反英:半

第7話 春が来た学校

 今学期の三月はいろんな事があった。先輩に無茶なお願いされたり、殺されかけたり、メイド服着てる先輩を見るはめになったり、ある少女が過去の自分に別れを告げる手伝いをしてみたり、結構大変だったと思う。

 ところで、俺は現在一年生だが、明日から春休みが来る。つまり、あと少しでもう高校二年生になる。少し不安のことも多いがまぁなんとかなるだろう。甘く見すぎ? 違う、そうじゃないとやってらんないだろってだけだ。 

 それに、何かあってもまぁ先輩に聞けばなんとかなりそうだし。もちろん勉強のことではない。幻影についてだ。そもそもアヤ先輩別に頭良くなかった気がするし。いや、ここは勉強ができるわけではないという方が良いのかもしれない。 

 そもそも俺自身全く勉強ができないわけではない。基本、平均点前後ではあるが化学は高得点だからなんとかなっている。まぁ、荷堂は化学に限らず全体的に高得点なので心配することなんてないのかもしれないが。

 さて、振り返りはここまでにしよう。今日は先輩に呼び出されている。図書室だと言っていたなと思いながら向かっていると荷堂にあった。

「あ、荷堂。部活は?」

「今日休みなんだよね。だから大丈夫」

 もちろん荷堂も呼ばれている。要件は荷堂もしらないみたいだ。そうこうしていると図書室の前に来ていた。

 扉を開けると、アヤ先輩が何か考え込むように珍しく頭を抱えて座っていた。

「アヤ先輩」

 呼びかけてやっとこちらに気づいたようだ。

「あ、来たね」

 来たね、が聞けたのでそこまで深刻ではないのかもしれない。知らないけど。

「それで要件って?」

「あぁ、言ってなかったね。最近、帰り際というか、正門とかその辺りから定期的にモノカゲが停止した状態で放置されているんだよね」

「単純に何もしてこないモノカゲではなくて?」

「うん、なんなら害のあるモノカゲだと思う。毎回倒してるけど回収したペンキからは負のエネルギーしか受け取れないことが多い」

「だから悪影響のあるモノカゲの筈って事ですか」

「そうだね」

「あの、悪影響のあるモノカゲって……全部悪影響がある訳ではないんですか?」

「荷堂ちゃんに言ってなかったね、ごめ~ん! 確かにモノカゲは何かしら影響を与えてくる。でも、そのモノカゲが何から出来ているか、由来みたいなものだね。それによって敵対するかしないかみたいなのは決まるんだよ。あと気付いてるかも知れないけど私もモノカゲだよ?」

 この人何でそんな簡単に暴露するんだ? と思ったが、相手が荷堂だから言ったのだろう。だとしても軽すぎるだろ、結構重要な事だし。

「え? え? へっ? そうだったんですか!?」

 三回くらいバグった後に荷堂が驚いた。まぁそうだよね。こんなモノカゲ滅多にいない。そもそも先輩以外に居るのかすらわからないし。

「うん、そうだよね、今まで見てきたモノカゲ全部化け物染みててヒト型であっても人と同じ見た目ではなかったからね」

「今までって事は他にも先輩みたいなモノカゲ居るんですか?」

「居るよ。特に人の思考が含まれるのはそうだね。細かい事に注目すれば全てのモノカゲが当てはまるかもだけど、大きく分けると感情か思考かという問題なんだ。私の場合は?」

「人間の生死に関する思考ですか」

「そういうこと! つまり、他にも居るには居るんだよね~」

「う~ん難しいですね……」

「まぁ馴れるよ。別に私も人とそんな変わらないし。割と最近生まれたからね私」

 そうなのか。よく考えると初めてあった時は影力隠していなかったな。いや、正確には生の方の先輩は隠していたけど死の方は隠していなかった。どういう事か? それはまた別の話で。

 まぁ要は先輩も昔は結構自分勝手なところもあったのに今は成長したという事が言いたいだけだ。でも先輩がいつ、どこでモノカゲとして生まれたのかはわからない、なので聞いてみた。

「そういや、先輩ってどんくらい前に生まれたんですか?」

「ん? あー樫木君に出会う一年前くらいかな~」

 結構最近だった。だが、あれが一年もそのままだったと考えると少し恐ろしい。

「まぁそんなことはいいんだよ。とりあえず今日呼んだ理由はね、さっき言ったそのモノカゲについて調査をしたいと思ってね。明日から春休みだけど用事なかったら明日来てくれない? 九時半に正門集合で」

「春休みなのに調査なんて熱心ですね、珍しい」

「最後の余計だよね? まぁでも、そんな簡単な話でもないんだよ~。あれは確実に能力であって定期的に起こるモノカゲの異変ではないよ。絶対に人の手、それか私と同じに影響を加えられてる」

 先輩と同じ。曖昧な何かである先輩と同じというのもそうなのだろうが、それが何か本当にわからないという事なのだろうか。

 だとしても先輩と同じ曖昧な何かであるとしたら相当強い筈だ。放置するのは危険だ。先輩が春休みなのに調査をするのにも納得できる。

「その調査を俺らも手伝えばいいんですよね。俺は大丈夫だけど、荷堂、お前は?」

「私も大丈夫です! がんばります!」

「ありがと、じゃあ決まりだね。早速明日からよろしく」

 さて、今回は特に身の安全を願う事にしよう。

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