内の声さん!!!


 って、やっぱり答えてくれないよねー!!!

 なんだよなんだよ。

 なんか、レベルアップとか進化とか魔法の獲得とかさ、タイミング良く言ってくれたような感じがしたのにさ、返事は返してくれないのね。

 魔法を使えれば、この窮地を逃れられるかもしれなかったのに。

 使い方を知らないんじゃ意味ないじゃんかよー!

 獲得、って言ってたけど、私魔法を獲得した感じ全くないかんねー!!


「WOOOOOOOOOO!!!」


 ぎゃー!!

 また炎を吐いてきたぞ!?

 しかもかなりの距離から……なんて火力なんだ。

 それに攻撃範囲がデカすぎる。


 でも完全回復し進化を遂げた私なら、これくらい避けるのはへっちゃらでーい!


「キィイイイイイ!! (うおりゃああああ!!)」


 私は炎を躱すため、思いっきり横に跳躍した。

 すんでの所で炎を躱すことに成功したが、予想以上に跳びすぎた。

 

 ぬぉおおおおー、跳びすぎー!!!

 これが進化の影響なのか。

 だとしたら身体能力がかなり向上してるんじゃないか?

 これなら私の今までの攻撃の威力やスピードにも期待できるぞ。


 でもその前に魔法だ。

 闇属性の魔法とか言ってたな。

よりによってなんで怖そうな魔法獲得してんだか……。


 とりあえず色々と試してみよう。

 練習台は目の前にいるからな。

 格上相手の、と付け足しておかなきゃいけないけどね。

 って、これもはや練習よりも感覚的に修行だよね?

 修行と言っても命懸けの修行だけど。


 まあ、そもそもこの旅はレベリングの旅だからね。

 今進化したってことは、この旅は間違ってなかったってことだよね。

 だったらその成果を見せる時じゃないのか?

 今、ここで!!!


 その成果こそ、あいつを……格上のスカルドラゴンを倒すこと。

 そして魔法を扱えるようになることだ。


 やってやる。やってやるぞ。

 私を弱者だと傲り、ジェネラルスケルトン1体に戦わせたこと後悔させてやる。

 格下相手にも本気で挑まなかった自分自身を恨むがいいさ。


 ではいくぞ!!

 箱と骨の最終決戦だ!!

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