第22話自己回復



高木唱の依頼で秘密裏のダンジョン受渡し現場。

関係者しか居ない・・・しかし、最悪だよ。


なんだよ日本に来て日本語で話せって・・・

こっちにベラベラとまくし立てるように話すな!何を言ってるのか全然分かんないって。


アイテムボックスのスキルオーブを取り出して解除。


なんて奴だ。まだ、しゃべりながら唾まで飛ばすなよ。


「感謝してると言ってます」


通訳の人が申し訳なさそうに・・・


そうなの・・・感謝してるの・・・なら良いけど。



最後の1つを取り出す。

これでアイテムボックスのスキルオーブは無くなった。

しかし、6メートル先のスモールスライムで補充はいつでもできる。



「××××、××××××××」


え!またも外国語だ。

あれ!最近聞いた外国語だ。あ!思い出した。


中国から独立宣言した人の言語に似てるぞ。

アクセントや独特な言い回しが・・・


するとウイグル人!


「ズ、ズ、ズ」そんな風に聞き取れた。


「はやく、はやく、と言ってます」


血を解除すると恍惚の表情になってたよ。

正気に戻った瞬間に走り去った。なんだよ、せわしい外人だな・・・あ、出口で地上へ・・・

相当な探索者のようだ。


「総理大臣も喜んでます。これは預かった物です」


え!それだけ言って行ってしまったよ。


紙には電話番号が書いてあった。

そして、『困ったらことがあれば連絡してくれ 桜田』とマジかよ。

総理大臣への直通で電話できるのか、嫌々それはない。

秘書の電話番号に決まってるハズだ。




突起を押して、急いで秘密ドアに入る。


出た先でアイテムボックスのスキルオーブをドロップさせまくった。

そんな作業をしながら考える。



今回来た連中って反ダンジョン連合の人間に違いない。

それなのにアイテムボックスのオークションが開催されてない。

それなのに石田幸子改めて高木しょうからスキルオーブの受渡しの連絡があった。


そんな情報から導かれる答えは、高木しょうと桜田総理が繋がってる。

そして高木唱は、スキルオーブを使って反ダンジョン連合と日本政府を結びつけた。


スキルオーブの金額も格安か日本政府が出したのか・・・どっちなんだ。

だけど高い金とは考えにくい。

なら何のメリットが高木唱にあったんだ。

桜田総理の繋がりだけではないと推測。


何か重要な情報が足りない気がする。


足元で足をペシペシするアカ「もう帰りたいのか・・・わかったよ」


1階出入り口に急ぎながら歩く。



受付で座ってると「魔石24個で24万円でよろしいでしょうか」


「それでお願いします」


指先をのせると光るセンサーが動き出す。


「どうもありがとう御座います。またのお越しください」


ああ、面倒だが魔石を買取りしてもらって、普通の探索者のように見せる。

1日で24万なら昔なら大喜びだったのに、今では億越えと比べると・・・


あ!スマホが振動・・・なになに、自己回復の落札者が決まったようだぞ。

それも探索者でなく両足を事故で切断した10代の少女だって。

え!注意事項に少女の探索者の試練の魔物討伐を手伝えって欲しい・・・


何を考えてる。

下手したら少女が大怪我をするぞ。

ダンジョンのスキルオーブ習得には、条件があった。

1回でも魔物を倒さないと習得できない。


それも他人の手伝いでの討伐は、0カウント。



確か金持ちがレベリングしてもらっている最中にスキルオーブがドロップ。


「金を払ってるから私が習得する権利がある」


「分かったよ。習得するまで下がればいいんだな」


「物分りがよくて助かる。その分ボーナスを払う」


しかし、そのスキルオーブを習得出来なかったことで、そんな条件があると分かった。



それなのに・・・どうやって手伝えって、無茶な依頼だ。

あ!思いついた。手伝う条件を連絡。





条件を飲んだのは、習得の当日だよ。

色々あったんだろう。



スライムエリアに行く前に、何人もの男が待ち構えて居た。


「心配しなくていい・・・習得者の家族だから・・・」


嫌々、凄い視線を感じるのだが・・・

あ!あの男はインドのカビーア。



テレビの特番で見たぞ。

ダンジョン連盟の話題で特番が流れた。


カースト制でのクシャトリヤ(王族、戦士)だったハズだ。

IT会社の社長で金持ちなのに・・・探索者としてインドトップランカー。


カースト制のシュードラ(隷属民)も仲間に引き入れて、探索者としてインドトップランカーに登りつめた。

インドでもカリスマ的存在だ。


そんな男が来てるなんて・・・そうか、金持ちで探索者だから少女は娘か・・・


探索者となったのもポーションを手に入れるためで・・・他人任せにできない人なんだろう。

しかし、ポーションを使っての治療は失敗。

ポーションにも条件があったのだ。


本人が手足の存在を深層心理で自覚してる必要があった。

本人が、長い間生活で欠損部が無いと自覚すると、ポーションも治すことはしない。

ダンジョン発生前の数年前の事故に違いない。


しかし、俺の血魔法の自己回復は違ってた。

小学校の時に切った盲腸が復活して手術跡も綺麗に治ってた。

盲腸も正常だったのが幸いだったが・・・


だから少女も治るだろう。


それにしても落札金額は43億。

娘のために43億もポンッと出せるとは・・・



あ!少女だ。

隣にいる女性は誰だ。俺を見てお辞儀をしながら「むすめを・・・よろ・・しくっおねがい・・・します」


ああ、片言であるが必死な言葉だ。

母親か・・・


何度も少女を見ながら男達の方へ。



「よろしくお願いします」


「え!日本語が話せるの」


「日本のアニメで勇気をもらいました」


はーん、そうなんだ。

足が無いから家で過ごすことが多いから・・・何となく理解できるよ。



俺は、裏山から切った竹を取り出す。

竹の細い先には、赤い針が何本も固定。これでスライムを叩けば討伐完了だ。


「この竹で、あのスライムを叩くんだ」


「この竹でスライムを倒せると・・・」


もっともな話だ。最強のスライムを竹で倒せるなんて・・・


「俺を信じてやってみてくれ」


「分かりました」


「それと、ここで起きたことは秘密だから・・・」


「はい、約束します」


プルプルと震えながら長い竹を持って、俺が車椅子を押してちょうど良い位置まで・・・


あ、竹先がスライムにかすった。

スライムはプシャーとなって消えた。


「ステータスは・・・」


「はい、レベル6になりました」


お、成功だ。

赤いスキルオーブを取り出して、少女の手の上に・・・そして解除。


少女の顔も恍惚こうこつな表情に・・・


え!スカートで隠された下半身から骨が作られながら肉が・・・

こんな回復なのか・・・

その間の少女の顔は、苦悶くもんにもだえるように「う、あ・・・」と声がもれる。


足が2本もあった。

そして生まれたての小鹿のように立上がった。


「立てた・・・本当に立てた」


そして、家族が待ってる方へ歩きだす。

え!立ち止まって振返った。


「ありがとう・・・本当にありがとう」


そう言って力強く歩きだした。


しばらくして遠くから泣き声と喜びの声が・・・






翌日、高木唱と会う羽目に・・・場所はダンジョン1階のスライムエリア。


「これ!」


札束が山積みになってた。


「なんだ、この札束の山は」


「娘の父親からの謝礼の10億円よ。日本政府にも内緒だからね」


「もらっても良いのか」


「わたしは頼まれただけだから知らないわよ」


そのまま高木唱は、秘密ドアに入った。

金持ちの金の使い方って・・・


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