第80話 街への移動
「おお、ちゃんと補充されているな」
昨日の夜に久しぶりにキャンピングカーの拡張機能のポイントを使用した。使ったのはもちろんスプレー補充機能で、予想通り昨日使い切って軽くなったクマ撃退スプレーが補充されていた。
やはり狩りをしても思ったが、この世界では元の世界よりも危険が多い。今回の森の中のように木々が邪魔でキャンピングカーを出すことができない状況も多々あるだろう。いざという時のためにクマ撃退スプレーはあった方がいいだろう。
それにしても、このクマ撃退スプレーを買って捨てずに本当に良かったよ。あの時の俺を褒めてやりたいところだ。なんだかんだで、一度購入したキャンプギアなんかは捨てられないものなんだよな。まあ、使わない物として段ボールに突っ込んでおいて忘れていたんだけれどね。
「よし、こっちの排水タンクも問題なさそうだ」
そしてスプレー補充機能と一緒に自動排水機能も合わせて拡張した。自動排水機能はその名の通り、自動でキャンピングカーの排水をしてくれる機能だ。
キャンピングカーは台所とシャワーで使用された排水を貯蔵するグレータンクとトイレで使用された排水を貯蔵するブラックタンクに分かれている。さすがにそれを自分たちでいちいち処理するのも面倒だから、排水を自動で行ってくれるのはとても助かるな。
コレットちゃんという乗員が増えたこともあって、排水をする機会も増えるだろうから、貴重なポイントを使用してでもこの機能は取っておきたかった。特にブラックタンクの方はこの世界に来てからまだ一度も処理をしていなかったけれど、そろそろ限界だったからな。
どちらも1Pだったので、合計2ポイントを使用して、今日の朝に貯まった分も入れて残りは2Pだ。2日に1P、自動的に貯まるのはとてもありがたいけれど、まだまだほしい機能はいっぱいあるんだよなあ……
「よし、それじゃあ朝食を食べて、今日は歩いてマイセン湖にある街へ向かうから頑張ろう!」
「ええ、楽しみですね」
「うん、頑張るよ!」
「ホー!」
ここからマイセン湖のほとりにある街まであと数キロメートルは荷物を持ったまま歩いていくことになる。というか、ジーナは体力があるし、コレットちゃんはまだ幼いけれど黒狼族ということで普通の人よりも体力があるから、一番バテてしまいそうなのは俺なんだよね……
しかも狩りでの疲れも全快していなくて、少し筋肉痛が残っている。とはいえ、俺も男としてみんなには格好悪いところは見せられないから頑張るとしよう。
「おお~あれがマイセン湖か!」
「すごいですね! あれほど大きな水溜まりは初めて見ました!」
「うわあ~とっても大きいね!」
「ホーホー!」
昨日泊まった場所から約1時間ほど歩いた少し丘の上。ようやくマイセン湖が見えてきた。
まだ少し距離があるというのに、ここからでもとても大きな湖が見える。あまりにも大きすぎて、湖の奥の方は地平線の彼方まで広がっていてその先は見えない。
俺も元の世界を含めて、こんなに大きな湖を見たのは初めてだ。ちなみに元の世界で一番大きな湖はカスピ海だったな。海とあるが、実際には陸地に阻まれているため、地理的には湖になるらしい。
しかし、領海的な意味では海と捉えられることもあるので、湖か海かは微妙なようだ。大きさだけでなく、その最大深度も1キロメートルと相当深いらしいな。さすがにカーナビで見たところ、そこまで大きくはなかったけれど、もしかしたら日本最大の琵琶湖くらいありそうな大きさの湖だった。
「街の方も見えてきたね。あともう少しだな」
この道を進んだ先に街も見えてきた。やっぱり街というだけあって、ハーキム村やフェビリー村よりも大きいようだ。ロッテルガの街と同じくらい大きな規模かもしれない。
「ええ、あと少しです。それにしても、あれほど巨大な水溜まりが湖なのですね。海というものとどう違うのでしょう?」
「陸地で区切られていると湖になるんだよ。水溜まりとの違いは川に繋がっているかと、水深がある程度深いんだっけな」
元の世界の知識だけど、水溜まりと湖と海の違いはそんな感じだったかな。もちろんここは異世界だから、そんな常識とは違うのかもしれないけれど。
「海ってなあに?」
どうやらジーナは海を知っていたようだが、コレットちゃんは海というものを知らないらしい。確かに村や地域によってはそのあたりの知識に差がありそうだな。
「海とはこの湖よりも大きな水溜まりのことをいうのですよ。私も実際に見たことはないのですが、村長から教えてもらいました。それに海の水は舐めるとしょっぱいらしいです」
「あれよりも大きいんだ! ジーナお姉ちゃんは物知りだね!」
「いえ、それほどでもありませんよ!」
コレットちゃんに褒められて、ジーナはとても嬉しそうだ。
実際にはもう少しいろいろな定義とかもあるんだけれどね。しょっぱい湖もあるらしいし。まあ、そんな細かいところはどうでもいい。
あともう少し頑張れば、湖のおいしい料理が待っているぜ!
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