第43話シェリーの気晴らし



アカが必死に気張る。

見本のピアスは目の前にあるので、変なピアスは作らないだろう。

そして、ようやく作り出したのが『変化のピアス』。


その変化のピアスを俺は、シェリーに手渡す。

シェリーの耳を普通の耳に見せるピアスで、耳に穴を開けないでネジで付けるタイプだ。

シェリーが絶対に穴は開けませんと拒否したので仕方がない。


両耳に変化のピアスが、そして普通の耳になるシェリー。

これでエルフに見えない。


シェリーは、鏡の前で不思議そうに自分自身のを見ている。

右を向いて左耳を見る。今度は左に向いて右耳を見詰める。


「シェリー、気に入ったか・・・」


『気に入りません!わたしがわたしでないような・・・』


「仕方ないだろーー。とがった耳は目立ち過ぎるから」


『仕方ありませんね・・・ユニバーサル・スタジオを見るために・・・』


そうなのだ。

シェリーは、急にユニバーサル・スタジオへ行きたいと言い出した。

親元で長く暮らしていたから寂しいのだろう。



はじめは、帽子でごまかそうとしたが勝手に帽子が取れてしまうのだ。

何度も何度も『髪には、精霊の力がやどると母から聞いた覚えがあります』


え!そうなの・・・エルフの不思議としてあきらめた。

なのでアカの錬金術でなんとかならないかと頼んだ。


「うん、出来るよ」とピヨンと飛んだ。


「できるんかい」と一瞬思った。




あああ、今からだと開園まで間に合わないぞ。

ユニバには、1度行ったことがあるから念じてみる。

ダメでも仕方ないと思っていたが成功だ。

目の間に鏡が現れた。


こっそりと顔を入れて確認。

やっぱ誰も居なかった。

膀胱ぼうこうが破裂しそうで立ちションした場所だから・・・誰も居ないのは分かってた。

手がベチャベチャになったし・・・


ドンと後ろから押出される。

え!と思いながらユニバの中に・・・押したのはシェリーだ。


「まだ開園前だぞ。金も払ってないのに・・・」


『お金を払うのですか・・・』


そんなことが抜けてるシェリーだ。


「スマホを買ってやったのに調べてないのか・・・アプリでアトラクション整理券やエリア入場整理券が手に入るハズだ」


『分かりました。ここの精霊に頼みます』


スマホに向かってブツブツ言ってるぞ。



またも精霊って、その話か・・・


それに人気過ぎるアトラクションは、すでに抽選になってるハズだ。

人気なのは入れないかも・・・


『整理券を手に入れました。わたしの指示に従ってください。時間に余裕がないので』


そんなハズは・・・おかしいぞ。

もしかして、本当に精霊が居るのか・・・だからスマホからでも手に入れたのか・・・


あ!アカもちゃっかり付いて来ていた。


「アカ、開園までステルスモードだ」


俺とシェリーを円柱状に包み込んで見えなくなる。


『1番最初のアトラクションまで移動しますよ』


え!どこ行くの・・・




開園したらアトラクションだ。

誰も居ないから1番だ。



何処へ行ってもシェリーは、目立っていた。

絶世の美女だから男は2度見してくる。そして俺の顔を見るんだ。



あっちこっちのアトラクションを見た。

4K3Dも見た。

マリオの世界は初めてだから面白い。

パレードも見るのか「そろそろ帰ろうよ」



『ここの雪は偽物です・・・これでは雰囲気がありません。精霊よ雪を降らせて・・・』


晴天なのに、急に寒くなって雪が降りだす。


「あれ・・・雪だわ。天気予報では晴天なのに・・・」


「それにしてもキラキラした雪ねーー」


まわりの人も驚いて魅入られるように空を見上げる。

それにしても綺麗な雪だ。


『もう時間がありませんよ。走ってください』


え!感傷に浸ってるのに急に手を引張られて、まだあるのか・・・





もう、俺は疲れた。

シェリーは、昼飯抜きの強行スケジュールで俺は何を見たのか忘れる程だ。

そして夜になったので例の場所にやって来た。


「帰っても良いんだよね」


『時間ですから・・・』


俺は念じる。

鏡が出現した瞬間には、倒れる込むように入った。


倒れ込んだ先では、アカとレッドが抱き合っている。

そして互いにペシペシ。



『主殿、今度はディズニーですね・・・』


え!ディズニーに行った記憶がないけど・・・


『パックツアーも予約済みです』


なんで。


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