第25話『オーク』販売所
わたしは、働き場所が欲しかったのに小さいが社長となった。
IT会社も子供の出産で産休している間に、あんな風になっていたとは・・・
主人は何も知らせてくれなかった。
わたしが居れば、あんな風にはならなかったのに。
それに主人のチキンな性格も見抜けなかった。
わたしと娘を捨てて逃げるなんて・・・
だから、この会社を1ヶ月で黒字経営に・・・
少し調べるだけで結婚詐欺にあって人生どん底に落ちて、探索者になって起死回生をなしとげていた。
1日で2千万以上を稼ぐ探索者なんて・・・それも1人で・・・
なので、わたしの推測では、野菜や玄米はダンジョン産に違いない。
近所に聞いても規模の大きいビニールハウスの畑はない。
ああ、これ以上の推測はやめよう。わたしは、オーナーを信じて会社を盛り上げるしかない。
わたし達が『オーク』販売所に来たのは9時。
それなのに台の上には野菜や玄米が置いてあった。
オーナーがやったとは思わない。
面倒くさい性格で、興味のないものには無関心というか興味がまったく無い。
野菜販売も利益無視で安く売ればいいと考えてる。
それなのに、夜の間に持ち込むなんて・・・
そんなオーナーがここまでやれるのか・・・誰か第三者がいるのか・・・
「社長、準備をしなくては・・・」
「ああ、そうね・・・決められた個数を袋に詰めてよ。りんごは4個、みかんは10個よーー」
それにしても松茸があるなんて・・・くんくん・・・外国産ではなさそうね。
手書きで『りんご4個100円』と書いてセロテープで貼り付ける。
『トウモロコシ2本100円』も貼る・・・
「社長、オープン5分前です」
「佐藤さんは、自動ドアのスイッチを頼むわよ」
「社長!お客さんが一杯ですよ」
「本当に多いわね・・・」
「私も宣伝しましたから・・・」
「そうなの・・・助かるわ」
『オーク』販売所が10時にオープン。
オープンセールの100円価格での販売だ。
りんご4個 100円
みかん10個 100円
トウモロコシ2本 100円
さつま芋2本 100円
ジャガイモ10個 100円
玄米2キロ 100円
玉ねぎ6個 100円
にんじん6本 100円
松茸1本 100円
しいたけ一袋 100円
しめじ三袋 100円
「松茸は、1人1本でお願いします。子供連れなら2本でもかまいません」
「そうなの・・・子供を連れて来れば良かったわ」
その大量にあった野菜に玄米がオープン30分で売り切れになった。
レジ前にはカゴを一杯にした、お客の列がながながと続いている。
「1.600円になります」
地元の人が多かったが、遠方からも来てた。
大阪、東京、埼玉・・・
「社長!凄い売れゆきですね」
「店の宣伝にしても安過ぎよ」
「オーナーからの頼みですからね。
「あの松茸って季節はずれなのに香りがとっても良いのよね」
「もしかして、栽培方法が発見された・・・」
「わたしの知る限りでは、バカマツタケの菌床栽培に成功したというニュースは、聞いたけど・・・まだまだ課題があるみたいよ」
「12月で松茸なんて、あり得ませんよ」
「それで今日の売り上げは・・・」
りんご300個・・・・・・ 7.500円
みかん500個・・・・・・ 5.000円
トウモロコシ500本・・・25.000円
さつま芋500本・・・・・25.000円
ジャガイモ1000個・・・10.000円
玄米500キロ・・・・・・25.000円
玉ねぎ900個・・・・・・15.000円
にんじん600本・・・・・10.000円
松茸50本・・・・・・・・ 5.000円
しいたけ100袋・・・・・10.000円
しめじ300袋・・・・・・10.000円
合計 147.500円
「さあ、販売は終わったから配送の仕事をしましょう」
「そうですね。注文が一杯です」
2人を後片付けに残して全員で工場へ。
ここにも大量の野菜があった。
7階層の森の中。
「あった!1日でまた生えたのか・・・」
土を押出すように松茸が生えていた。
球形に近い中開きの松茸が最上級らしい。
前回は、傘が開いた状態だったが松茸焼きにして食べた。
あんなに食えなくなるまで食ったのは、初めてだよ。
アカとレッドも松茸の味が分かるようで、パクパクと食ってた。
七輪で裂いた松茸をのせると香ばしい匂いが・・・
焼き具合を見ながらひっくり返す。
そして俺は、ポン酢につけて食べるのが好きだ。
酸味としょっぱさでいい感じだ。塩だけで松茸も食べたが・・・やっぱポン酢がいい。
歯ごたえもあって美味しい。
「クウーー」と鳴くハイブラック。
ハイブラックは逃げた。
よっぽど臭かったのか鼻を押さえたまま後ろ足で立って走ってた。
なんて奴だ。あんな特技があったのか・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます