第62話マナ通信



またまたシェリーがパソコンの前で、よからぬことを考えながらカチャカチャとやっている。

あんなに世界規模での株取引きをやるとは思ってもいなかった。

だから事前にチェックだ。


「え!これって図面の画面だよな・・・」


シェリーが振返る。


『せっかく・・・通信基地局を作ったのに使わないって手はありませんから・・・』


「それって、どういう意味・・・」


『電波や回線の通信でなくマナによる通信ですよ・・・地球の裏側の相手でもなんの障害もなく通話やネットが出来ますよ』


なんとデスクの上には、俺が買ってあげたスマホがバラバラにされた部品が・・・

シェリーも俺の目線に気づいたようだ。


『心配しないでください。最新のスマホに買い変えました。しかし、マナスマホが完成すれば時代遅れになりますよ』


その意味でなく、俺が買った物のが・・・


『すでにユニコーンにも連絡して、電気通信事業者として総務省へ届出をだしてるハズです』


ああ、俺の知らない所で、もう止められそうにない。


『アカさん、出来上がりましたか・・・』


『できたよ』


え!黒い米が・・・いや違う。

なんと米粒程の黒い立方体から細い端子が無数にでていた。

どう見ても数は万を超してるぞ。


シェリーは、大事そうにピンセットで摘んでバラバラのスマホにセット。


『この部品はいらない・・・これは使えそうね・・・試作品だから、これでいいわ・・・レッドさん、来てください』


ピョンピョンと来たレッド。


『なんですか・・・』


『こことここ、こっちとここもを繋いでください・・・できればやんわりとお願いします』


『よくわかんないよ』


シェリーは、レッドに触れて目を閉じる。


『わかったよ』


極細のレーダーが「ジュッ、ジュッ」と照射。


『完璧ですね・・・レッドさん』


俺に飛びついて『ほめて、ほめて』

なでてやると喜ぶレッド。


そんなレッドを見て、更に飛びつくアカ・・・

レッドの上で『ほめてよ』


ああ、面倒だがなでる。

ポットと明るくなるアカ・・・



そんな事をしてる間にシェリーは、スマホを完成させてた。

部品の半分は、残ったままだ。


え!それをパソコンに繋ぎだす。


「え!なんで・・・」


『スマホでネットと繋がっただけですよ』と言いながら通信の配線を抜き取ってみせた。


お!繋がったままだ。


『すべてが繋がっていれば、もっと速いと思いますよ』




-  -  -  -  -  -  -  -




ユニコーンが新たに建てた通信本社。

その本社前に数台の黒車がとまり、何人もの男女が降りてきた。


「総務省の田中さま、おはよう御座います。わたくし宮部が案内をさせて頂きます・・・こちらへどうぞ」


男女を引き連れて案内する先は、地下5階。


長い廊下を歩き続ける。

扉の前で手を壁に当てて、目も識別。


『確認準備が整いました。最終チェックの声を発してください・・・それと顔を10センチ右に移動してください』


「マナ、わたしよ」


『扉が開きます』


中は広い空間だった。

その中央に何かが浮かんでいる。


「これがマナ通信の心臓部ですか・・・変わった形をしてますな」


「はい、球体状ですが世界の総人口が通話や回線を使ってもパンクしないAI管理システムになってます。セキュリティ対策も万全です」


「これもユニコーンしか知らない人物が作ったと・・・」


「はい・・・絶対に正体を明かすことは出来ませんよ。総理とも話がついていると聞き及んでます」


「・・・・・・」


「新しい発明ですがテスト期間もなんの問題もなかったので認可しましょう。どうか日本を代表する企業に育ててください」




-  -  -  -  -  -  -  -



あああ、ユニコーンのCMだ。


クマが変なダンスしてから集まったアヒルたちに向かって陽気に話しだす。


「みなさんマナ通信をご存知ですか・・・」


アヒル「知らないよ」


「通話からネット通信込みの使い放題で月2000円です。スマホも1万円から8万円まで様々用意してますよ」


アヒル「なんで安いのと高いのがあるの・・・」


「安いのは、今までのスマホの機能と会話とネット通信だけなんだ。高いのは、念じるだけで世界各国の人々と会話ができるって違いかな」


アヒル「もしかしたら動物も」


「チンパンジーと会話したってデータがあるよ・・・それに今、わたしと会話してるだろ」


アヒル「あ!本当だ」




-  -  -  -  -  -  -  -




シェリーは、自作のパソコンの前でカチャカチャとやってる。

俺は、マナスマホでニュースを見ていた。

2000円で使い放題って、こっち側の人間として納得できない。


「使い放題で2000円って安くないか・・・」


『安いとは思いませんよ。初期投資は、あの球体1つだけです。後はマナスマホで全てを補ってくれるからです。100年はメンテの必要もありませんし、サービス内容の変更もこちらで操作できます』


「それで取り分は・・・」


『ユニコーンが1000円。こっちも1000円です』


そんなもんかな・・・


『見てください。初週で200万も売り切りましたよ。ユニコーンも生産が追いつかなくて泣いてます』


「だけどマナスマホに使う黒い立方体。あれを開けられたら秘密がばれないか・・・」


『何重にもトラップが仕掛けられていて、開けた瞬間に消えてなくなるので・・・』


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