第90話 揚げ物料理
「……よし、できた!」
せっかくなので、キャンピングカーを収納してマイセン湖沿いの道へと歩いて移動し、テーブルや椅子を広げつつ昼食を作った。やはりご飯を食べるなら、この大きな湖を見ながらまったりと料理をするのも良いものである。
「うわあ~とってもいい匂いだね!」
「ええ。ですが、これは魚料理なのですか?」
「ホー?」
「まあ、身は見えなくなっちゃっているね。これはフライと言って、衣を付けた魚の身を熱した油に浸す料理なんだよ」
今日の昼ご飯は様々な魚のフライだ。複数の種類の魚の切り身に小麦粉を付け、溶き卵をからめてパン粉をまぶして油で揚げた料理となる。
もちろん元の世界ではそれほど難しくない料理だが、異世界で作るのは食材を集めるという面でなかなか大変だった。小麦粉はマイセンの街で普通に売っていたから良かったが、卵は新鮮な物を市場で探し回った。
やはり湖のほとりにある街ということで漁業が盛んで、牛や鶏を育てているところが少なく、新鮮な卵が全然売っていなかったからな。そして揚げ物という文化もないようでパン粉が売っていなかったから、街で硬めのパンを購入してわざわざ削ってパン粉を作ったのだ。
食用油の方はキャンピングカーに積んであった油を使用している。油が調味料補給機能により補給できるのはすでに確認済みだ。なんだかんだで油は結構使うものだからとても助かる。
俺が料理をしている間、みんなには別の作業を手分けをしてもらっていたから、みんなはまだフライをどうやって作っていたか見ていない。まあ、詳しい説明は後ででいいな。フライや揚げ物は揚げたてが命だし、早速食べてみるといしよう!
「うわあ~お魚さんなのに表面がサクサクしているね! 中から柔らかくてふっくらとしたお魚さんの味がする!」
「焼いた魚や茹でた魚とは異なった味ですね! なるほど、この外側の衣というものが中に包まれている魚の旨みをすべて閉じ込めているという訳ですか。シゲト、これはおいしいです!」
「ホー! ホーホー♪」
どうやらフライは好評のようだな。
確かにマイセンの街の魚料理や貝料理はとてもおいしかったのだが、基本的には焼くのと煮るが中心となる。元の世界にはそれ以外の様々な調理法があるので、せっかくなら別の料理方法もいろいろと試してみたいところだ。
「シゲト、醤油をもらってもいいですか?」
「ああ。だけどこっちのフライにはもっと合う調味料があるから、こっちも試してみてよ」
マイセンの街では醤油が大活躍していたから、ジーナがフライに醤油を掛けようとする気持ちもよく分かる。もちろんフライに醤油もうまいのだが、やはりフライにはこいつである。
「なんだか真っ黒でドロッとしているね……」
「ホー……」
「見た目はちょっと悪いかもしれないけれど、この
コレットちゃんとフー太がソースを見て首を傾げている気持ちも分からなくはない。確かにソースを初めて見たら、ドロッとした怪しい黒色の液体にしか見えないかもしれない。
「……っ!? 酸味もあって、甘くもあり複雑で濃厚な味がこちらのフライという料理にとてもよく合いますね!」
「すごい、たくさんの野菜や果物の味がするね!」
「ホー!」
だが、やはりフライにはソースである!
フライのサクサクとした衣に濃厚なソースの味が絡んでとてもおいしい。ソースを掛け過ぎると、ソースの味しかしないと突っ込まれるかもしれないが、たっぷりのソースをだぼだぼ掛けて食べるのこれもまた良きものである。
そしてもちろん異論は認めるぞ。タルタルソースにシンプルな塩、この前作ったばかりのさっぱりとしたおろしソースもいいし、一味唐辛子を掛けてピリリと味を引き締めても良いかもしれない。
「うん、こっちのオイオマスのフライもいけるし、ミハイヨアジのフライもうまいな。いろんな味もあるし、いろいろと試してみてよ」
「はい! 本当にどの魚もとてもおいしいですね。今度はこちらのおろしソースを使っていただいてみます」
「うわっ、こっちの赤いのはちょっと辛いね!」
「ホーホー♪」
タルタルソースはないのだが、塩や醤油、おろしソースや一味唐辛子なんかはある。色々と味変をしながらたくさんのフライを楽しむとしよう。
タルタルソースの元となるマヨネーズを作るのが少し怖いというのがあるんだよな。街で新鮮な卵と言って売っていたが、どこまで新鮮か分からないのが怖い。今度ハーキム村で新鮮な鶏の卵を頂いた時にマヨネーズを作ってみてもいいかもしれないな。
みんなで新しい味を楽しみながら、お昼ご飯を楽しむことができた。
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