ダンジョンで血魔法で無双

@katuniro

第1話結婚詐欺に闇金



「本当にだまされたのは間違いありません。どうか金を取り返せないでしょうか? ・・・」


そんな悲痛な俺の気持ちを刑事さんに訴える。


「そうですか・・・わかりました。しかし、あまり期待しないでくださいね。有力な情報が少なすぎですねーー。相手の顔写真もないし住所も名前もでたらめで、どう捕まえろと・・・捕まったら連絡します」


そんな風に素っ気ない返事だった。

あれ・・・刑事さん、ちょっと薄ら笑いして上司に書類を手渡しているぞ。

そして会話の中で上司も薄笑いだ。


俺をバカにしてるのか!



そんな気持ちでヒソヒソ話に敏感になって横を見る。

婦警の2人が通り過ぎている。なんだ俺の話じゃーないのか。


通り過ぎた壁にあった鏡が・・・俺を映し出す。

ああ、なんてさえない男だ。

21の男が結婚詐欺にあって、容姿も太っていて背も160だから・・・


こんな太る原因は、親の出世で関西から愛知へと引越。

人見知りの激しい小学生の俺は、ストレスで暴食にはしった。

そして太った。

まあ、お決まりの『いじめ』の対象になり、堪忍袋が爆発して『いじめ』た3人をボコボコにして1人の腕まで折った。


相手が『いじめ』ていたのは、先生や生徒も知ってたから大きな問題にならずに隠蔽いんぺい

学校ぐるみでクソだ。それからは『いじめ』は、なかった。


それなのに、なんて情けない姿だ。

ああ、どん底気分で・・・何も考えられない。


被害総額6千500万、俺の親の死亡保険金が全て騙された。






そんな俺は、親の居ない実家に帰る。

ああ、これからどうなるのだ。


「オイ!何を悲しそうに下を向いていやがる」


家の玄関先にガラの悪そうな男が立っている。


「え!誰ですか!」


「とぼけているのか!石田幸子の連帯保証人にハンコを押しただろう!残り1週間だぞ」


何をいってるのか全然わからない。

もしかして・・・幸子が家に上がり込んだ時か!


男が証文のコピーをヒラヒラとさせているのを奪い取る。


「破っても無駄だぞ!それぐらい分かるよな!」


間違いなく実印だ。


それも1千万の借金だ。どこまでもコケにしやがって・・・

あまりもの悔しさに握ったコブシが震える。



「このサイン!俺のじゃない!」


「そんなの知るか!ハンコは実印だって聞いてるぞ!」


「もしかして幸子とグルか!」


「そんなの知らないな・・・しかしな・・・ハンコを押してるのは事実だ! 1週間後に返せないなら借金でこの家をもらうからな」


「なにをバカの事を・・・」


中古の家だが安い相場でも3000万はするハズだ!


「手放す準備でもしてろ!」



いきなりボディブローが・・・そして前のめりに倒れる。

そして蹴りが・・・腹に・・・


おもわず昼に食べたものを吐きだす。

あああー、情けない。

こんな男にぼこられるなんて・・・みじめ過ぎて涙が滝のように流れる。

親が死んだ時以外で、こんなに泣くなんて・・・

自分自身にヘドがでる。


「泣いても、ゆるすと思ってるのか!」


またも腹を蹴られる。



その時だ・・・自転車に乗った警察官の姿が見えて声が・・・


「そこで何をしてるんだ!」


ご近所さんが通報したらしい。


「警察にちくっても無駄だぞ!地獄まで追い駆けるからな」


俺の胸ポケットに何かを入て走り去る。


「君!大丈夫か」







交番所で被害届を出す。


名刺には『アボット』と書かれていて、裏には[たけし]と走り書きがしてあった。


交番の警察官はやさしかった。


じんさん、このアボットて闇金だよ。気をつけた方がいいよ。すぐに電話すれば駆けつけるからね」


「ありがとう御座います」


あああ、疲れたよ・・・トボトボと家に帰った。

足が重い。






そして、家でノートパソコンで『アボット』について調べる。

出るは出るは今までの悪行が。そして、実刑判決がなかった。

もう法律スレスレで世間での評判は悪い。


最近では、家族を追い込んで一家心中までさせていた。


それも1ヶ月前の話だ。

社長は捕まったが、3日後には証拠不十分で釈放。

社長も元探索者らしい・・・


「貸した金を返すのが当たり前ですよ。違いますか!」


詰め掛けた記者に笑いながら話したらしい。

ああ、悪い顔をした男だった。


更に2年前には行方不明者まで・・・警察は何をやってるんだ!

