第89話 次の目的地を目指して


「よし、これで必要な物はだいたい買えたかな」


「たくさん買いましたね」


「お魚さんもいっぱい買えたね!」


「ホー!」


 今回の買い物は特に誰かに襲われることなく無事に完了した。まあ、いくら治安の良くない異世界とはいえ、ロッテルガの街のように毎回襲われてはたまったものじゃないからな。


 最初は魚や貝などを持てる限り購入して、それを持って一度街から出て離れたところでキャンピングカーを出し、収納機能によって購入してきた魚や貝を収納した。


 そしてもう一度街に戻って野菜や小麦や炭などといった様々な物を購入してきた。だいぶ手間だったが、新鮮な魚や貝を購入できる機会は限られているから、目一杯購入しておいたぞ!


「名残惜しいけれど、明日はこの街を出るからね。今日の夜も最後まで楽しもう!」


「はい!」


「うん!」


「ホー!」


 しばらく滞在したこのマイセンの街とも明日でお別れだ。最後の夜もたっぷりと楽しもう。


 ……まあ、キャンピングカーがあればすぐに戻ってこれるんだけれどね。また、魚介類を仕入れる時にはこの街を訪れるとしよう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「さて、次の目的地はアステラル火山だ。このキャンピングカーならマイセン湖をさらに北上して3~4日といったところだろうな」


「火山という場所は初めて知りました。なんでも山の中にある深い谷から火が出る場所らしいですね……」


「ええっ!? 山から火が出てくるの? こ、怖くない?」


「ホー……」


 どうやらみんなは火山というものを知らないようだ。確かに山の中から火が出るというのも、火山を知らない異世界のみんなにとってはなじみがないだろうな。


「アステラル火山は観光地にもなっているから大丈夫だよ。山の上から火口が見られる場所らしい。もちろん火山性のガスは気を付けなくちゃいけないけれどね」


「かざんせいのがす?」


「キャンピングカーの中で説明をするよ、コレットちゃん」


 昨日の夜はマイセンの街での料理を楽しみ、今日の朝マイセンの街を出発して、街から離れた場所へと移動する。ここからはいつも通りキャンピングカーで移動する。


 マイセン湖の周囲は大勢の人たちが行き来するため、地面が踏み固められて立派な道となっている。とはいえ、マイセンの街付近の道はかなり人が多いので、道から少しだけ外れた場所を走るつもりだ。


 一日くらいキャンピングカーで走れば、人も少なくなってくると聞いているので、そこからはマイセン湖の湖沿いの道を走ってもいいかもな。




「さすがにアステラル火山の火口付近に村はないみたいだけれど、火山のふもとには村があるみたいだね。そこから火山まで登って、往復で一日がかりといったところかな」


「なるほど、宿の人が教えてくれた場所ですね」


「宿の人はその辺りに詳しいよね。もしかしたら、お互いの近くの観光地同士でおすすめしあったりしているのかもしれないかな」


 基本的に情報収集は街の市場や食堂、宿なんかで行っている。何かを買ったり食べたり泊まったりすると、どの店や宿の人たちも快く教えてくれるからとても助かっている。


 やはりこういった情報は現地の近くに住んでいる人へ聞くのが一番早いし、良い情報が手に入る。まあ、だいたい最後に自分の店の商品やサービスを追加でおすすめしてくるのはご愛敬と言ったところだろう。


 お客さん側である俺たちもとても良い情報をもらったら、チップ代わりに追加で店の商品を買ったりするもんな。旅をしながら現地の人たちと交流するのも中々面白いものだ。


「ちょっと怖いけれど、楽しみだね!」


「ホー!」


 まだキャンピングカーの運転に慣れていないのか、後ろの座席ではコレットちゃんがしっかりとシートベルトを締めながら、両手でシートベルトをがっしりと握っている。


 湖沿いはそこまで大きな木々は生えていないが、やはり道がそれほど良くはないから振動は大きいものな。


 フー太は助手席に座っているジーナの上に抱きかかえられている状態だ。相変わらずちょっとだけ羨ましい……





「よし、それじゃあ昼休憩にしよう」


 午前中はキャンピングカーでどんどんと進んで行き、50kmくらいは進めた。もちろんもっと速く走ることもできるのだが、道も良くないし、ここは異世界で何が飛び出してくるか分かったものじゃないからな。


 急ぐ旅でもないし、ゆっくりと安全運転で進んで行くつもりである。とはいえ、ジーナのいるハーキム村を出てからもう10日が過ぎた。もう10日が過ぎて、残り10日くらいになったら帰り道のことについても考えないといけない。


 さて、それはさておき、お昼は何にしようかな。マイセンの街でたくさんの食材を買い込んだから、何を作るか迷うところだぜ!

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