第2話 先輩の調べたいモノ
あれから数日がたった。その間、先輩は学校に来ていないらしい。
俺にもできることはないかと考えたが今はシンヨウを倒せる時に倒すくらいで他にできることはないだろうと思い、日曜日の夕方に何故か開いている学校に来た。部活の大会がある時期だし、朝の集合場所が学校だったのだろうか。
学校といえど日曜日なのもあってガラッとしている。いつも先生方が乗ってきたであろう車が止めてある駐車場も車一つ見当たらなかった。夕方なのもあるとは思う。とりあえず行動しないと始まらないので校舎の中に入れるか試してみた。入れた。ということは警備員は今日も仕事をしているのか、大変だな。他人事のように言っているが今日学校に来ている俺も今から仕事をするようなものではある。
扉についたガラスから向こう側にシンヨウがいるのがわかった。
ちなみに、シンヨウくらいであればモノカゲの力をあまり使う必要は無い。まず、モノカゲの力を使える人やモノカゲ自体に共通して幻影の基本となる力、
今日は特にシンヨウが多い。モノカゲもいるにはいるが基本的に害のあるモノカゲ自体は少ない。害のあるモノカゲは負の感情などが由来で生まれたシンヨウが集まったのが大半だからだ。そんな風にシンヨウをある程度倒しながらシンヨウに付いていくように歩き回っていると体育館まで来ていた。中から音がする。バスケ部か? ボールを打ち付けるような音や走り回っているような足音。確認しようと入口の扉を開けた。
中は意外にガラッとしている様に見えた。バスケ部はいない。だが、音がしている。俺には聞こえる複数の音。なぜガラッとしているのに複数の音がするのか。
それは一部のモノカゲを除いて、基本人には幻影が見えないからだ。見える俺からすればこれは異様だ。モノカゲもシンヨウも基本単色ではなく、混ざった色だったりと様々なのに対し、そこには青い幻影しかいない、加えて校内の幻影を集めた程の数がいるだろう。
その体育館のステージの上に巨大なモノカゲがいた。歪な六本腕にヒト型で、腰と思われる場所から下は液体のように溶けている。その近くに群がるようにシンヨウがいる。そして何より目を引いたのは制服姿の見慣れた背丈と髪型の走り回る女子高校生。攻撃を避けたり防ぎながら戦っているようだった。ただ、攻撃をしていない。
アヤ先輩がモノカゲの前にいた。攻撃は防いでいる。だが、少し難しい顔をしている。近付こうとした時こちらに気付いた。
「なんで樫木君がいるの……?」
驚いた先輩な隙を突くようにモノカゲが攻撃をした。青く歪んだ腕は黒く変色し、先が鋭い鉛筆を大きくしたみたいに変形し、湾曲しながらアヤ先輩に向かっていく。
「しまっ……!」
アヤ先輩は避けはしたが一本だけ避けきれず、後ろに体制を崩してしまった。その肩にはモノカゲの攻撃が刺さっている。俺が反応したのはその一瞬の出来事が起こった後だった。
「アヤ先輩……!」
「ダメだ!」
何も考えずに俺はモノカゲの力を使った。仮面の力。制御出来ていない力。自分の感情の一部を自分の複製のように具現化する力だ。自分の感情を制御できていないならもちろんモノカゲは制御できない。そして具現化できるのもその時の感情によって異なる。つまり、どの感情が具現化するかわからない。
「最悪だ……」
俺がそう溢したのは赤色の自分に対してだった。怒りの感情を具現化したモノカゲ。何も出来なかった自分への怒りだ。
自分への怒りを象徴したモノカゲ、仮面のモノカゲは感情を具現化する能力だがそれだけではない。具現化した感情自体にも能力がある。怒りなら身体強化、悲しみなら見えない防御壁を周囲に発生されるなどなど。
また、そのモノカゲ達は全員目を隠すように仮面を着けているのが特徴でその仮面を俺が着ければその感情の能力を使える。もちろん、操れるならの話だが。操れない感情はどうなるのか、目の前の光景を見て分からない方が難しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます