第44話ゲーム



え!激痛が走る。

頭にビリビリッと電気が流れたぞ。

ガバッとヘルメットを取って投げ捨てた。


もう死ぬかと思った。


「なんて物を付けさせるんだ!!」


『そんなにビックリしましたか・・・おかしいですね』


シェリーとアカが何やら話し合っている。


え!俺のことは無視か・・・

それにしても俺に分からない言葉で・・・


『改善したので・・・お願いします』


「もう、痛い思いは御免だぞ」


『電圧を下げて覚醒状態と睡眠状態のはざ間を再現できたと思います。必ず世のためになるのでお願いします』


そんなに頼まれたら仕方ない。

もう1度、ヘルメットをスポッとかぶる。


『セットOKですか・・・』


微かなシェリーの声が聞こえたので「セット完了」と答えた。

ああ、これで何度目の装着実験だ・・・普通なら死んでもおかしくない。


あ!急に暗転。


これってエルフの森だぞ。

すると仮想世界が成功したのか・・・信じられない。


足元には、フワッとした感覚が・・・なんと綺麗な花が咲き乱れているぞ。

その花から、かぐわしい匂いも・・・これって匂いまで再現してるのか・・・


風が舞って花びらも舞いだす。


風が吹いてるのも本物と同じだ。

まさに夢のような仮想の異世界だ。



あ!あれは、シェリーの親だ。

それに続々とエルフさん達が登場してきたぞ。

そんなエルフさんの周りを小さな精霊が優雅に飛んでいる。

精霊特有の透き通る姿も再現されてる。


『ようこそ、エルフの森へ』


なんと綺麗な声も・・・再現されてる。

それにしても不思議な気持ちだ。




あ!またも暗転。


え!!これって・・・目の前に『ゲーム終了』の文字が・・・


ようやく現実の世界に戻り意識が鮮明に・・・

ヘルメットを外すとシェリーがのぞき込んでいる。


『どうでしたか仮想のエルフの森は・・・』


「そうだな・・・あのエルフの森、そのものだったよ。あんなに再現されていると思いもしなかった」


『これで実用できます。主殿には、感謝しかありません』





それからは大変だった。


アカは、仮想型ゲームの重要なパーツの『幻想を見せて体感する術式』を作りだす。

1時間後には、1センチの球体を1万を作り出した。

その球体から端子の針が100以上は出ていた。


その球体をスポンジで包むのが俺と赤スケルトン。

何度もダンボールに緩衝材を入れて、大事に球体も入れて宅配の伝票を貼り付ける。


「あと何回するんだ・・・」


『まだ半分ですよ』





シェリーは、パソコンから『ユニコーン』に設計図と説明文を俺の名で送った。

その返事はすぐに来た。


リモートでの会話要請であった。

しかし、シェリーが画面に映ることは不可だ。

いくら『変化のピアス』でもリモートでは、とがった耳は隠せない。


なのでアニメの猫顔を映してのリモートが行なわれた。


『心臓部の部品は、こちらで製造して送ります。ただし、分解して調べるのはダメです。小さな傷でも付けば自然消滅するデリケートな部品なので・・・』


微妙な顔をする話し相手は「分かりまして。分解しないことを約束します」


『それと現実の時間とゲーム内の時間は異なっているので注意してください』


「それは・・・どうな意味ですか・・・」


『現実では1時間なのにゲーム内は、10時間も経過しています』


「それって歳もとるってことですか・・・」


『歳はとりません。しかし、人生経験は積むことは間違いありません。記憶もしっかりと残ることも確認してます』


「それもそうです・・・忘れてたら意味がありませんから・・・」



-  -  -  -  -  -  -  -



世界を震撼しんかんさせるニュースが流れた。


『ユニコーン』がネットでゲームCMを流したのが発端だ。


夢のゲームとしてささやかれていたゲームが現実のものとなった。

仮想体感型ゲームは、3Dをゴーグルで見せるのではなく、脳にライブしてゲームの世界で暮らしたり戦ったりできる。

そんな仮想体感ゲームを無限の可能性から『無限』と名づけられた。



「仮想体感型ゲームについて博士の考えでは、可能なのでしょうか・・・」


「0.0001でも可能性は、あります」


「そんな意味でなく、話題の仮想体感ゲームのことを聞きたいのですが・・・」


「私自身も信じられませんが体感してきました」


「どのような体感でしょうか・・・具体的に教えてください」


「ヘルメットを頭にかぶって「ゲームスタート」と言った瞬間にゲームの世界に居ました。広大な大地に風も吹いていましたよ」


「風も感じるのですか・・・」


「はい、感じました。匂いもかぐことが可能と聞いてます」


「え!どんな匂いでしたか・・・」


「あ!ゲームに夢中で匂いを意識することも忘れてました。科学者として失格ですな、ワハハハハ・・・」


アナウンサーは、人選ミスだと思った。

プロデューサーも「これはダメだ」と人事のようにつぶやいた。



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