本気を、ぶつけろ
「……ふぇっ!?」
ありえん。隣町の生徒だろ? ちゃんと家まで送り届けた。実はこっちに住んでました……なんてことはないはずだ。
そう思って聞くと、早紀の顔は明るくなる。そう、またあの笑顔で僕に話してくるんだ。
「柊斗にあいたかったから、じゃだめ?」
「いや……! だからといって学校を変えれるわけじゃ……!」
「……まぁいいじゃん! ほら! 周りの人がみんなこっち見てるよ?」
言われて周りを見ると、入学式初日ということもあってあまり人と話していなかったクラスの人々がみなこちらを見ている。
注目されている。僕が。
そのことに嬉しいと思える人であればよかったと思ったけど。僕はそうじゃない。
「あ、あ、ごめん……」
陰キャはキョドることが当たり前。そのまんま早紀と離れて自分の席に戻る。
そこでクラスは一旦落ち着いて。担任の先生が入ってきた。
さぁ。今日からこのクラスで頑張ろう!
後に。僕はこの――キョドった選択を後悔することになる。いくら陽キャになりたいわけじゃないとはいえ。
友だちが全くできないってことになるとは思うはずもないでしょ。
けど、だからこそ――中1の終わり、彼女へと告白することになるのだ。
______
入学式以降の日々のクラスは窮屈ったらありゃしなかった。
友達は早紀以外にできない。けどみんなは仲良くしている。そんな教室にいるのも辛いんだけど、僕が教室から離れると早紀がついてくる。
「ねぇ! 柊斗。どこ行くの……?」
「柊斗、ほらこれ、面白そうじゃない?」
そんな中でも代表的な出来事は、ペアワークのときかな……?
早紀、クラスのみんなからペアになろうよ! って誘われてたんだ。
けど、早紀はその輪を抜け出してきて。
「柊斗、よろしくね」
いつもの笑顔で言われたら断れない。周りの人からの目なんて気にしてる場合じゃない。
「……こちらこそ」
と言うしかないよね。けどそしたら決まって早紀は言う。
「ありがとう、大好きだよ」
こんな爆弾発言をクラスでもするのだ。
けど早紀はクラスから人気者で。そんな人気者が僕にくっついてくる。
本音としては嬉しい。嬉しすぎる。こんな僕にも愛想を尽かさずに話しかけてくれる。
クラスの中で一番大切にしてくれる。
クラスの中で一番仲良くしてくれる。
クラスの中で一番――好きだと思える。
だめに決まっているよね。クラスの人からの目はいいものではない。表立ってなにか行動を起こしてくる人はいなかったけど。
なんでかって早紀がいたから。早紀のお気に入りに手を出したらダメだとか思われてたんじゃないのかな。だからまぁ安寧といえば安寧だったけど。
そして、1年が過ぎる。
今日は3月。僕の誕生日であり、クラスのみんなと1年生として過ごす最後の日でもある。修了式は……すぐ終わるしね。
そんな今日行われるのは、『クラスミーティング』。
クラスの中で、自分語りをする行事だ。
自分の中の思いを吐露する者。
適当に話して適当に聞いている者。
誰かへ思いを伝える者。
など、誰がどんな話をするかは自由で、様々で。
だからこそ僕はこの場を選んだ。
誰が何を話すのかは自由だから。
ここで話したことを誰かにとやかく言われる筋合いはないから。
そうして始まる、クラスミーティング。
当たって砕けろ、じゃなくて。
当たってから砕けろ、の精神で。
はなから受け入れてもらえるとは思っていない。
けどこの1年、僕のことを救ってくれたのはほかでもない早紀だから。
大好きだよと、伝えよう。
本気を、ぶつけてみよう。
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