第2話血魔法



ダンジョン改札口に探索者カードをサッとかざす。


すると確認が完了して「ピッ」と音がして青いランプが点灯。

それを合図に厳重な檻の改札口が開く。なんてスムーズな動きだ。


改札口以外は直径20センチの鉄柱でおおわれている。もしも、魔物が出て来た時の対策らしい。

こんな鉄柱を破る魔物なら、到底勝てそうに無いし逃げるしかないぞ。

そんな風に思いながら改札口を通った。


いよいよダンジョンか・・・

なけなしの金でレンタルした初心者防御服を再度確認。

1週間のレンタル料は8万、中々の出費だ。

ジャージやツナギ姿で来ていれば悪目立ちするから仕方ない。

ギルドも容認できないだろう。


あ、前の列の探索者は、いい装備だ。うらやましいぜ。

あれって6人パーティーか・・・仲間がいて、なんかいいな・・・


あ!先頭の男性がダンジョンから弾かれた。

あんな風に弾かれるのか、衝撃だ。


「なんだよお前!怖くなったのかよ!」


「オイオイ、そんなに攻めるな!高田は新婚だから・・・そうなる気持ちを分かってやれ」


「わるいな・・・そんな気持ちは、ないハズなんだが・・・おかしいな・・・」


「いいよ10分休憩!それでいいか」


6人は横の広いスペースに移動。そして雑談を始めだしている。


ダンジョンあるあるだ。

ダンジョンに入る気のない者は、ダンジョンから弾かれる。

ダンジョンが拒むと言われている。


ダンジョン発生時。

政府は、警察の志願者を募りダンジョン探索を指示。

しかし、ダンジョンに入ろうとして弾かれる現象が発生。

入れる者と入れない者の原因が分からないまま続いた。


そしてダンジョンの地質調査の為に、ダンジョンの壁や床を破壊しようとした。

既存の工具はまったく歯が立たない。

ダイヤモンドカッターもダメだった。


しかたなく学者を現地に派遣。


「1階を調べるだけなので、どうかお願いします。身の安全は保障します」


そうやって無理やりダンジョンに入れることに・・・

ことごとくダンジョンから弾けられて、学者5人はホッとしたようだった。


一人の学者が「これは、恐怖する人間をダンジョンみずから拒んでいるのでは・・・」


その一言で心理学者などが調査。



原因がダンジョンを怖いと思う気持ちだった。

ダンジョンがそれを察知して弾くと結論。


なので思うように探索は進まなかった。


今では、心を落ちつかせると入れる場合もあることが分かってる。

しかし、強制されて入らせる事は不可能だと認識。




ああ、俺の番だ。

よくよく見れば空間のゆがみが見える。まさに人間を騙す仕掛けだ・・・


俺は再度、気持ちを落ち着かせて静かに入る。



あ!何か暗転したような弾かれてなかった。


「これがダンジョンか・・・あ!あれがヒカリゴケか・・・」


そんな時だ。

体が熱くなった。これは、間違いなく何かをもらったぞ。


「ステータスオープン!」



神悠真じんゆうま


Lv0


HP10/10

MP10/10



血魔法



え!見た事も聞いた事もない魔法だぞ。

これはあたりか! うっすらと見える血魔法をなが押ししてみる。


条件がそろってません。

そんなバカな・・・普通なら使用方法が頭の中に入ってくるのに・・・なんでだ。


そんなパニック状態の俺に災難が!


肩に何かが落ちてきた。

え!スライムだ!


溶かされて殺されてたまるか・・・腰のナイフで必死に刺す。

あ!ナイフがとられた!


なんとしても剥がすぞ! ガッツと掴む・・・あ!手袋が溶けだしたぞ。

手の平が熱く感じる。

出血してるぞ!もうダメなのか・・・ダンジョンに入ったのは、無駄だったのか・・・


【初めての血魔法が成功しました。スライムを『しもべ』としますか yes : no 】


俺は、急いでyesを押した。


肩から降りたスライムがプルルン、プルルンとしてた。

なんでだろう『よろしくお願いします』と言ってるような? 


魔法攻撃無効!物理攻撃無効!と恐れられたスライムが、俺のしもべになったぞ。

討伐された事が無い魔物が・・・信じられない。


それにしても、このスライム。

普通なら1階の離れた場所でたむろしているハズなのに・・・なんでここに居るんだ。


「もしかして・・・お前は、はぐれスライムか! 」


プルルンと震えたぞ。

やっぱり、はぐれスライムか・・・



あ!手の平が治ってるぞ。それにステータスの異変に気づく。



神悠真じんゆうま


Lv10


HP110/110

MP110/110



血魔法(1)



スライムLv15



俺のレベルも上がってスライムが追加されてるぞ。

それもLv15なんてありえない。


日本のトップの探索者でもLv12なのに、お前はそれ以上か・・・

返事は返ってこない。やっぱり・・・


スライムの項目をなが押しする。



スライムLv15


HP1100/1100

MP1100/1100



魔法攻撃無効

物理攻撃無効

収納

溶解


それがお前の能力なのか・・・俺より上だぞ。



あ!ゴブリンが走ってきた。


「やばいぞ!」


俺の武器のナイフがない状態なのに・・・スライムを掴んでゴブリンに投げつける。


「ゴブリンを溶かせ!」


ちょうど頭に命中。


苦しみだしてのたうち回る。そして、消えて無くなったぞ。

ゴブリンが死んだ。


俺は駆けよるとスライムの上には魔石があった。



ゴブリンの魔石は、低級だが3000円でギルドが買取ってくれる。

ギルドは企業に売って、しこたま儲けてるみたいだ。

この3000円も税金が引かれた金額らしい。

なので探索者は、納税しなくていい。


「そうだ!お前の名前は、アカだ!」


なんだか喜んでるぞ。



あ!あの6人パーティーが入ってきた。


「あの人、なにをやってるの・・・」


「声が大きいぞ。初心者あるあるだな」


「そうかもね・・・それにしてもいい男だわ」


「そんなことより早く行けよ。予定が押してるぞ」


「わかったよ」


好きな事を言って通り過ぎた。

チキン野郎呼ばわりか・・・


それにしても変なことを言ってたな。


あ!体が・・・俺の手って、こんな手だったか?

防御服のたるみが半端無いぞ。

俺って痩せたのか・・・え!身長も伸びたような・・・

壁にくっつき手で頭の位置に・・・マジか180はあるぞ。


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