迷惑
次の日、早朝。今日は少し気分が落ち着いていた。なぜなら、迷惑はかけるにせよ修行旅行の件が一段落したからだ。斗架は颯爽と家を後にし、自転車を漕いでいる。自然ある道路を颯爽と駆け抜ける。そして、少し小高い山に着くと自転車を押し登る。結構な獣道を進だ。看板には身の丈山と記されている。数十分ほど登ったところが目的地。午前4時、小高い山の麓に斗架はいる。誰も居ないその場所で準備体操をまず始める。それが終わると、空を見上げ深呼吸をする。まだ朝日は出ておらず、暗い。そんな中僕は動き始める。体をひねりパンチ、キック、パンチ。足を広げて重心移動からの蹴り、偽カンフーなるものをしている。随分長いことやってきただからだろうか、とても滑らかな動きだ。何者でもない自分がいるこの瞬間が過ぎていく。小さい頃から続けていることはこれだけ。誰も知らない僕。強くなりたいという思いからではなく、何者かでいたい、願いたいそのために続けたことがこれである。太陽が登り始めた。そして、それは修行中の斗架を照らし、影を作る。それはまさに戦士のようだ。
今日もまた、いつも通りの時間に登下校をする。しかし、いつもと違ったことがある。声をかけられたのだ。
「おはよなのです。斗架君。」
冴が斗架の座る席に小動物を見るかごとくこちらを伺う。
「お、はよ。」
余りに久しぶりの挨拶は小さい声になった。
「おはよ。」
よしのも隣の席で美夢と話をしている最中こちらを向く。
斗架はコクリと頷く。今日もまた、佐々木さんは不機嫌そうにこちらを見る。それを見て僕はすぐさま本を読み始めた。
「ほら、美夢。」
「無理、無理。」
小声だが、聞こえてしまった。とにかく下を見て、本を読むのに集中する。分かっていても、少し虚しいという感情が無意識的に出てしまう。
「美夢ちゃんどうしたの?怖いの?」
美夢はひどく、震えてる。つらそうな顔をしている。冴は美夢を優しくさする。冴は美夢が震えてることに気づく。さっきまでなにもなかったのに。
冴は斗架の席にドスドスと迫る。そして、机をパンと叩いた。斗架は本越しに様子を伺う。すると、冴がこちらを少し強く睨んでいる。
「美夢ちゃんに何かした。そしたら、私、私、許さないんだから。」
冴は言葉に詰まりながら、目を赤らめて言う。
「うんう、平気。」
彼女はそういうと、僕の前の席に座り顔を机につけてうつ伏せになった。
「あはは、斗架くん、平気、平気」
よしのさんがこちらにガッツポーズをしている。
泣いている冴をよしのはなだめる。
佐々木さんにとって、班にとって僕は不幸の原因だ。そうなんだ、いつもそうなんだ。自分の意志とは無関係に事が進んでしまうのは。ごめんなさい。本を見ながら心のなかで謝る。
この後も、よしのさんは声を掛けてくれるけれど、佐々木さんは勿論のこと、冴さんはその後、僕に泣きながら誤った後、佐々木さんを心配して、僕には話しかけてこなかった。
そして、そのまま当日を迎えた。
「おっ、斗架君来たね。」
ピンクのワンピースに身を包む、よしのさんが手を振る。正直いって今日は、とても不安だった。どうしたらいいのか自分でも分からなかった。今更、グループの輪に入るなんてことはできない。自分にできるのはそつなく過ごして、皆の邪魔をしないことだと思ってここ数日は行動しようと頭にプランを描いてきた。
「おは。です。」
バスに乗り京都に向かう。僕は後ろの方の席で隣はよしのさんだ。
「宜しくね。」
「はい」
「斗架くん、なんだいその重そうなリュックは」
「色々持ってきました。」
大きな荷物は前もって旅館に送ってある。でも、何かしら使うことがあればとルールの範囲内で色々持ってきていた。
迷惑は嫌いだ。喋るのは苦手だ。だから、こんなことでしか自分を表せない。
「そのまえに、斗架君。敬語やめよう。」
「んん、難しいです。」
「嫌われちゃうぞ」
よしのさんが人差し指を立てて笑みを浮かべながらキツイ言葉を投げる。
「はい。」
嫌われるのはいい、でも、だれかがやな思いをするのはやだ。
「よし」
冴さんがこちらを
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