第8話取引き



石田幸子は、たかぶる感情を抑え言い放つ。


「そうね・・・オークションの話でもしましょうか・・・わたしの買取会社であなたのスキルオーブをオークションに出品。そして手数料込みで儲けの40%で我慢して上げるわ」


なにをむちゃくちゃなことを言ってるんだ。ギルドに20%の税を納めて更に40%だと話にならない。

ドロップさせた本人が40%なんて。


「カン違いしないで、あなたにとってもいい条件なのよ。考えてみて・・・あなたがギルドで交渉したら、あなたの身ばれは確実よ。探索者やギルド・・・海外の国からも狙われるわよ。あーら・・・大変なことになるわねーー。捕まってこき使われる運命ねーー」


そうか!身ばれはダメだ。


「しかし、結局取引きで身ばれするから同じことだ」


「バカねーー、仮面をかぶってダンジョン内で取引きすればいいだけよ」


「嫌々、ダンジョンで取引きすれば結局ばれるに決まってるぞ。ダンジョンの出入りが管理されているのを忘れてるぞ」


「わたしだけが知ってる抜け穴があるのよ。その秘密を知らせるかわりにアイテムボックススキルオーブをもらうわ。それで・・・どうする」


え!抜け穴・・・信用できる抜け穴ならいいかも・・・

それに買取会社は、ダンジョンが発生して法のスキ間をぬうかたちで会社が創立。

その会社が今まで継続してるなら大手か訳あり会社しかないぞ。


「その秘密が先だ。納得したら条件を受けよう」


「このスライムエリアには、誰も知らない秘密があるの・・・あの壁の突起を押して1分、凹んだ壁から日本のダンジョンなら何処へでも行けるのよ」


え!そんな秘密があるのか・・・


俺は突起を押して、その凹み手を入れる。


「本当に入れたぞ」


壁から上半身が出てる。マジか・・・あ!スライムだ。

飛んで来たスライムに急いで赤刀で切った。スライムはあっけなく消えた。

またも飛んできたので突きさす。


え!そんな俺をガバッと引張られる。


「オイオイ!」


「あんたバカなの・・・1分って言ったよね。あっちとこっちに体を残した状態で1分が経過したら体がチョキンと切断よ。切断されなかったことに感謝しなさい」


え!そんな事になるのか・・・想像しただけでヤバイぞ。


約束だから仕方ない。

解除したアイテムボックススキルオーブを投げる。


受取った瞬間に恍惚こうこつの表情に・・・取得時にあんな風になるのか・・・


「いい取引きが出来たわ。商品の落札者と受渡し日とダンジョン、後で連絡するわ。よく覚えて、受渡し日の前日には、ダンジョンに入ってダンジョンを移動するのよ。そして、その派手な防具と刀はダメよ。そうね・・・黒がいいわ」


突起に触って、あのドアに入って姿を消した。

本当に消えているぞ。






石田幸子と出会ったのは、名古屋だ。

その名古屋の探偵社に来ていた。

この探偵社は、不倫調査や結婚詐欺をした人まで探し出すプロだった。

その詐欺師から金を奪う事もしていたらしい。そのかわり30%が成功報酬。


なので裏の組織にも詳しい探偵社としても有名だった。


「高木銀二を調べつくす・・・内容は分かりました。警察にも捕まってるので安くなるでしょう」


そして電卓をトントントンとはじき出す。


「3日で金額は100万でお願いします」


俺は、100万をテーブルの上の置いた。

奪うように取って数えだす。


「情報が気に入れば後100万をだします」


「え!それは本当ですか調査しがいがありますなーー。しっかりと調べあげます」



石田幸子は、全てを話さなかった。

高木銀二に怨みがあるのは分かった。その怨みを知って、幸子を知りたかった。

未練はないのだが・・・




大通りを歩いていると話声が・・・


「スキルオーブのオークションってあり得ないよ。絶対に詐欺だぜ。それもアイテムボックスだとは、漫画の世界と違うって」


「それはどうかな・・・こんなに有名になって詐欺なんてリスクしか残らないぜ。売名行為だとしても会社が倒産するだけだよ。そんな事をする意味がないよ」


あああ、歩いていてもオークションの話で持ちきりだ。

石田幸子は、しっかりと仕事をしてるみたいだ。


あれ!巨大スクリーンにもそのニュースに関係ありそうなニュースが流れていた。


「ご覧ください。アメリカ副大統領が突如来日してきました。中部国際空港セントレアでは、厳重な警備で混雑しております」


福大統領が歩く姿がカメラにとらえられた。


「あ!あれは、アメリカ探索者のマッケンです。休暇でアメリカに帰っていたのに、スキルオーブを手に入れるためでしょうか・・・」



-  -  -  -  -  -  -


アメリカ大使館の中で、密かに会合の準備がなされた。

何度も盗聴器が仕掛けられてないかチェックがはいる。


「OKです。異常はありません」


副大統領がゲストと部屋へ入ると、ドアの前や庭にも厳重な男達が配備。



「この会合は最後の合意確認・・・くれぐれも抜け駆けは許しませんよ。副大統領である身で日本に来たからには、妥当な金額で先進国で8つのスキルオーブを分け合う。それが最終目的です」


「それは同感です。6階層から地上への運搬は、緊急に解決したい案件ですからね。人の運搬にも限りがあります・・・」


「それはカナダも同意します・・・特にEUには、お願いしますよ。抜け駆けのないように・・・」


ドイツ大使は、イギリス、フランス、イタリアの大使の顔をみてから話し出す。


「我らも同じ気持ちで挑んでます。それでも聞きたい。アイテムボックスは、本物だったのですか・・・」


「本物と確信してます。オークションを開催する代表が、自身のアイテムボックスをダンジョン内でギルド支部長に見せた。それはハッキリしている・・・その証言を信じるしかない。迂闊うかつに動けばオークションから締め出しもあり得ると警告まで・・・」


「それだけ自信があるなら・・・分かりました」


ドイツ大使は、バーガン副大統領の次期大統領に向けてのパフォーマンスに付き合わされたと思った。

それにオークションの最終日は、金額も表示されないらしい。

そして落札後の金額を知るのは、開催会社と落札者とギルドのみ・・・次回のオークションもありうる。


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