あんな奴らを逮捕も出来ないのか・・・


ああ、スマホにまたも「返さないと困ります」と・・・これで100件だ。


あれ!口笛が・・・外からだ。

もう暗くなってるのに窓から外を見た。


あの男だ!背筋がゾクッとした。

俺を確認して手を振って立ち去った。



最後の望みは、あれしかないのか・・・やっと決心。







愛知県豊田駅前の大きなビル。


【豊田駅前ダンジョンギルド支部】

国内でトップテンに入るダンジョン支部の建物だ。

13階建てで、1階にダンジョンが鎮座ちんざしている。

外からは、そのダンジョンが見えない。


そのギルド支部の中に入る。

ああ、なんだかドキドキしてきたぞ。

探索者登録してダンジョンに入る予定だ。


地下2階のコボルトからポーションがドロップするらしい。


1本1000万円。

相場によっては、最高額は1300万もしている。

今日の相場は1140万円とスクリーンボードに表示してあった。


なんでも、事故で無くなった腕も治す治療薬で世界で引張りだこ状態らしい。

欲しい人は、いくら出しても欲しい。


そのポーション1本あればチャラだ。

利子の100万円を払っても40万の儲け。



あ!なぜだ!思うように足が動かない!

なんで!こんな時に足が振るえるんだ。

このダンジョンは、俺にとって因縁のあるダンジョン。



3年前に、日本のあっちこっちでダンジョンが発生。

この豊田駅前に来ていた両親が、偶然にも発生したダンジョンに入ってしまい帰らぬ人となった。

よく見ないとダンジョンと気付き難かったのが原因だ。

駅前に設置された監視カメラが、大勢の人が入るのをとらえていた。

中で何があったのか誰も分からない。しかし、想像はできる。


ダンジョンで死んだ場合は、ダンジョンに吸収されて消える。

そんな不思議な世界だった。

他のダンジョンで入って逃げ帰った人は、緑の色の小人に襲われたと証言。




「身分を証明できる物はありますか」


受付で運転免許を見せる。すると、あっけなく探索者登録が済んだ。

事前にネットの講習を2時間も受けていたし、犯罪歴や学生時代の素行も悪くなかった。


何か騒いでいた。振り向くと原因は、すぐに分かった。

素行の悪かった人がダンジョンポリスに連れ出されている光景だった。


「放せ! 放せって! 俺がなにをしたって!」


「君は学生時代に非暴力犯罪を起こしている。なので探索者としての資質に問題がある。文句があるのならダンジョン省の訴える権利がある。しかし、今まで勝利した者はいないハズだ」


「そんな法律なんか知らないぞ」


「知らないのは君のせいだ。あきらめたまえ!」




「先週なんか5人も・・・困ったものです」


そんな風に受付の人が言い放った。



ダンジョンの中には監視カメラは無い。設置不可能だった。

魔物が壊すからだ。


だからダンジョンの中は、無法地帯といってもいい。

ダンジョンの中で人が死ぬと1分後には、きれいに跡形もなくなっている。

血の痕跡も全てが消え去るのだ。服も荷物も・・・

犯行を実証する証拠が消滅。


人が殺したのか魔物が殺したのか分からない。

なので目撃者がいないと捕まえる事ができない。


誰も見てない所では、殺し放題であった。

なので初心者の探索者が増えなかった。

そのかわりサイコパスや悪い奴の多くが探索者になっていた。


政府もダンジョンの資源を欲している時期で焦っていたのかもしれない。



2年前に、素行の悪い連中がダンジョンで集団リンチを起こした。

その動画がネットに晒されて問題となった。


それ以前にも、地上で殺しや問題行動のある探索者は、統計的にも学生時代に素行が悪かった。

それを統計的に知らせる学者があらわた。

その学者の息子がダンジョンで行方不明になったのが原因だった。


地上では魔法は使えないが強くなった身体能力が半減しても強かった。

ついカッとなって人を殺すのが当たり前に発生。色々な意味で問題になっている。


大人しい日本人もついに立上がった。国会前でデモを呼びかけて抗議。

5万にも膨れ上がった。

地方にもひろがって与党、野党も協力して1年半前に新しいダンジョン法が成立。


素行の悪い学生の報告義務が学校側に課せられた。

小学、中学、高校、大学には、拒否権はない。


従わなかった場合は、おもい罰則が課せられているダンジョン法であった。

そして、その情報をギルドが管理。


なので氏名だけで要注意人物として弾かれるシステムだった。


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