第53話闘技場
ミーニャ国へやって来た。
猫族のシリー・ベンが話していたドラゴンが気になって来たのが原因だ。
俺は、海の戦いであんなに興奮したのは初めてだ。
あのような海の化け物がいるなんて小便も少しちびったよ。
海だったので巨大な化け物の素材が手に入らなかったのは、いかしかたない。
俺が討伐したカリブディスは、2体の戦い中に海底へ沈んでしまった。
あんなに激しい戦いの中に取りに行くのは、絶対に無理だ。
リヴァイアサンの素材は、クラーケンが黙って解体なんか許すハズがない。
そもそも場所が海だから仕方ない。
クラーケンに足を引張られたらと想像するだけで恐怖だ。
しかし素材がめちゃくちゃ気になる。
賊のアジトで頂いた禁書以外にも、錬金術の本が数冊あった。
本の中にドラゴンの素材がてんこ盛りだ。
こりゃーードラゴン退治するしかない。
シリーの話だと討伐金がでるって・・・それも天文学的な金額になるらしい。
ああ、めちゃワクワクする。
「これはこれは、ジンさん」
店先で偶然にもシリーと出会った。
相変わらず店は繁盛している。
これは好都合だと店先で話そうとすると手でさいぎられた。
「ここで話すより奥で話しましょう」
まあ、いいか・・・金の匂いでも嗅ぎつけたかも・・・
奥についてい行く。
シェリーは、金色の球体を抱えて同じようについて来た。
メターには、獣人の前では話すなと命令しているから大丈夫だろう。
椅子に座って「ドラゴン退治をしようと思うんだが何か手続きってあるかな」
「え!!やめた方がいいです・・・退治出来るならありがたい話ですが・・・もう数え切れない者が挑んで帰った者はいません。それを承知で行くとおっしゃるのですか・・・」
「もしもの時は逃げ帰るよ」
「そんな生やさしいドラゴンではありません・・・どうも温度差が違うようです」
はは~ん、俺の実力を知らないな。
こっちにはゴーレムのメターを連れて来たのに・・・
「ハッキリ聞きます。手続きがあるのですか!」
「はい、あります。手続きなしで退治に向かうのは犯罪です。おおやけの場でこちらが出す魔物と戦って勝利を勝ち取った後に、申請が受理されて戦う日も指定されます」
やっぱそうだよな。
ドラゴンと戦って負けて、ドラゴンから仕返しがあったら大変だよ。
なんとローマのコロッセオを数倍にしたような闘技場だ。
なにか暇なのか客で一杯だぞ。
俺とメターを抱いたシェリーがポツンと中央に立ってた。
客は、20メートル上から叫んでいた。
頑丈過ぎる程の壁だ。
え!もしかして10メートルの化け物が出てくるのかな・・・
トラ模様の猫男が叫ぶ。
「只今よりドラゴン退治を申し出た勇者の実力を見せてもらおう!いでよ魔物たち」
え!『たち』って言ったよね。
なんと4つの門が同時に開く。
あれはギリシャ神話に出るキメラか・・・羊頭から2本の角が生えていて、ライオンの顔もあった。
胴体は筋肉モリモリで尻尾は蛇だ。あらゆる動物の融合体だぞ。
高さも6メートルで全長は10メートルもあるぞ。
「ガウーー!!ガウ、ギャアウ」
なんと吠える方には、頭が3つの黒い犬がキメラと同じ大きさだ。
これって地獄の番人ケルベロスなのか・・・
ピシッピシッと音がする方を見る。
大きな植物が根をズリズリと動かしてツタで叩きながら近づいている。
花の中央には、口があって鋭い牙が並んで生えている。
最後に登場したのが鬼だ。
人間を巨大にして頭には角が二本。
体の色は青でまさに青鬼だ。
腰には何もつけれない。もう興奮状態で、あそこも立ちっぱなしだ。
この青鬼だけが大きな棍棒を持っている。
そこから判断して知能が高そうだ。
全て魔物が鎖に繋がれた状態だ。
ヤバイと思った俺は「アカ、全てのパーツを出せ!!」
パーツが出揃った瞬間に『メター!モード1で戦え』
グルグル回りだすパーツに、球体も合流してカチン、カチン、カチンと合体が完了。
闘技場がどよめた。
「なんだ!あれは・・・真っ赤な巨人だぞ」
「あれを戦わせるのか」
慌てた司会が「はじめ!!」と怒鳴った。
その瞬間に鎖が外れた。
メターが動き青鬼に向かった。
青鬼は、棍棒を高らかに上げて殴りかかる。
メターは、巨大な体なのに懐に入って一本背負いを仕掛けた。
見事に決まり、そのまま倒れながら右ひじで顔面を強打。
「グシャ!!」と陥没した顔があった。
足をバネのようにして一気に起き上がる。
『左右でロケットパンチよ』
左腕が凄い勢いで飛び出して、キメラの顎をアッパーで打ち上げる。
何が起きたのかも分からないキメラは、ひっくり返って気絶。
右腕も同じように飛び出して、回転しながらケルベロスの腹に命中。
「ギャン!!」と鳴くケルベロス。
途中で参加した左腕で逃げられなくなって、左右でボコられる。
気絶してるのに・・・まだ殴る続ける。
花からツタ攻撃が来たがアカがペシペシとはじき返す。
それでも無数のツタが襲い掛かる。
負けないぞとアカも応戦。
一歩も引かない戦いだ。
終止符を打ったのは、メターの目から出た赤い光線だった。
花に当たった瞬間から炎に包まれてのた打ち回る。
最後は、燃えるツタを天高く持ち上げて「バサンッ」と競技場を叩き動きを止めた。
「あの光線はなんだ」
『レッドさんを参考にしました』
もう禁書のゴーレムと全然違うぞ。
シーンとしていたのに競技場がまたもどよめいた。
「勝者、ジンがひきいるパーティー!!」
競技場から歓喜の嵐が起きた。
「あんな瞬殺は見た事がないぞ!まさに勇者だ!!」
「ドランゴンが討伐されるに違いない」
「勇者バンザイ!!」
熊男が立上がって「俺は後方支援に参加するぞ!」
「俺もだ!!」
「俺も立候補するぜ!」
「後方支援って何? 」
『後方支援は、討伐が失敗した時に
「すると・・・今まで多くが亡くなったのか・・・」
『家族には、充分なお金が支払われるハズです』
失敗はしないと思うけど、なんて悲しい話だ。
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