第70話転移石を使う



ハイデンが猫パンチで赤オークを引き裂いている。

そんな戦いを見ながら弱った赤オークの口に血を放つ。

ゴクッと飲んだハズなのに、え!なんで。

『しもべ』の表示がでない。

返って回復したように向かって来る。


右手と左手で掴むように空気を圧縮。

限界まで圧縮して赤オークに放つ。

まるで衝撃波のように「ドン」と音が・・・


赤オークが飛ばされて床に叩きつけられる。

あ、朦朧もうろう状態だ。

このチャンスを見逃す訳がない。


ジャンプして赤オークの口にパンチだ。

ズボッと入った拳は、牙で傷ついて血が流れだす。

大量の血が流れ込んだハズだ。


「これで、どうだ!」


え!まだ表示が出ない。

なんで・・・


「ガッア!」


なんと手を食いやがった。

めちゃくちゃな激痛が・・・


アイテムボックスから赤刀を出して、左手で掴んで首に突き刺す。

それでも手を美味そうに食いやがる。

怒りが頂点に達した。


「これでもか!クソ野郎!」


もっと押し込んで首を斬る。


やっと息の根を止めることができた。

やっぱ『しもべ』に出来ない。

これで何度目だ。


徐々に手が治りはじめる。そして、痛みも消えだす。


そんな俺をまたも赤オーク襲う。

しかし、そのオークを後ろから襲うハイブラック。

腹ばいに倒した後に、ひっくり返して腹に噛みつく。

鋭い牙は、腹の肉を簡単に引き剥がす。


「ブギーー」と鳴くオーク。


それでも容赦のないハイブラック。


再生が終わった頃には、最後の赤オークを無残に倒すシェリー。

そしてシェリーは、俺を見る。


『やはりダメですか・・・それに転移石もドロップしないのも、おかしいです』


『これだと情報も怪しくなるぞ』


腹を大きく膨らませたハイデン。

どんだけ赤オークを食ったら、そんなになるんだ。


『わたしが嘘を言っていると・・・聞き捨てなりません』


「まあまあ落ち着こう・・・このダンジョンで3日連続で倒してるのに何もドロップしないのはおかしい。それに地下2階の階段がないなんて有り得ない」


『ならば転移石をここで使えばハッキリするぞ。地下2階がない理由も転移石の存在が理由かもな・・・なんか謎めいて面白いぞ・・・』


なんとハイデンも考えているようだ。


「やってみる価値はありそうだな・・・ハイデン、転移石を出して発動出来るな」


『たやすいい御用だ・・・全員が我と繋がれ』


ハイデンを囲うように触れ合う。


『やるぞ』




一瞬で緑の大地、青い空が広がる。

そんな世界だった。


「ここは・・・」


『この世界は、わたしが生まれた世界です・・・見知った精霊たちがそこらかしこに・・・』


「え!ここが異世界だって」


ハイデンは、赤いドラゴンに変貌して飛び立つ。

高い上空で旋回して戻って来た。


『ここは、魔族が住む大陸だ・・・魔族に見つかったら問答無用に襲ってくるぞ・・・特にお前だ、魔族は特に人族を嫌ってる。それは、本能のように・・・』


やっぱ異世界に魔族が居たんだ。

それに人間の俺ってヤバイ状況だぞ。


「ならば魔王もいるのか」


『魔王は死んだハズだ』


『わたしも幼い頃に、親から聞いた覚えが・・・誰かに殺されたと・・・殺したのが誰なのか永遠の謎だとも・・・』


「え!死んだなら新たな魔王が居るよね」


『新たな魔王? 』


『・・・・・・』


え!シェリーもハイデンも知らない。

魔王不在ってなんで・・・考えても仕方ない。


それに、ここの場所も覚えた。


「鏡よ出よ」


鏡が目の前に現れる。


『危ない!』とハイデンが空に向かってブレスを吐く。


全身が真っ黒な人型が『ガハハハハ』と笑ってた。


炎に焼かれてるハズなのに・・・熱くないのか・・・


ヤバイと思った俺は、オリハルコンの太刀をだす。

すぐに変化して伸びる太刀は、人型を真っ二つに斬る。


『そんなバカな・・・』


更にめちゃくちゃに動く太刀。


粉々になる人型。

あまりにも呆気ない終わり方だ。


『魔族にもバカはいるらしい』


そうだな・・・笑う前に攻撃をしろよ。


「変な奴が来ない間に鏡に入るぞ」


我が家に全員が戻った。

それを確認してから鏡を閉じた。

閉じる瞬間、禍々しいものを感じたぞ。

あの正体は何だったんだ。


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