第76話 ベーコン作り
お次はベーコンを作るための準備だ。
生の肉を料理するのもいいけれど、ベーコンを作っておくと、朝食とかにも使えて便利だからな。焼いた肉とは違う味で食卓にもバリエーションが増える。
「ベーコンですか。それはなんとも贅沢ですね!」
「すごい。とってもおいしいけれど、高価なご馳走なんだよね!」
「ホー!」
どうやらこの世界にもベーコンは存在するらしいが、高価な料理らしい。そういえば塩やコショウなんかの調味料や香辛料が高い世界だったから、それを使うベーコンが高価になってしまってもしょうがないのかもしれない。
「塩やコショウや調味料なんかは十分にあるからな。とはいえ、俺もワイルドディアとダナマベアの肉で作るのは初めてだから、いろいろと試しながら作っていこう」
元の世界では自家製ベーコンを作ったことがあるけれど、こちらの世界に来てから作るのはもちろん初めてだ。肉も2種類あることだし、いろいろと試してみるとしよう。
「と言っても、今日はまず肉に下味をつけていくだけだから、実際に食べられるのはしばらく先になるね」
ベーコンを作る工程は塩漬け、塩抜き、乾燥、燻製となり、期間は1週間以上掛かる。
「まずは肉をフォークで刺して穴をあけて、調味料が肉の中心にまでしっかりと染み込むようにするよ」
使用する肉はワイルドディアとダナマベアのバラ肉の部分だ。バラの部分は赤身と脂身が綺麗な層になっているのと、濃厚な脂身が食べ応えのある味なのでベーコンにするのに向いている。
もちろん他の部位でもできるし、この魔物のバラ肉がベーコンに適しているかも定かではないけれど、とりあえずますは試してみよう。
「よし、それくらいでいいかな。次は塩を擦り込んでいくのと、肉を漬けるためのソミュール液を作るよ」
「そみゅーる液?」
コレットちゃんが首を傾げながら、とても可愛らしい様子で聞いてくる。うん、さすがにソミュール液なんて知っているわけがないよな。元の世界でも知っている人はそこまでいないだろうし。
「ソミュール液は味をつけるのと同時に食材から水分を排出するんだ」
ソミュール液とは別名ビックル液とも言い、煮立たせたお湯に塩や調味料や香辛料を加えた液体だ。このできた液体に肉を入れて冷蔵庫の中で数日間漬けてから燻製することによってベーコンが完成する。
それだけではなく、肉を柔らかくする調理技法としても使われていたりするらしいな。
塩漬けもソミュール液につけるのも、肉の生臭さを取り除き、水分を排出して味を付けることが目的だ。本来はどちらかをすればいいのだが、どっちの方がおいしいかを確認するためにも、ワイルドディアとダナマベア、塩漬けとソミュール液の合計4種類の組み合わせて試してみることにした。
「わわっ、こんなに塩を使うんだね」
「だいたい肉の5パーセントくらいの割合の塩を擦り込んでいく感じかな」
まずは塩漬け肉だ。先程フォークで何度も刺した肉に塩とアウトドアスパイスを擦り込んでいく。本当はローリエやローズマリー、コリアンダー、ナツメグなんかのハーブやスパイスなんかも加えられるといいんだけれど、さすがにそこまではないからアウトドアスパイスで代用した。
アウトドアスパイスには様々な香辛料も含まれているから、こういうことにも使えるのである。
ソミュール液の方は沸かしたお湯に塩、砂糖、醤油、ハーキム村でもらったネギを刻んだものを加えた。今度街へ行った時にはこの世界のハーブや香辛料をいろいろと購入して試してみるとしよう。
「よし、あとは冷蔵庫で数日間置いて、塩抜きをしてから燻製して完成だな」
「かなり時間が掛かるものなのですね」
「そうだね。その分保存性も高まって、味も染みこませているから味もつくんだよ」
今考えると、元の世界のベーコンとかも結構手間が掛かっているよな。まあ、最近は燻製をせずに燻製の風味を付けることができる燻製液なんかがあるらしいけど。
さすがに大きめの肉のブロックを4つも冷蔵庫に入れたらもうパンパンだ。キャンピングカーの冷蔵庫は小さめだから、収納機能で別の肉や野菜なんかを収納できて本当に良かったよ。
「おっ、燻製料理の方はもうできたみたいだな。ちょっと遅めのお昼ご飯にしよう」
時刻はもうお昼を少し過ぎてしまったが、燻製ボックスの煙も収まってきて、燻製料理が完成したようだ。
燻製の煙によって人や魔物なんかが寄って来るかなとも思ったけれど、その心配はなかったみたいだな。ここは少し道からも森からも離れているから大丈夫だったようだ。
異世界だといろいろと気にしないといけないことが多いから大変である。
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