第8話

フェイズドアレイレーダーのように3次元構造を観測、撃墜を繰り返す。敵の軍勢の放つ技なるものとこちらがわの魔法は拮抗している。

「さて、どうするか」

「うちも、やるよ。先生に教えてもらったので」 でも、俺は真莉の手をとり、引っ張る。柔らかな手を厚い手で。

「いや、真莉ちょっとこっちへ」

「いや、やる。」引っ張り返されるけれど、負けじと俺も引く。

(まだ、大丈夫。少しでも長く生きてほしい)

そう思うのは普通だろうと自分に言い聞かせて。

「待っていて」

真莉を狭い暗闇に閉じ込める。そして、俺は深呼吸をし、目をゆっくりと閉じ、心を落ち着かせ、目を開くと同時に耳鳴りが鳴るくらいの力を入れる。そして、物凄い気迫で大地を揺らすイメージで歩き出す。

防御壁が壊れる音と共に攻撃が降り注ぐ、それを打ち砕くわ無数の魔法。その中を脇目を振らずに歩く。


「取り壊す我が羨望。コイツか?眠れる魔女さんよ」

「ええ、そう」

防御壁を破った者が俺の眼前に2人。一人は一度相まみえた魔女。もう一人は黒装束を着た。サッパリした人間にしか見えない者。

「2人居るって聞いたんだけど、一体何処だーい」

陽気に大きな声を出すと同時、俺の側に正面から迫り肩を組まれる。頬と頬がすれすれだ。

「おっと!良い反応だね。」

それを咄嗟に跳ねのける。

「俺はグラマン、まー、俺も2人に多勢は気が引けるんだけどねー。命令だからねー。死んでくれるかい」

身構える体制を整え、間合いをとる。一方グラマンは棒達の姿勢を崩さない。 

「身構えることはないさ。そうだな。少し話をしよう。」

「グラマン!それはあの方の…」

グラマンは手を魔女に向け静止する。

「なーに、どーせ死ぬんだ。少し位悪いことじゃないと思うのだよ。」

のけぞりながら魔女の方を見る。

「好きにすれば。」

「うん、そうさせてもらうね。君の名前から聞こうか。」

「司輅星 斗架」

「ほう、実にいい響きだ。しかし、何故顔半分隠してるんだ。」

「使えないからさ。あえてそうしてる。」

「ふーん、まーいいさ。それよりチャンスをやるよ。なーに構えることはないさ。ちょっとしたゲーム。最近、相手がいなくてね。寂しいんだよ。ルールは簡単俺に一発入れたら見逃してやる。次回はその時だ。」

「入れられなかったら」

「勿論、ゲームオーバー、やるかい、やるよね勿論。」

「ああ」

「じゃあ始めようか」

「威圧流厳冬期」

「な」

「俺の勝ちだ」

「すごいなー、速すぎてつまらないよ。ま、約束は約束だからね。いいよ帰って。」

展開は早いが俺も真莉を連れて帰る準備をする。その子がもう一人か。でも、可笑しいなその子死ん…。」

「グラマン、何をしている。」

「ステラルーさん。いえ、ゲームですよ。ゲームいいでしょ。もう少ないのですから。」

ステールは怖い顔に野太い声を出す。「いいだと。ふっ。」

「逃げて。」

ステールは俺めがけて何かをしようとする。グラマンは誠実なのか約束を果たそうと静止していた。この瞬間、時が止まって見えた。

俺も逃げの準備をしていた。それは体の紋様を引くことによって成し得る。紋様は誰かから貰うもの。関係の深い人、喋った人。あげたいと思った人に渡すもの。それがあればいつでもその人の所に行ける。しかし、遅かった。気づくと真莉のお腹に穴が空いていた。「グー、あの」真莉は血を吐きながら手を寄せてくる。喋るなと言いたいけど穴が空いている。何か言いたげな真莉を俺は抱きかかえる。青く透明に消えかかる彼女の顔を耳元に近づける。

「 いっぱいね。思い出、ありがとうね。」

その瞬間涙が出ると共に、俺は消えた。

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