第7話
森林の外れ、軍港跡地の跡地の様な廃墟にやってきた2人。いつ襲われてもおかしくない状況に伴う不安を静けさと暗闇が助長する。
「先生ここは」
「あぁ、確かここだった筈」
高低差の低い階段を登ると土とコンクリートで出来た遺跡があった。かなり長い間使われていた形跡が無く草がぼうぼうに生え、コンクリには苔も付着するなど風化も進んでいる。
岩石に埋もれた所を手で拭い取ると文字が浮かび上がる。
"チームミネグラ"
「なんですか、これ?」
「昔、使われていた防衛基地だよ。」
「防衛基地?」
「結局、使わなかったんだが」
「まぁ、ここならひとまず安全だろう」
所々壊れかかっているがまだ外観はしっかりとしている。でも入る所など見つからない。
「こっちだ」
一行は岩でできたドアの様な装いの所に居た。そこの周りにはレンガの壁があり西洋風な雰囲気も伝わってくる。
先生の片手が扉に縁取られたドラゴンの様な紋様に触れてしばらくすると縁に沿って水色のに光る液体の様なものが流れ出し始め、次第にドラゴン全体を青い光の液体が行き渡り姿を浮かび上がらせる。そして、風化していた岩が落ちダイヤの様なドアが姿を見せる。
「一体」
それもつかの間、その光は闇に静まり返った一行の姿を照らした。次の瞬間だ。ドラゴンから青い液体が滴り落ちるではないか。そして、地面にも液体が浸透し、一行の周りを照らした。
ザーーーー
この音とともに2人の居た台座が20cm程上に上がると何もなかったはずの土から枯木が次々と蛇のように伸び始めた。そして、ドアが上に上がったかと思ったら、地面の揺れとともに城の様なものが出現し、先程までの扉が上で看板の様な役割を果たし、一行の前には新しいドアが出現した。まるでお伽噺の様な光景に驚きを隠せない。
カッカッーーー
メキメキとしなる音と共に扉が開いた。そして、同時に強風が一行に直撃した。
風が落ち着き前方を見る前真っ暗で何も見えない。
「入るか」
足を踏み入れると手前側から光がつきだした。中には特にこれといった飾りはなく簡素な作りとなっている。
「迷宮ですか」
「そう。戦いに備えて迷宮の様に作れている。14年前まで使われていたがそれっきりだ。」
「先生が子供の時?」
真莉は悲嘆の顔を俺にやる。
「まぁ、そうなるか」
無理に喋らんでもいいんだぜ。
中に入っていくと一行の後ろから青光りが迫ってきた。さっき先生が触れた時のと同じだ。青い光は迷宮の縁に出ているパイプの様な突起に沿って流れていく。赤い炎と青い光に照らされる迷宮は何とも神秘的な様相のに移り変わった。
「き…れい」
小声で真莉が呟く。
「好きなのか」
先生は歩きつつ真莉を横目で見る。しかし、真莉は先程から弱りきった様子で手を体に当てて手を振らずに歩いていた。
「・・・うん」
こんな時、一心ならそう思わずにはいられない。
暫く迷宮を歩くと先生の足が突然止まった。
「うわ」
「痛、ごめんな・・ひっ」
真莉は怯えながら謝る。
(今日は色々ありすぎだよな)
先生が扉を開けるとそこにはちょっとした部屋があった。中には何やら色々な道具があった。
「武器庫?」
「まぁ、そんなとこだ。好きなものを持っていくと良い」
青光りで照らされた中で2人は装備などを装着していく。
「まぁ、こんなとこか」
選び終わった。俺は剣、真莉はちょっとした鎧に短剣。その後というもの2人とも暫く黙って休んでいた。なぜなら口に出さずともまた襲撃が来ることが分かっていたからだ。
「先生、一心の最後は」
「あ、あぁ、笑って寝てた。」
言葉に詰まり、放たれる言葉、それには深い意味がある。
「そ」
おちゃらけだけど、誰かを思えるそんな優しい一心が真莉の頭によぎる。
迷宮が少し揺れた。
「来たか。」
先生がそう云うと迷宮の外へ急ぎでる。
「気をつけろよ、真莉。俺から離れてくれるなよ。」
その時はやってきた。洞窟から出ると目を疑う光景がある。軍勢にしておよそ1000万もの大群が空中にいたのだ。
「総攻撃か。」
「他の人達はどうなったんでしょう。」
(2人にこの人数は可笑しい)
「恐らく、もう…、周囲を警戒しておきなさい」
(無理だよ、こんなの)
敵は攻撃をしている。レーザーやらなんやらで、でもここの防御壁は固くまだ攻撃には耐えている。
(あれは、さっき俺に出したアンデットだよな)
「まだ、大丈夫さ」
先生はまだ険しい顔をしていない。しかし、次第に防御壁にヒビが入り、ビームやらの攻撃が飛んできた。
「ひゃ」
その時だ、地底や壁から白い光のビームが飛び出してきた。そして、攻撃を撃ち落としていくではないか。
対攻撃撃墜のための術式魔法、エンデント。
夜空に幾多の攻撃のぶつかり合いが生じ、火花が辺り一面に飛び散る。
「そしてこれは無限の術式、攻撃物が迫った段階で発動する。」
夜空にぶつかり合う幾多の衝突を見ながら不安そうな真莉に一言をかける。
「大丈夫さ」
(ここで俺は是が非でも)
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