第110話 火山の火口
「おっ、ここまで戻ってきたか」
アステラル火山の山頂から朝日が昇るのを見て、キャンピングカーをしまってから歩いて元の登山ルートへと戻ってきた。
早朝にはカルラの案内で登山ルートを外れて別の場所で朝日を見てきたが、ようやくここまで戻ってきたわけだ。
「そんじゃあ次は火口の方か。火口の方は他のやつらと一緒のルートだけれどな」
「さっきの場所だけでも十分だ。本当に綺麗な景色だったよ」
カルラがアステラル火山を案内してくれると言ってくれた時はフェビリーの滝の時みたいにそこまで案内するものはないかと思っていたけれど、あの景色を見ることができただけでも昨日の食事代を払う価値は十分にあった。
「ええ、確かに素晴らしい景色でした。あの景色を私達だけで楽しめたのは本当に最高でしたね」
「カルラお姉ちゃん、とっても綺麗だったよ!」
「ホー♪ ホホー!」
「おう、そんなに気に入ってくれたんならよかったぜ!」
どうやら他のみんなもあの景色を気に入ってくれたようだ。
やはり現地で暮らしている人の案内は頼りになる。
「あっ、ここがさっき上から見えた場所だね!」
「確かにそうっぽいな。うん、ここからの景色も綺麗だけれど、やっぱりさっきの場所の方が高いし見晴らしも良くて綺麗だったね」
少し歩くと、先ほどの場所からも見えた、観光客が朝日を見る開けた場所へとやってきた。
コレットちゃんの言う通り、おそらくここはさっき朝日が昇るのを見た場所から見えた場所だ。ここには結構な人が集まっている。ここで食事をしている人たちも多いから、きっとここから朝日が昇るのを見て、今朝食をとっているのだろう。
「火口はここからもうちょっと登るぜ」
「ああ、了解だ」
どうやら火山の火口はもうちょっと登るらしい。山頂はもう少しだけ先だったようだ。
「ここが火山の火口か。やっぱり大きな火山だと噴火口も大きいんだな」
「おう。俺も詳しくは知らねえが、村のやつらがこの辺りじゃ一番でけえって言っていたぜ」
先程の場所からさらに30分ほど歩いたところで火口へと到着した。
やはり火口周辺ということもあって、かなりの観光客がいる。やはり翼と尻尾のある龍人のカルラが注目を浴びていたけれど、今までも散々フー太が注目を浴びていたから今更か。
「おお~かなり遠くだけれど、下の方には赤いマグマが見えるな」
アステラル火山の火口はかなり深いようで、その火口の奥には赤いマグマが流れているのが見える。
マグマが流れているということは現在も活動を続けている活火山のようだが、このアステラル火山はここ何十年も噴火はしていないようだ。元の世界の鹿児島にある桜島なんかは規模は小さいが年に何百回、平均すると一日2~3回も噴火しているらしいからな。
「シゲトお兄ちゃん、あっちの方は
「ホホー!」
「えっ!? ……本当だ、確かにうっすらとだけれど緑色に光っているね。すごいな、こんなのは初めて見た!」
「おっ、おまえら運がいいぞ。ああやって火口が緑に燃えているのは珍しいんだ。どうして緑に燃えているのかは分からねえんだけれどな」
コレットちゃんの指差す方向を見てみると、薄暗く深い火口の中に所々赤く光ったマグマとは別に緑色に光る一角があった。カルラが言うには火口が緑に燃えて見えるのは珍しいようだ。
……確か元の世界には青く燃える火山があったはずだ。インドネシアの火山などで見られる現象で、火口の中から硫黄のガスが噴出し、それが燃焼して青い炎が見えるんだったかな。
とはいえ、それは青い炎だし、危険な火山としても有名だったからこことは違うだろう。ここは異世界だし、もしかすると全然異なる理由で緑色に燃えているのかもしれない。
「はあ~それにしても綺麗だなあ」
「シゲト、村長から聞いた話では、火山からは真っ赤な液体が流れ出てきていると聞いたのですが、あのマグマというものがそうなのですか?」
「そうだね。マグマはマントルや岩石なんかが溶けてできたものなんだけれど、あまりにも高温になると赤く見えるんだよ」
マグマのように1000度を超える物体は熱を持つ分子や原子がその温度に依存した電磁波を放出する熱放射という現象によって、人の目には赤く見えるようになる。
熱した製鉄が赤く見えたり、溶接の炎が赤く見えるのも同じ現象によるものらしいな。そのため、マグマが冷えて固まった溶岩は黒っぽかったり、灰色をしていて赤色から元の色に見えるわけだ。
「マグマ、マントル……よく分からないですが、とてもすごいですね。これほど大きな山が自然にできたことも、山の中が燃えているというのも驚きです」
「確かに自然って不思議だよね」
ジーナに言われて改めて思うけれど、自然は本当に不思議なものが多い。地中深くのマグマは1000度を超える。そんなものが自然に発生して、しかも噴火して火山から吹き出すんだからな。
元の世界では科学によって噴火の仕組みなんかが解明しているけれど、こちらの世界の住民からしたら不思議で仕方がないだろう。あの緑色に光る炎も科学的に解明できるのかちょっと気になるところだ。
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