第24話ネットオークション



なんか裏山のダンジョンが変なんだ。


6階層の畑で見事に育ったトウモロコシやジャガイモを収穫。

それなのに1日が経過して、またもトウモロコシとジャガイモが実っていた。


ジャガイモなんか土から抜き抜いていたのに、土から生えて葉はいきいきとしてたよ。

収穫前の状態とまったく同じだよ。


これからさつま芋、りんご、みかんを収穫しようとしてたのに・・・


オークのキングと2号に「お前らがやったのか」と問いただす。


首を左右に振って「ブヒブヒ」と拒否。

なら誰がやったんだ。


「わかった全て収穫するぞ」


トウモロコシやジャガイモ、さつま芋、りんご、みかんを収穫。

その収穫したものは、アカとレッドが収納。


ああ、すっきりした。




それなのに翌日には、トウモロコシ、ジャガイモ、さつま芋、りんご、みかんが実ってた。


それにトウモロコシやりんごが少し大きくなったような・・・

なのでビデオカメラとライトを設置して夜の畑を撮った。




なんとジャガイモの根と葉は、勝手に土に入り根と葉を使って土を器用にかけていた。

そして夜の間に実るってたよ。信じられない動画だった。


しかし、それより大変なのが収穫した物をどうするかだ。

俺1人で食い切れない。



赤字覚悟でネットオークションでもするか・・・

配送手続きも大変そうだ。収穫量から判断して1日仕事の配送に・・・嫌々ダメだ。


ならば配送会社でも・・・

金は持ってるから赤字経営でも問題ない。


今の最大の問題なのが野菜が無尽蔵たまる事だ。

だからって捨てることはできない。

ニュースで安くなったからって野菜を捨てる映像を見て、もったいないと思うのは俺だけかな・・・


それにアカの収納が巨大でも何かと不安になる。





不動産屋に会社のことを相談したら、いい物件があるらしい。

田舎道でも主要道路から近い物件。


工場の跡地で経営悪化で倒産して間もない。

そして競売物件になって不動屋さんが安く落札したみたい。


工場の機械はなくからっぽ。土地も思っていた以上に大きい。

これなら道の駅みたいに販売も出来そうだ。



「ここ、気に入りました。買います」


「土地込みで1千200万円ですが・・・いいのですか・・・まだ見せたい物件もありますが・・・」


「いえ、ここがいいです。現金で払います」


「ありがとう御座います。それで社員の件は私が呼びかけてますよ。知ってる人が多いので」





工場に10人がやって来た。


1人1人面接をしてゆく。


「え!この女性がいいって」


服の中のアカが一目見てペシペシと合図。


「わたし、東京で大学仲間とIT会社を立ち上げたので経営にも精通してます」


もう、しゃべるはしゃべる。

名は、篠原奈菜しのはらなな25歳。


その仲間の1人と結婚して1人の女の子を授かった。

しかし、仲間内で経営方針の対立が激しくなって倒産。

借金はないが夫は行方不明。

そして実家に帰ってきたらしい。


親は孫と一緒に居られると喜んだ。

篠原奈菜さんは、一人娘でおじいさんもスッカリ元気になったとか・・・



もう1時間も聞いたよ。


「分かりました。あなたを社長として雇います」


「え!社長」


「経営には口出ししませんから好きなように経営してください。そのかわり安くてもいいので野菜を売ってください」


「条件はそれだけですか・・・赤字でも良いなんて・・・わたしの経営学が・・・」


「黒字経営は考えてません。最初から黒字になるとは思ってません。赤字が1年経っても続けますので心配無用です。それだけのたくわえもありますから」


9人の社員と1人の社長が野菜販売会社「オーク」を設立することになった。


野菜をオークが作ってるから「オーク」って名にしたよ。

有限会社で資金1千万円。


駐車場やトイレと売り場は業者に任せて、工場ではネットオークションの準備に取り掛かった。

会社の設立は全てが篠原さん任せ。


有限会社の設立も始まる。

なんでもネットでの申請ができるらしい。

資本金とは別に金を使わないでもOK。ダンジョンの影響で色々改正されたらしい。

それと税理士とも話しあってたよ。


俺なら途中で投げ出していただいう・・・





そんな工場の夜中にレッドを連れて来た。


「道は覚えたか」


ピョンと飛びはねる。


「レッド、この工場に野菜を運ぶのがレッドの仕事だ」


「わかった」とまたも飛びはねる。


「わかったなら野菜をだしてくれ」


どんどん出すレッド。


PCの電源を入れてしばらくして、落札状況を確認。

最低で10円の落札で最高でも2100円の落札まで色々あった。

初めてだから信用もないから仕方がない。

合計件数は100件。送料は着払い。


メモに「配送、よろしくお願いします」と書きなぐる。



「ジャガイモOK、トウモロコシもOK、さつま芋Ok、りんごOK、みかんOK」


レッドが玄米の入った袋をペシペシと叩く。


「それは、そっちに置いてくれ。落札はないが次回で出す予定だからな」


玄米も中々の味があって美味かった。

白米にする精米機を持ってないからなーー、近所の精米機を使えば白米もなんとかなる・・・





裏山ダンジョンで探索して我が家に戻ったら、ノートパソコンのメールが「オーク」で一杯だった。


「みかん10キロ、1万4500円で落札です。どうします指示をお願いします」


なんでだ・・・落札状況を調べると全てが高い金額で落札してたよ。

なのでコメントを読む。


「息子のアトピーが徐々に改善しました。考えられるのは、りんごしかありません。どうか継続的に販売してください」


「ばあさんの腰痛も良くなって、わしの肩こりもいいです」


「肥満の娘が細くなったのも、そちらの落札品です。中々な金額で困ってます」


などなど。

俺が推測するに体で悩んでいたことが少しづつに改善したらしい。

劇的な改善でなく少しだからいいのかもしれない。



その原因が魔物と植物の関係性かも・・・

なぜなら6階層の畑では、オークのキングと2号が働いているでなく働かされていた。


もう、真っ昼間から植物が動きだしていた。

さつま芋は、土から出て「固くなったから耕せと指示」

2号は、ぺこぺこしながら耕してた。


キングは命令のまま水をいたり肥料の追加に大忙し。


会話はしてないのに、オークと植物の奇妙なコミニケーションができていた。

もう、理解できない。

もしかして、これって異常・・・



2号が土下座して「オークを頼みます」ってみたいにお願いされたよ。

仕方ないのでオーク3号を『しもべ』にした。


今では2号やキングにこき使われてた・・・




篠原さんの判断でネット販売を開始。

理由は、リピーターが出来たからだ。

販売価格もそれなりの価格におさえた。

それでも収益が大幅に見込めますと篠原さんから連絡があった。


嫌々、赤字経営を見込んでいたのに・・・もう黒字・・・それはそれでいいのかな。


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