第109話 ホットサンドのアイスクリーム載せ
「よし、それじゃあ日が昇ってくるまでもう少し時間がありそうだし、朝食にしよう」
少し早めに出発したことと、道中は少し速いペースで来たため、まだ日が昇ってくるまでに少し時間がありそうだ。
日の出を見つつ、優雅な朝食をとるとしよう。
「それじゃあ一瞬だけキャンピングカーを召喚してっと……」
向こうの観光客からこちらも見えるかもしれないが、まだ薄暗いし向こうからもこちらはよく見えないだろう。
「おおっ、あのアイスクリームってやつか!」
「それもあるけれど、せっかくだからもっといいやつだよ。あっ、日が昇りそうになったら教えてくれよ」
みんなには俺が調理をしている間にキャンピングカーの外でテーブルとイスを組み立ててもらう。もちろん俺がキャンピングカーの中で調理をしている間に日が昇ってしまったら困るので、その場合はすぐに教えてもらわないとな。
「はい、おまたせ。トーストとホットサンドのアイスクリーム載せだよ」
「シゲト、なんですか、このおいしそうな料理は!」
「うわあ~おいしそう!」
「ホ~♪」
キャンピングカーを収納し、完成した朝食と飲み物をテーブルへと運ぶ。
ホットサンドを知っているみんなはその上にアイスクリームが載っていることに驚いており、カルラは焼いたパンにアイスクリームが載っていることがどういうことかわかっていないようだ。
作り方も何もないが、トーストしたパンとホットサンドの上に昨日キャンピングカーで仕込んで冷凍庫に入れておいたアイスクリームを載せただけのものだ。
「うおっ、なんじゃこりゃ!? 温かいパンと冷たいアイスクリームが合わさって最高にうめえじゃねえか! それにこっちの方はパンの中に温かくて甘い果物まで入っているぜ!」
「ええ、温かいジャムとザクザクとしたパン、それに冷たくて甘い乳の味のするアイスクリームが本当に良く合いますね! ジャムとアイスクリームの甘さがお互いを引き立てております!」
「うわあ~温かいのと冷たいのが不思議な味だね! 今までのホットサンドの中で一番おいしい!」
「ホー♪ ホホ~!」
おう、思ったよりもみんなの反応が凄いな。やっぱりこっちの世界の住人は甘いものが大好きなようだ。
トーストのアイスクリーム載せもおいしいが、やはり果物のジャムを入れたホットサンドのアイスクリーム載せの方がうまいか。この冷たさと温かさが合わさりつつ、ジャムとアイスクリームの甘さが絡み合うと、口の中が本当に幸せになるな。
黒くて少し硬いパンも焼けばザックリとしてうまいし、確かにコレットちゃんの言う通り、今までのホットサンドの中で一番おいしいかもしれない。
「あの、シゲト。こっちのジャムのホットサンドにアイスクリームを載せた方をお代わりしてもいいですか?」
「シゲトお兄ちゃん、僕もこっちをお代わりしたいです」
「ホー! ホー!」
「お、俺も頼む!」
どうやらみんなお代わりがほしいようだ。今までもいろんな料理を作ってきたけれど、ここまで反応がいい料理は初めてかもしれないな。
う~ん、やっぱりこちらの世界にはなさそうな甘いものと冷たいものを合わせた組み合わせは最強なのかもしれない。
それとまだ日が昇っていないのにもうこんなに暑いから、冷たいアイスクリームがよりおいしく感じるのだろう。
「了解。だけどみんなあと1個ずつだよ。冷たいアイスクリームはいっぺんにたくさん食べるとお腹を壊しちゃうからね。それにもうそろそろ日の出の時間だ」
「地平線が赤くなってきた。もうそろそろ日が昇りそうだな」
「ホー!」
みんなで朝食を食べたあと少しすると、アステラル火山の山頂から見える地平線がほんのりと赤く光ってくる。
「うわあ~すっごく綺麗だね!」
「……ええ、とても幻想的な光景ですね。遥か先から美しい暁色の日がゆっくりと昇ってくる景色がこれほど綺麗とは。あちらの湖は私たちが通ってきたマイセン湖でしょう。そうなるとハーキム村はあちらの方角かもしれません」
「ホー♪」
「うん、本当に綺麗だね。標高が高いから、白い雲海が広がっていて、隙間から見える緑色の自然と青い空の間に暁色の日の光が合わさって本当に美しいよ」
この場所はかなり標高が高く、日が昇ってくる方向には山もない。もちろん元の世界のように高層ビルなんかもないので、日が昇るこの光景を遮るものは何もない。
そしてこのアステラル火山の山頂から見下ろした先には普段空にある雲が広がっている。どうやらこの火山の標高はかなり高いようだ。一面すべてが雲海でも綺麗だと思うけれど、今くらいの所々に草原や森、湖の見える方が美しいのかもしれない。
「カルラ、この場所を教えてくれてありがとうね」
「おう、いいってことよ!」
これだけの素晴らしい光景を俺たちだけで見ることができたのはカルラの案内のおかげだ。
きっとこの光景は俺だけでなく、フェビリーの滝と同じようにみんなの心に刻まれたことだろう。
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