第72話 次の獲物
「よし、解体したワイルドディアと山鳥はキャンピングカーに収納しておいたよ」
遅めの昼食を食べて、解体したワイルドディアと山鳥をキャンピングカーの収納機能により保存をしておく。
せっかくだからついでに燻製料理なんかを作っても良かったけれど、川の傍の森の中で他の魔物が出てくる可能性もあるから、この森を出てからゆっくりとすればいい。
「それじゃあ、話していた通り、森の外に向かいながらもう一匹くらい探していこうか」
「はい」
「うん!」
「ホー!」
ここからは来た道を引き返しながら、もう一匹くらい獲物がいないかを探していく。今回の獲物で当分の間の肉や野草なんかを手に入れることができたけれど、せっかくならもう一匹くらい肉を確保しておきたい。
せっかく時間を止めることができる収納機能があるのだから、食料を多めに確保しておいた方がいいだろう。それにもっと時間が掛かると思っていたけれど、コレットちゃんの索敵能力は本当にすごかったからね。
もしかしたら今日中に解体することができないかもしれないけれど、そしたら明日にすればいいだけだ。
「それじゃあ今日はここまでにして、森を出ようか」
「ええ、日が暮れるまでにはまだ少し時間がありますが、早めに移動をした方が良いでしょう」
「うん、日が暮れたあとの森は危ないから、早めに出た方がいいと思うよ」
「ホー!」
昼食をとったあと、周囲を探して獲物を探しつつ、森の出口へと進んでいった。
残念ながらワイルドディアを狩った後は何も狩ることができなかった。コレットちゃんのおかげで森の中でいくつかの魔物を見つけたのだが、見つけた獲物はあまりも小さかったり、ミーアルフォックスのように食用に適さない魔物だった。
肉は手に入らなかったけれど、その分野草やキノコなんかはいろいろと手に入ったからな。
日が暮れるまでまだ少し時間があるけれど、みんなの言う通り夜の森は非常に危険だから早めに戻るとしよう。
「……っ!? シゲトお兄ちゃん、ちょっと止まって!」
まっすぐ森の出口へと進んでいると、先を進むコレットちゃんから待ったが掛かった。
慌ててコレットちゃんに従って、全員で身を低くしながら小声で話す。
「あっちに何か大きな魔物がいるみたい。多分だけれど、さっきのワイルドディアの倍くらいは大きそうかも……」
コレットちゃんは耳をピンと張ったまま何かを探るような仕草をしている。
「……大きな魔物ですか。数はどうですか? さすがに大きな魔物の群れであった場合には、今すぐ撤退した方がよいでしょう」
確かにジーナの言う通り、大きな魔物がたくさんの群れを引き付けて襲ってきたら、この3人では防ぎきれない可能性の方が高い。その場合は時間が掛かったとしてもその魔物を迂回して森の出口へ進んだ方よいだろう。
「数はひとつだけだよ。でもあの大きさだと僕じゃ絶対に敵わない相手だと思うし、いつもなら迷わず逃げるところなんだけれど……」
コレットちゃんはまだ幼くそれほど大きな身体をしていないし、さすがにひとりで大きな魔物を相手にすることは難しいだろう。
とはいえ、こちらにはあの大きなディアクを倒すことができるジーナもいるし、先ほどのワイルドディアの止めを刺したフー太もいる。食用の魔物であれば、身体が大きい分かなりの食料になるけれど、危険もあるし判断が難しいところだな。
「それでは離れた場所から様子を窺い、問題なさそうな相手なら戦うのはどうでしょうか?」
「……そうだね。それが一番良さそうかな」
実際のところ、それが一番の現実的な選択のようだ。さすがのコレットちゃんでも聴覚や嗅覚で相手がどれくらい強いかまでは分からない。
だけどこちらには目がとてもいいジーナとフー太がいるし、かなり距離を取った状態で敵を視認できるのは大きい。そして早く見つけられるということは奇襲ができるわけだから、こちらが優勢にことを進めることができる。
「うん。それじゃあ、風下のこっちの方から進んでいった方がよさそうだよ」
「ああ。お願いするよ」
コレットちゃんの指示に従って、できる限り音を立てないようにゆっくりと移動をする。
「……初めて見る魔物だけれど、すっごく強そうな魔物だね」
移動を始めてしばらくすると、かなり先の方に巨体な魔物をジーナとフー太が発見した。こっそり木や草の陰に隠れながら少しずつ近付き、ようやく俺やコレットちゃんもその魔物の姿を視認することができた。
「あれはおそらくダナマベアですね。村にいた際、何度か狩ったことはありますが、大きな個体かもしれません。食材としても美味な方ですが、かなり強い部類の魔物です」
ジーナは以前にあのダナマベアという魔物を狩ったことがあるみたいだけれど、今俺たちの目の前にいる魔物ほど大きくはなかったみたいだ。
今回はコレットちゃんやフー太がいるとはいえ、あれほどの巨体の前にどれくらいジーナの援護ができるか分からない。
「ジーナ、無理はやめておこう。怪我をする可能性が少しでもあるなら諦めよう」
戦闘に素人な俺には魔物の強さなんてさっぱりだが、大きなクマ型の魔物というだけで、かなりの脅威に感じてしまう。
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