第66話 就寝スペース
ジーナと出会った時に狩ったディアクの肉がもうほとんどなくなってきた。
一応まだ金貨は残っているし、新しい村や街へ行ったら、アウトドアスパイスやコショウや塩なんかの調味料を売ってこの世界のお金に換えることは変えることができ、そのお金で肉を買うこともできる。
だが、せっかく狩りの経験があるジーナとコレットちゃんがいるわけだし、一度このメンバーで肉を確保できるかを確認しておきたい。それにできる限り調味料を売るのはオドリオの街のエミリオ商会だけにしておきたいからな。次の目的地へ行く前に、ちょっとだけ寄り道だ。
「狩りなら私に任せてください!」
「ぼ、僕も狩りならお手伝いできます!」
「ホー! ホー!」
どうやらみんなもやる気満々のようだな。ジーナやコレットちゃんはともかく、フー太もやる気満々らしい。そういえば元々フクロウはネズミとか小鳥なんかを狩るんだっけ。
とはいえ、絶対に危険なことはしないつもりだ。できる限りは山や森の奥には入らないで獲物を探すとしよう。フェビリーの滝を見る時に入った山でも思ったが、最悪の場合にはキャンピングカーを出して逃げられるような開けた場所があればなおいい。
コレットちゃんは耳がいいから、森の中でも警戒はできそうだが、念には念を入れておくことにしよう。
「さあ、それじゃあ明日に備えて早く寝よう」
「コレットちゃんはジーナと一緒に後ろで寝てね」
「うわあ~とっても柔らかいよ、シゲトお兄ちゃん!」
最近のキャンピングカーのベッドはかなり快適に寝られるよう進化している。当然馬小屋なんかで寝るのとは天と地ほど寝心地が違うはずだ。
このキャンピングカーの最大定員は10人ほどだが、実際に横になって寝られる人数は5人ほどとなっている。一番後ろのスペースが大きなベッドスペースとなっていて、ここで3人まで横になって寝ることができる。
そして普段使用しているテーブルのあるソファ席を変形させてベッドにすることができ、そこで2人が寝られるようになっている。普段俺とジーナはそのどちらかに交代しながら寝ていた。今日からはコレットちゃんも一緒になるので、後ろの広いベッドにジーナとコレットちゃんに寝てもらう。
「寝心地もかなりいいと思うよ。寒かったら上に布団をかけて寝るんだよ」
「うん!」
寝心地については問題なさそうだな。ちなみにこのバスをベースにしたキャンピングカーであるバスコンには付いていないのだが、トラックベースのキャブコンによくあるバンクベッドも魅力的なんだよね。
キャンピングカーの車体の運転席部分の上にある出っ張った場所だ。実はあの部分はキャンピングカーの内部から、物を置いたり寝るスペースにできる。寝心地的には間違いなく後ろのベッドの方がいいけれど、はしごを使って登る秘密基地みたいになっているから、男心がくすぐられるんだよね。
本当に寝ようと思えば、前の座席に座りながら寝たり、通路の地べたにマットと寝袋を敷いて寝ることも可能だが、せっかくのキャンピングカーで横になって寝なくてどうするって話だよな。
まあないとは思うが、これ以上乗員が増えることになったら、キャンピングカーの車体拡張機能をポイントで取ってもいいかもしれない。おそらくだが、そのままの意味で車体が広がってスペースが広く使えるという機能だろう。
「そういえばコレットちゃんは耳が良いって聞いたけれど、このキャンピングカーの外に魔物が現れたら、その気配は分かったりするのかな?」
「えっと、ちょっと待ってください。……はい、近くまで来たら分かります」
犬耳ならぬ黒いオオカミ耳をピンと張って周囲の音を確認するコレットちゃん。なんだかその姿も可愛らしい。
「ここまで近付いてきたら、寝ていても気付けそうです」
「おおっ、それはすごいね! 一応寝る時には大きな音が鳴る道具を仕掛けているけれど、今まで以上に安心して眠ることができるよ」
「シゲトお兄ちゃんたちの役に立てそうで良かったです!」
キャンピングカーの周囲にはこの前作ったお手製の大きな音が鳴る楽器を付けた鳴子を見えにくい釣り糸で結んだ鳴子を張り巡らしているが、コレットちゃんが近くの音に気付いてくれるなら、今まで以上に安心して寝られるようになるだろう。
「でも無理はしないで大丈夫だからね。このキャンピングカーはとっても固くて丈夫で、多少の傷なら一日経てば直っちゃう特別製だから、夜はぐっすり寝るんだよ」
コレットちゃんのことだから、無理して寝ずの番とかしちゃいそうだもんな。休む時にはゆっくりと休んでもらわないといけない。
「一日経てば直っちゃうんですか!?」
「うん。機会があったら見せるよ。だから無理だけはしちゃ駄目だよ」
「はい!」
さすがに実験とはいえ、自分からキャンピングカーを傷付ける気はないから、今度傷ができたらになる。この世界の道は舗装なんてされていないから、明日になればまた細かな傷ができるだろう。その際にまた見せてあげるか。
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