第81話 素材の売却
「おお~ここがマイセンの街か!」
マイセン湖のほとりにある街はそのままの名前でマイセンの街というらしい。ロッテルガの街ほど高くて強固な城壁はなかったが、大きさとしては同じくらい大きな街だった。
ちなみに街への入場税はひとり銀貨1枚と他の街よりも少し安い。もしかすると、観光地でお金を落としてほしいから街への入場税は少し安くしているのかもしれないな。
「すご~い! 僕、こんなに大きな街に来たのは初めてだよ!」
コレットちゃんはマイセンの街の街並みにとても驚いているようだ。確かコレットちゃんはお父さんと一緒にいくつかの村や街を巡ってきたはずだけれど、ここまで大きな街を訪れたことはないらしい。
「ロッテルガの街とはだいぶ様子が異なりますね」
「ホ~!」
「そうだね。街並みや住民の服装なんかも微妙に違うみたいだ」
ジーナの言う通り、マイセンの街並みはロッテルガのそれとはだいぶ異なっていた。やはり湖のほとりの街だと湖の湿気を含んだ風が吹くから、家の材質なんかも変わるのかもしれない。
そして相変わらずウッズフクロウのフー太は門番の人たちに驚かれていた。だけど、ハーキム村やフェビリー村の住人ほどまで敬われたわけではなかったし、コレットちゃんもフェビリー村の住人ほど忌避されていたわけではなかった。
やっぱり地域や村や街によってその辺りは大きく異なるようだ。コレットちゃんとお父さんはだいぶ運というか、巡りあわせが良くなかったのかもしれない。
「それじゃあ、まずは解体した素材を冒険者ギルドへ売りに行こう」
早速この街の市場へ行って湖の恵みを楽しみたいところだけれど、その前にまずはワイルドディアとダナマベアの解体した素材を冒険者ギルドへ持っていって換金をする。
街中ではキャンピングカーの収納機能が使えないから、ワイルドディアとダナマベアの素材を3人で手分けして持ちながらここまでやってきたから、さっさと売却して身軽になりたいところだ。毛皮や牙や爪など、とりあえず今回は軽くて高く売れそうなものだけにして、肉や骨なんかはキャンピングカーへ収納したままにしてある。
この世界には冒険者という職業があるらしい。元の世界にあったファンタジーの話で出てきたのと同じように魔物の討伐依頼を受けたり、素材の採取から護衛や危険のない店の店員などといった様々な依頼を受ける何でも屋みたいな職業のようだな。
冒険者ギルドでは魔物の素材の買い取りを行っている。冒険者登録をしていないと多少割安になってしまうらしいけれど、冒険者登録をするためには戦闘の試験があるらしいし、仮に冒険者になれたとしたら、一定期間の間に依頼を受ける義務が発生するらしい。
異世界へ来たら冒険者になりたいと言う人も多いかもしれないけれど、俺の場合は命の危険がある冒険者にはまったく興味がないからな。このままキャンピングカーで異世界の様々な街を旅するとしよう。
「……思ったよりもいい金額になったね。これで当分の間は食料だけじゃなくてお金の心配もいらなそうだよ」
冒険者ギルドで絡まれるというイベントは特に発生せず、ワイルドディアとダナマベアの素材を無事に売却することができた。
たぶん冒険者ではなく依頼をする側に見えたのかもしれない。まあ、俺たちの格好だとジーナくらいしか冒険者には見えないもんな。
「はい。まさかダナマベアの素材が金貨15枚で売れるとは思ってもいませんでした。肉や他の素材を入れれば、ダナマベア一頭で例の特効薬が買えますよ!」
「………………」
とりあえずダナマベアの素材が金貨15枚、ワイルドディアの素材が金貨3枚で売れた。ジーナの言う通り、オドリオの街で売っていたドルダ病の特効薬が金貨20枚だったから、肉やまだ残っている素材なんかを入れれば十分に買える金額だろう。
……だけど、逆を言えばあんなに苦労してダナマベアを仕留めて、解体作業をおこなってそれだけしか手に入らないんだよな。ジーナの話だと村の狩人5~6人がかりでリスクを負いながら狩って、ようやく一人当たり金貨4~5枚分になる計算だ。
やはり狩りは割に合わないな。1日に1回補充できるコショウを売る方が全然安全にお金を手に入れることができる。とはいえ、みんな狩りには乗り気なようだし、絶対に無理をしないように必要最低限でおこなうことにしよう。
「シゲトお兄ちゃん、僕もこんなにもらっていいの?」
「ああ。これはみんなで頑張って手に入れたお金だからね。コレットちゃんの好きなように使うといいよ」
今回得た金貨18枚はみんなで山分けすることにしようとしたのだが、ジーナとコレットちゃんに反対された。この街の入場税とか普段のキャンピングカーの生活費なんかは俺が払っているからという理由だ。
俺的にはコショウは無料で手に入れているようなものだから、あまり気にしないでも良かったのにな。
いろいろと相談した結果、金貨10枚を宿代や食費などみんなで共有して使うお金としておき、残りの金貨8枚を4人で分けて金貨2枚ずつを個人で自由に使えるお金とすることにした。
金貨2枚でもコレットちゃんにとっては自由に使える初めてのお金でとても喜んでいた。まあ、お金の問題はいろいろとあるから、また必要があれば話し合うとしよう。
「さて、それじゃあまずはお昼ご飯にしよう」
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