第71話 ホルモン
「それじゃあ、一度川に入ったあと、順番にシャワーを浴びてきてね」
「はい」
「うん」
解体作業でだいぶ汚れてしまったので、シャワーを浴びるとしよう。
狩りをして解体をする時は獲物についたダニや虫なんかが付着する可能性が高いため、キャンピングカーの中へ入る前に一度川で水浴びをしてもらう。
血抜きをしたあとに川で洗ったのだが、その前に服へ付着してしまったかもしれないからな。キャンピングカーの中にダニや虫なんかを入れないためにも念には念を入れておこう。
「さて、それじゃあ俺たちは昼ごはんの準備をしていこう」
「ホー!」
ジーナとコレットちゃんが先に水浴びをしてシャワーを浴びている間に俺とフー太は昼食の準備だ。
……それにしても、キャンピングカーを挟んだ反対側でジーナとコレットちゃんが水浴びをしているというのは少しドキドキしてしまう。もちろんフー太も隣にいるし、のぞきなんてするつもりはないからな!
「まずは内臓系から食べていくか」
早速狩ったばかりのワイルドディアのハツやレバーなんかを使って料理をしていくとしよう。キャンピングカーの収納機能は中に入っている物の時間も止まるから、先に内臓系を消費する必要はないのだが、内臓系は頻繁に食べられないから食べたくなってしまった。
「臭みがある系のホルモンは臭みを抜かないといけないんだよな」
ジーナやコレットちゃんにも確認したところ、ワイルドディアのホルモンも食べられるらしいけれど、腸とか胃とかは臭みを取ってから食べるらしい。俺のうろ覚えの知識でも、牛乳とかに漬けて臭みを取ったり、生姜とかと一緒に下茹でをした方が良いはずだ。
そっちの方はあとで処理をするとして、確実に食べられそうなハツとレバーから使おう。新鮮な状態なら生で食べるハツ刺しとかレバ刺しもいけそうな気がするけれど、さすがに異世界でいろいろとリスキーすぎるからちゃんと火を通す。
「ええ~と、まずは周りの白い脂の部分を切り落としてから、一度冷水で臭みを取って一口大に切るっと……」
ハツとレバーの下処理をしていく。元の世界では完全に処理されてスーパーに出回っているものだが、当然こちらの世界ではそういった細々したこともすべて自分でやらなければならない。
解体も自分たちで血まみれになりながら、きつい臭いに耐えて慎重に食べられる部位を切り分けるという苦労もあったもんな。まあ、その分普通にスーパーで購入してきた肉を食べるよりもおいしく感じるというものだ。
元の世界のように調理方法もすぐにスマホで調べることができないが、逆にこういった不便さもある意味面白いのかもしれない。いろいろとみんなと試行錯誤をしながら物を作ったり、料理をしてレシピを覚えていくのも悪くないのかもな。
「よしっ、完成!」
「うわあ~いい匂い!」
「とてもおいしそうな香りですね!」
「ホー♪」
ハツとレバーの下ごしらえを終え、他の食材を切ってからジーナとコレットちゃんと交代してフー太と一緒にシャワーを浴びた。俺たちが水浴びをしてからシャワーを浴びている間に2人には他のホルモンの部位の臭み取りの処理をお願いした。
そしてシャワーを浴びたあとに下ごしらえした料理をみんなで仕上げた。1人で料理をするのも楽しいものだが、やはりみんなで協力して料理をするのは楽しいものだ。
「今日の料理はレバーとハツを焼いたものと、野菜と一緒にタレをつけて焼いたものだよ」
まずはシンプルに焼いたレバーとハツに塩だけを掛けたものとアウトドアスパイスをかけたものだ。
「うん、やはり狩ったばかりのものは新鮮で臭みがなくてうまいな。十分に塩だけもすごくおいしいぞ」
「とってもおいしい!」
「ホー、ホー!」
おおっ、これは初めての経験だ! ハツやレバーを焼いたものはこれまでにも食べたことはあるけれど、それよりも断然うまい!
本当に臭みがまったくないものなんだな。特にレバーは元の世界ではそこまで好きじゃなかったけれど、これは本当にいけるぞ! 舌触りもとてもよく、塩だけでもめちゃくちゃうまいし、アウトドアスパイスの味付けもいいな。
こっちのハツはこのコリコリとした食感にレバーと同様に臭みはなく淡白とした肉の味がこれまたうまい。
「ああ。タレの味がとてもうまいぞ!」
「こっちの料理もとってもおいしいです!」
「ホー♪」
「これはレバニラという料理だよ。ハツもあるからハツレバと言うのかな?」
レバーといえばレバニラだよな。なぜレバーとニラなのかというと、確かレバーの栄養をニラが促進してくれるんだっけか。
ジーナの村でもらった野菜の中にニラがあったので作ってみた。さすがにレバニラ定番のもやしはなかったが、ニラがあればレバニラとハツニラになるはずだ。……もやしがなければレバニラじゃないって? 細かいことはいいんだよ!
うん、作ったタレも我ながら上出来じゃないか。しいて言うならば、白いご飯が欲しい。レバニラにはご飯が必須だと思うのはきっと俺だけではないはずだ。
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