第96話 夜中の襲撃


「……よし、今日はこの辺りにしよう」


 朝にヘーリさんと別れて、今日はキャンピングカーに乗ってアステラル火山へ向けて進んできた。昨日は途中で釣りを楽しんでいた分、今日はしっかりと進んだため、このままいけば明日にはアステラル火山の麓にあるアステラルの村へと到着できるだろう。


「ついにマイセン湖は見えなくなってしまいましたね」


「とっても大きくてすごく綺麗だったよね。あと夕陽が沈んでいくところはすごかったなあ……」


「ホー!」


 今日の夕方、ついさっきのことだが、夕陽がマイセン湖へと沈んでいくところをキャンピングカーの外に出てみんなで眺めていた。広大な湖の湖面に沈んでいく夕陽はとても美しい景色だったな。


 これまではずっとマイセン湖の周囲を進んできたわけだが、ここからは少し外れてアステラル火山へと進んで行く。今日はカーナビで事前に確認していたマイセン湖から少し離れた川のあるここで野営をする。


「もう少し暖かくなったら湖で泳げるようになるらしいし、また来られるといいね」


 今はまだ肌寒くて難しいが、もう少し暖かくなれば海水浴ならぬ湖水浴ができるらしいし、またぜひとも訪れたいところだ。ちなみにこの異世界にも水着のような泳ぐための服が売っていた。


 うん、異世界での海水浴場がどうなっているのかはぜひ見てみたいものである。


 さて、晩ご飯を食べて、いつも通り早く寝て明日に備えるとしよう。




「……シゲトお兄ちゃん」


「うう~ん……」


 何やら身体をゆすられる感覚がして意識が覚醒する。


「うわっ、コレットちゃ――っ!?」


「しーっ!」


 目を開けるとそこにはコレットちゃんの可愛らしい顔が間近にあって、思わず大声が出てしまいそうなところで、コレットちゃんの小さな両手で口をふさがれた。


 夜中に何を? と思ったが、コレットちゃんが真剣な顔をしているので、ようやく現状を把握した。さっきの衝撃によって一気に意識が覚醒したということもあるけれど。


「……外にいるのは魔物?」


「うん、4足歩行だから魔物だよ。多分3体くらいいると思う。今ジーナお姉ちゃんが警戒している」


 コレットちゃんの黒いオオカミの耳がピコピコと動いている。その仕草はとても可愛らしいのだが、今はそんなことを言っている場合ではないようだ。コレットちゃんの聴覚では夜に寝ている時でも魔物が近付いて来れば分かるというのは本当のことだったらしい。


 夜にそこそこ大きな魔物がこのキャンピングカーに近付いてきたら、念のために俺やみんなを起こしてと伝えていた。ジーナの方を見ると、すでにキャンピングカーの出入り口に剣を持って、いつでも外に出て攻撃できる状態のようだ。


「ホー!」


 フー太の方もすでに起きていて、こっちとは反対側の窓から少しカーテンをめくって外の様子を見ている。


「……駄目だ。俺には何も見えない。フー太は見えるのか?」


「ホー!」


 そう言いながらフー太は両方の翼と片足を上げて謎の可愛らしいポーズをとる。


「3……3体の魔物ってことか?」


「ホー!」


 今の片足立ちの可愛らしいポーズは外に3体の魔物がいるという合図だったらしい。どうやらフー太にはこの真っ暗な中でも外の景色が見られるようだ。


 そういえばフクロウって夜目が効くんだったか。そしてコレットちゃんの耳もすごいな。


「了解だ。作戦通り、このキャンピングカーにさらに近付くようなら、撃退するよ」


「うん!」


「了解です!」


「ホー!」


 夜に魔物や盗賊が近付いてきたらどうするのかはすでにみんなと話し合っている。このままキャンピングカーから離れていけば放置しておくが、これ以上キャンピングカーに害意を持って近付いてくるなら撃退する。


 カランカランッ


「くそっ、近付いてきたか!」


 キャンピングカーの外から、キャンピングカーの周囲から数メートル離して設置してあった鳴子の音が鳴る。逆に言うと、この鳴子の範囲外にいる魔物に気付けるのだから、コレットちゃんの聴覚は本当にすごい。


 まず俺はキャンピングカーのエンジンを掛ける。どちらにせよ鳴子が鳴って、すでに敵には気付かれている。敵がなんであれ、何かあれば即座にキャンピングカーで逃げられるようにしておく。そのため毎日キャンピングカーを停めている場所はキャンピングカーが急発進できる場所にしてある。


「シゲト、外に出ます!」


「ああ、くれぐれも気を付けて。それと深追いはしなくていいからね!」


 キャンピングカーの入り口にロングソードを持ったジーナが出る。


 外ではまだ鳴子の音が鳴り響いているから、3体の魔物は音が出る鳴子を攻撃しているようだ。夜行性の魔物なら鳴子も見えていそうだが、ああいった仕掛けは見たことがないのだろう。


 俺はここからはジーナの援護だ、いくぞ!



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