第105話 最後まで
【お知らせ】
いつも拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
8/20に発売されました別作品の『アウトドアショップin異世界店 冒険者の始まりの街でオープン!』の続刊が決定しました!
しかも3巻まで決まったようです。これも皆様の応援のおかげです!
詳細はこちらをご覧くださいm(_ _)m
https://kakuyomu.jp/users/iwasetaku0613/news/16818093085199586251
――――――――――――――――――――
「うおおお、うめえ! こんなにうめえ食い物は久しぶりに食ったぜ!」
キャンピングカーを攻撃してきたが、悪いやつではなさそうだったので、先ほど作ってアイテムボックス機能に収納していたアツアツの天ぷらをドラゴン娘に食べさせてやっている。
対価は持っていないらしいけれど、空腹は本当に辛いものだからな。これでこの子が餓死でもしたら目覚めが悪いし、これもジーナやエリナちゃん、コレットちゃんを助けた時と同じで、俺が明日からもうまい飯を食うためである。
さすがに敵意はなさそうに見えるけれど、初めて出会った人をキャンピングカーの中に入れる気はないので、外にテーブルと椅子を出してあげた。
「見ていて気持ちの良い食いっぷりだな。それだけおいしそうに食べてくれると、こちらも作った甲斐があるぞ」
「初めて見る料理だけどうめえな! おっさんは料理がうまいんだな!」
「ちょっと遠い国の料理だけど、気に入ってくれたならよかったよ」
どうやらこのドラゴン娘は天ぷらを気に入ってくれたらしい。これまでの村や街でも天ぷらや揚げ物料理なんかは見かけなかったから、もしかしたらこの付近には揚げ物料理なんかがないのかもしれないな。
おっさん呼びされたけれど、この子みたいにあっさりした性格の子だったらあんまり気にならない。だけどもしもコレットちゃんにおっさん呼びされたらショックでしばらく動けなそうである……
「いやあ、本当にうまかったぜ! ご馳走さん」
「だいぶお腹が減っていたんだな」
結局このドラゴン娘は俺たちと同じくらいの量の天ぷらを食べた。俺やジーナよりも背が低いのによくあれだけの量のご飯を食べられたものだよ。
どうやらジーナが空腹で倒れた時とは違って、空腹で動けなくなる寸前という訳ではなかったようだ。
「ああ。この辺りは人が少なくていいんだけれど、食料になる魔物も少ねえんだよな。運悪くここ数日は獲物を狩れなかったんだ。俺はカルラ、こんなにうまい飯をご馳走してくれてサンキューな。あとさっきはいきなり魔物だと思って攻撃して悪かった」
この娘はカルラというらしい。ちゃんとお礼も言いつつ頭を下げて謝罪もしているし、悪い娘ではないようだ。
「俺はシゲトだ」
「私はジーナです」
「ぼ、僕はコレットです」
「ホー!」
「こっちはフー太だ。いろいろとあって今はみんなで旅をしているんだ」
テーブルの向かいに俺とコレットちゃんが座っていて、フー太は定位置の俺の肩にとまっている。まだ椅子もあってカルラの隣が空いているけれど、ジーナはまだカルラを警戒しているようで、座らずに俺の横に立っている。
確かに車体強化機能のあるキャンピングカーの硬い天井を凹ませたし、少なくともディアク並みの攻撃力があるはずだ。
天ぷらを揚げている最中に攻撃されなかったのは不幸中の幸いだったな。油をひっくり返されて火事になったら危ないところだった。
「まあ、ここまで来たら最後までか。ちょっと待っていてくれ」
「うん? まだ何か食わせてくれるのか?」
さっきカルラはお金を持っていないと言っていた。対価はなさそうだけれど、さすがにこの状況でカルラにだけあげないというのはな。というか俺が罪悪感に押し潰されそうになる。
それに日本には情けは人の為ならずということわざもある。人に情けを掛けておくと、巡り巡っていずれは自分の為になるという意味だ。まあ、異世界に通用するのかは分からないけれどな。
「みんなもまだだったな。うん、ちゃんとうまく固まったみたいだ。これは俺の故郷の氷菓子のアイスクリームだよ」
5つの器に盛った白いアイスクリーム。やはり暑い日と言えばこれだろう。
キャンピングカーの外は少し暑いから、間違いなくこのアイスクリームはうまいに違いない。
「ええっ、なにこれ!? 冷たくて甘いよ!」
「っ!? これは素晴らしいです! 冷たくて舌の上で優しく溶けていきますね! このようなお菓子は初めて食べました」
「ホホー! ホー!!」
うん、どうやらみんなにも好評のようだ。うん、バニラビーンズがなくても十分にアイスクリームの味だ。ホワイトブルの乳はバターも作れたし、やはり脂肪分の多い乳なのだろう。
さすがにこの世界ではアイスクリームなんてないだろうからな。いや、氷魔法もある世界だし、シャーベットとかはあるかもしれない。
フー太のくちばしの周りに付いた白いクリームもご愛敬といったところだろう。フー太は肉や魚、乳製品となんでも食べられそうだな。両方の翼を大きく開いて全身でおいしいと伝えている。どうやらフー太はアイスクリームをかなり気に入ってくれたらしい。
「うわっ、なんじゃこりゃ! こんなに甘くてうまいものは初めて食ったぞ!」
カルラもとても驚いた様子でアイスクリームを口へと運んでいく。
しかし、この娘も目を輝かせておいしそうに食べるものだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます