第54話ドラゴンの森



大勢の支援隊を引き連れて来たのが『ドラゴンの森』の入口らしい。


「ここから立入り禁止区域になります。我々は、ここからは行けません。ここで最後の食事をして行きますか、それともそのまま出発を選びますか?」


「シェリーは、どう思う・・・食べた方がいいかな・・・」


『時間がほしいのので出発をしましょう』


「分かりました。我々はここにベースキャンプを張ります。ドラゴンの森には、ドラゴン以外の魔物がウヨウヨしてると聞き及んでいるので、注意してください」


それも、そうだよな。

ドラゴンの餌になる魔物がいないと街に毎日襲ってるハズだ。

街に来たのは、7年前って聞いてる。

それも1万人もの死者や怪我人を出たらしい。

いつ襲ってくる恐怖は、俺なんか耐えられない。


あ!忙しくテントを張ってる。

中々頑丈なテントだ。


「そっちのロープをもっと引張れ・・・それでいいぞ」


「こっちにも杭を打ち込む必要があるぞ!!お前・・・杭を持って来い」


「気合を入れて叩け!」


ドンと杭が打ち込まれた。


「もう1度!!」


凄いな・・・あんなハンマーがあるんだ。



猫隊長が俺に近づいてきて、2本の筒を手渡す。


「なんですか、これは」


狼煙のろしです。討伐成功時は赤い狼煙を、失敗した時は白い狼煙を上げてください。必ず狼煙を上げてください・・・お願いします」


ああ、狼煙で生と死が判断されるから大事な事なんだ。

猫隊長も責任重大だな。


素材を求める俺って不純な動機だ・・・それって良いのか。

嫌々そんな考えはよそう。ドラゴンには、獣人も相当に悩まされてハズだ。

俺が退治すれば良いだけだ。


「頑張ってください」


「必ず退治してください」


ああ、声援だ。


『必ず退治してきますよーー』


ああ、大勢の獣人が手を振ってるよ。

なんか複雑な気持ちだ。


アカは、ペシペシと励ましてくれている。





その危機は突然の出来事だった。


広がる森林から「ヒューー」と音がして巨大な岩が落ちてきた。


メターが俺やシェリーをかばって前に出る。


突然「ドンバッン」と破裂音が・・・



危機を感じた俺は、すべてがコマ送りのように見える。


メターの左パンチが岩をくだき粉々にするのがスローモンションのように遅い動きとして見える。

これってなんていう現象なんだ。


だから俺に向かって飛んできた10センチの岩もハッキリ見える。

しかし、体の動きがついてこれない。

なんて遅い動きなんだ。それでもかわし切る。


「助かった」


その瞬間・・・あれ!通常の動体視力に戻ったぞ。


見上げると裸の巨人がいた。

それに右ストレートがメターに向かっているぞ。


メターも合わせるように右ストレートをくり出す。

あ!クロスするように巨人のあごに入った。


あれってクロスカウンターだ。


巨人の顔が変な方向に曲がって、骨が突き出ている。

血もドバーと出てる。

これで誰もが戦いは終りだと思った。


え!なんで再生してるんだ。

こいつもサイクロプスと同じ能力を持っているのか、いまいましい奴らだ。


「なんだよ、あの再生能力は・・・マジにヤバイぞ」


またもあの作戦をするしかないのか・・・『しもべ』にして再生が尽きるまで戦い続ける作戦。

それに、ここの魔物に『しもべ』の能力が通じるのか試してみるか・・・


え!シェリーが勇ましく叫ぶ。


『メター!牽引ビームで圧縮してからレーザーで焼き払うのよ』



お!牽引ビームを放ったぞ。

広範囲な牽引ビームが巨人を捕らえた。


なんと「ベキッ、バギ」と腕や足が折れた。

血を撒き散らして小さな肉のかたまりに変ぼう。


即!レーザーで焼かれ尽くす。

残ったのは黒い塊でボロボロと粉になって崩れる。


やっと戦いは終わったようだ。




ペシペシとアカが叩く。


『あいつもヤバイよ』


西の空を見上げると鳥の大群が飛んできている。

なにやら不穏ふおんな気配が・・・



遠くて小さな鳥にしか見えなかったのに、近づくと大きな鳥と判明。

広げる翼は10メートル超えで、目は猛禽もうきんの鋭さがあった。

マジに肉を食らう鳥に間違いない。

俺を餌としか見てない。


『メター!モード2で撃退しなさい!』


一瞬で崩れてバラバラになりながら飛ぶメター。


まさに弾丸が飛ぶ勢いだ。


先頭の鳥の頭を簡単に撃ち抜いた。

後ろに飛んでいた鳥の翼にも命中。飛べなくなって落下する鳥たち。


7羽8羽・・・12羽と落下する鳥たち。

逃げ出した鳥にも追い駆けて仕留める。


生き残って逃げたのは数羽だけ。


巨人は焼けて素材が取れなかった。なので、落下地点まで歩くしかない。

ここに来た目的は、素材集めで錬金術の為だ。

大鳥からなんの素材が取れるかワクワクだ。




「なんだよ、これは」


折角きたのに、大ムカデが食っていた。


俺らに気づいたらしい。

殺気がメラメラと感じて「カチカチ」と噛む音が響く。


メターに対して凄い威嚇いかく行動だ。

ムカデもメターが只者でないと思ったに違いない。


『モード2で倒すのよ』


なんと気合の入ったシェリーの命令も速い。


バラバラになってムカデの周りを回りだす。



え!あのムカデの体がバラバラになって対抗して来たぞ。

やっぱ異世界の魔物だ。

なんと腹にも大きな口が・・・とんでもないムカデだ。


メターの包囲網と衝突して、弾かれた1つが俺に向かって来た。


俺は、赤刀で突いて斬った。

その瞬間、赤い血を全身に浴びる結果に・・・なんと、この血は毒だ。


毒を俺の再生で治し、また毒に犯される。

これではらちがあかない。


「水よ、洗い流せ」


やっと毒から開放。


残りのムカデを見るとメターが焼き尽くしていた。

ああ、鳥も焼けて使い物にならない。


『主殿、申し訳ありません。血が飛び散るので焼くしかなかったのです』


これって今日は、赤口しゃっこうの日か・・・

スマホでカレンダーを見る。やっぱ赤口だ。


陰陽道にもとづくと凶のことで、「赤」は火や血を連想させ、災いや凶の意味合いらしい。

だから燃えて無くなったのか・・・ああ、ついてない。


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