第6話:すべてはメルバの存在を隠すため。

なんやかや言って、メルバとの交流期限の終わりが近ずきつつあった。

メルバは俺の血を吸うことなくトマトジュースで頑張っていた。

本当は少しくらい俺の血を吸わせてやってもいいって思っていた。

放置しとくって可哀想だもんな。


そんなある夜のこと。


「ケイスケ・・・入っていい?」


「ん?メルバ・・・ 」


「いいよ」


俺は部屋のドアを開けてやった。

そしたらメルバが泣きべそをかきながら立っていた。


「なになに・・・どうした?・・なんで泣いてる?」


「もうすぐ企画が終わって、私たちお別れでしょ」

「私・・・ケイスケと別れたくない」


そう言うとメルバは絨毯の上にヘタレこんだ。


「この一ヶ月あまりケイスケと一緒に暮らしてケイスケのこと好きに

なっちゃったから・・・愛しちゃったから別れられないよ」

「ケイスケ・・・メルバの本心だよ」


「ピーチ・・・これって?」


「俺には分かるよ・・・メルバの気持ち」


「このままケイスケと別れちゃったら、きっと後悔するよ」


「そうか、まあ俺のメルバに対する気持ちは決まってる・・・」

「いいじゃん交流期限が終わってもそのあと俺たちは自由なんだから」

「メルバはここに残ればいい 」


「本当に?」


「それに少しづつでいいなら俺の血を吸ったっていいから・・・」

「俺は焼肉いっぱい食って血を蓄えるからさ」


「ごめんね・・・ケイスケ」

「謝らなくていいよ・・・だからほら・・・泣いてないで・・・おいで・・・」


俺はメルバを引き寄せて優しく抱きしめた。


「ケイスケ・・・抱いて・・・」

「ん?・・・抱いてるじゃん」


「そういう意味じゃなくて・・・」


「え?・・・ああ、そうかそう言う意味じゃなくてな?・・・いいのか?」


「うん」


「でもピーチが見てるし・・・」


「俺は見て見ぬ振りしとくけど・・・」

「気本的にはメルバにくっついてるから完全に知らんぷりするのは無理

だけどな・・・」

「でも邪魔はしないぜ・・・眠っといてやるから」


俺はメルバと初めて結ばれることになった。

それがどれだけのことを意味するかはメルバとひとつになって知ることになった。


俺の部屋で・・・俺のベッドで・・・それはキスから始まった。

僕の精一杯の愛撫・・・メルバは恍惚に浸った。


「ケイスケ・・・血吸っていい・・・」


「いいよ、けど俺が干からびるまで吸うなよ」


メルバは俺の首筋に歯を立てた。

痛いのかと思っていたが痛いと感じたのは最初のほんの少しだけだった。

メルバが俺の首から血を吸い始めた時・・・俺はいいしれない快感に打ち

ひしがれた。

身体中にエクスタシーが走って耐え難い感覚に襲われた。


「ケイスケ・・・動かないで」


「そ・・・そんなこと言ったって・・・。」


たしかに俺たちは合体してるんだけど血を吸われるってことのほうが

普通のセックスなんかとは比べ物にならないくらい極上の快感。


これはやめられない・・・血を吸う側より吸われる側のほうが常習者

になっちゃいそうだ。

吸血って行為は一度味わうと二度と戻れない依存性を含んでいた。


それからしばらくして俺の家に大慌てで出版社の谷川さんがやってきた。


「メルバ様が企画のスケジュールが終わる前に星に帰るとおっしゃって

私を訪ねていらっしゃったのですが・・・


「すばらしい文化交流ができましたこの宇宙で地球がもっともすばらしい

星でした、 ありがとうございました」


ってご報告を受けまして・・・なにか支障がございましたか? 」


「何もないよ・・・俺も、すばらしい人生経験をさせてもらったから

期間終了を待つことなく満足して帰って行ったんじゃないかな? 」


「俺もお礼言います、谷川さん大変お世話になりありがとうございました」

「とっても素晴らしくて有意義な企画でした」


「あ・・・いやいや、それはなによりです・・・そのお言葉を聞いて安心

しました」

「それでは私はこれで失礼いたします」


何も知らない谷川さんは喜んでコロこんで帰って行った。


だけどメルバは自分の星に帰らず俺のところにとどまった。


メルバの本当の正体だけど・・・

彼女はザッハトルテ星のミルフィーユ国の王女様。


ミルフィーユ国が敵の侵略されそうになったことでそれで彼女はやむなく

この地球に避難して来たってのが真実。

異星人との交流ってのはメルバの存在を隠すため。


この地球にだってミルフィーユの敵のスパイが潜り込んでるかもしれない。

そのためメルバは自分の正体を隠すため小学生くらいの女の子に

メタモルフォーゼしていたってワケだ。


でも今は国も安定していていつでも帰れる状況なんだそうだけど、メルバは

自分の父親に「地球でハズバンドができたから移住する」って

言って、俺の家に残って今も俺の血を吸ってる日々を送ってる。


血を吸われるって行為とセックスは紙一重。

快感が大きい分だけど命のリスクが伴ってくる。


だけど俺はメルバなしじゃもう生きられない。

それはメルバも同じ。


END.

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ちあふる・でぃーば。〜彼女はバンパイア〜 猫野 尻尾 @amanotenshi

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