第5話:バンパイアかよ。
俺は仕事を終えてスーパーで買い物してから大急ぎで家に帰った。
玄関を開けて、靴を脱ぐのもそこそこに「ただいま」を言うのもそこそこに
急いで居間を除いた。
「よかった・・・いないんじゃないかって心配した」
「おかえりケイちゃん・・・」
って、ソファから立ち上がったメルバを見て俺はめっちゃ違和感を覚えた。
「え?メルバ?・・・」
「なんか違ってないか?どこかが・・・なにかが・・・」
「もともと綺麗だったけど・・・さらに綺麗になってめっちゃ色っぽくなってないか?・・・それに髪が・・・・伸びてるし・・・長くなってんじゃん」
「俺が会社に言ってる間なにがあった?」
「そう?変わってないと思うけど?・・・」
「俺は女が変わったか変わってないかくらい分かんないほど鈍感じゃないよ」
「メルバ変わったよな・・・だろ?ピーチ・・・」
「俺は知らねえ・・・」
「それよりケイちゃん・・・私、たいくつ・・・」
「ヒマ・・・なにもすることないし・・・テレビ見ててもよく分かんないし・・・」
「だからさ・・・俺、会社辞めてきたから・・・ 」
「え?会社ってとこ辞めたの?」
「メルバが気がかりだからさ・・・これでメルバが自分の星に帰るまで
一緒にいてやれるだろ?」
「私のために辞めたの?」
「そうだけど・・・」
「そうなんだ・・・私のためなんだ?・・・」
「そうだよ・・・なんだよ?辞めちゃいけなかったのか?」
「愛する彼女のためだからな」
メルバは嬉しそうに笑った。
そして急に俺に近ずいてきていきなりハグした。
「なんか知らないけど大切なコト辞めてきてくれたんだよね私のために・・・」
「ありがとうケイスケ・・・ありがとう」
「ちょっと待った・・・メルバ、やっぱりおかしいって・・・」
「なんで、そんなに女っぽくなってるんだよ・・・またメタモルフォーゼとか
ってやつか?
そんなに色気、振りまいたら・・・健全で生きてる俺でも我慢できなく
なるだろ? 」
「我慢できないって?・・・ケイスケなにが我慢できないの?」
「異星間・・・じゃなくて異性間の交流・・・男と女どうしの交流だよ」
「おい、離れろ・・・なにハグなんかしてんだよ」
「だからうるさいってば・・・引きちぎるよ、バカピーチ」
「って言うかさ・・・俺が会社に行ってる間、何があったんだよ」
「恋人でもない男にハグなんかするな・・・」
「ふん、ケイスケの血吸っといてハグかよ」
ピーチが言った。
「え?・・・」
「・・・・・」
「え?なんて言った、今?」
「ピーチ・・・血を吸ったって?・・・誰が??・・・誰の?」
「たしかに今、俺の血吸っといてって言ったよな・・・」
「どういうことか説明しろよ?・・・」
「バカピーチ・・・余計なこと言って・・・」
「あいや〜しまった・・・つい売り言葉に買い言葉でクチが滑ったわ」
「すまん、メルバ・・・」
「謝っても遅いよ」
「あのさ、俺は朝や昼間には覚えがないんだけど・・もしかして俺が
寝てる間に・・・誰かが俺の部屋に入ってきて俺の首から血吸った?・・・
ってことか?」
「そういうことか?・・・」
「ごめん・・・ケイスケ・・・」
「メルバ・・・説明しろよ」
「俺のこの首の傷の訳をさ・・・朝起きたらこんなところに傷跡があるから
おかしいと思ったんだよ」
「私、ケイスケの血をちょっとだけ、いただいちゃったんだ・・・」
「ん〜・・・なんでそんなことするのかイマイチ理解に苦しむんだけど・・・」
「メルバの種族って、いわゆるバンパイアってやつなのか?」
「バンパイヤってやつらかどうかは知らないけど・・・私は生き物の血を吸わない
とヤバいことになるの・・・ 」
「血、吸われた俺のほうがヤバくね?・・・」
「なんで黙ってたんだよ・・・そういう重大なこと」
「言ったら親交だとか交流だとか全部、ボツになっちゃうと思って」
「そうか・・・俺の血を吸って潤ったおかげでメルバは綺麗になっちゃった
って訳か?」
「なんか、色っぽくなってるし髪は急に長くなってるし・・・いいんだけどな
綺麗になってくれたんだから 」
「嫌いになった?私のこと」
「そういう問題じゃなくて交流なんて言って俺を騙してたんだよな」
「人を騙したり、嘘ついたり・・・俺はそういうのが許せいないの・・・」
「本当にごめん・・・ケイスケ・・許して・・・しかたなかったんだよ」
そう言うとメルバは泣き出した。
「泣きたいのはこっちだよ・・・」
「いいよ、それでもいいよ・・・でもそう言うことは最初に言っといて
欲しかったよ」
「なら、納得して少しくらい協力できたんだよ」
「いいか、明日からメルバは俺の血の代わりに、トマトジュースで我慢しろ」
「とまとじゅーす?」
「そうだよ・・・血だって思って飲めば大丈夫だろ?」
「要するに気持ちの問題だよ」
って言うか・・・俺は内心では前より綺麗になって女らしくなったメルバに
自制心を失うくらいめちゃやられていた。
つづく。
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