第12話 占いの結果
「よし、じゃあさっそく準備しますね!」
そう言って彼女が懐からタロットカードのようなものを取り出し始める。
そして一枚一枚のカードがきちんと揃っているのかを確認し、次に深夜に近い時間になり、暗くなってしまった夜空を見上げ始めた。
「うん、星もバッチリ見えますね」
俺はそれを緊張した面持ちで観察する。
占いというものはわからないが、その本物っぽい様子に期待で胸を膨らませる。
前世では意外と朝のニュースの占いとか毎日見ていたりしていた。なんか見たくなっちゃう魅力があるんだよね、占いって。朝の気分もあれでだいぶ変わったりするし。
しかしながら俺が死んでしまった朝の星座占いで、一位と元気よく言いやがったあのニュース番組はいまだに許せないが。
過去の嫌な思い出を思い出していると「準備が終わりました」とクレスが声をかけてきた。
「えっと、それじゃあ俺はどうすればいいんだ?」
「えっと、お兄さんは私が今持ってるカードに手を当てて目を瞑ってください」
俺はそれに従い彼女が手に持っている、数十枚ほどが束になったカードに手を当てて、そのまま目をつぶる。
「そしたら自分の中で適当に夜空に浮かぶ星々を想像してくれれば、あとは大丈夫です」
「星々・・・」
ずいぶんふわっとした指示だな、と思いながら適当に、夜空に浮かぶキラキラとした星々を想像してみる。
すると急に目の前で急激に魔力が膨れ上がるのを感じた。俺はその魔力に驚き目を開けようとするがクレスに「目は閉じたままでお願いします」と注意をされ、再度目をきつく閉じる。
それから何枚ものカードが高速で動いているのを、当てている手で感じ取っていると、やがてそれが急に収まった。
「もういいですよ、目を開けて」
そう言われて目を開けると瞳を金色に輝かせているクレスに驚く。
「ちょっと待ってくださいね、今カード見るので」
「お、おう」
恐らく出たカードの並び順を確認してるのだろうか、クレスがカード一枚一枚凝視するように見る。そして確認し終わったのかカードを懐にしまい、こちらを見る。
「終わりました」
「終わったか、で?どうだった結果は」
そう俺が言うとクレスは気まずい顔を浮かべて俺の顔を見る。
「とりあえず今年一年を占ってみたんですけど・・・最悪ですね」
「さ、最悪?」
「はい、そうです。お兄さんは今年一年、今まで生きてきた中で一番思い通りにならない一年になるでしょう」
「思い通りにならない・・・」
な、なるほど・・・。確かにこの前の模擬戦闘の件もあるし、今日のこれもあるしな。うん、あながち間違ってないかもしれない。
・・・や、やばい。なんだかすっごいへこむなこれ。最悪ってなんだよ最悪って。お守りとか買っておいたほうがいいのかしら?
「ぐ、具体的に何が起こるのかっていうのはわからないのか?」
「うーん、そこまではわからないです。あくまでも未来予知ってわけじゃなくて占いなんで。運命しか見れないんですよ」
「そ、そうか・・・」
確かに占いだしなぁ。抽象的になってしまうのは仕方ないか。
「ただ、人助けはしておいた方がいいですね、徳が積まれるので。今日わたしにご飯をおごってくれたのはとてもよい徳です。今後も同じようにすると運気も爆上がりでしょう」
「うん、それは嘘だよな。何となくわかる」
そんな彼女の都合のいい占い結果に引っかかるほど俺もバカではない。
彼女は俺を食い扶持にできると思っていたのか「ちっ」、と舌打ちをして続きの占いの結果を話す。
「・・・それと探しものは北に向かうとよいかと」
「北に・・・」
その後も「大事なものは目を離してはいけません、失くしてしまうので」や「一人で動くのではなく仲間と動きなさい」などなど様々なアドバイスを頂く。
「あと、ラッキーアイテムは女性の下着です」
「・・・う、うん?それは本当に?」
「ええ、ガチです」
え、それがラッキーアイテムなの!?マジ? 俺が占いの結果を聞いて驚いていると、
「以上が占いの結果になりますね」
「・・・」
占いの結果は最悪ではあったが、色々なアドバイスをもらった。これが俺にとってプラスになるかわからんが、一応気にはしてみるか。
俺がそう考えていると、クレスは伝え終わって疲れたのか、少し息をついてから懐中時計を取り出した。
そして、時間を確認したあと焦ったような表情を浮かべる。
「あっ、まずい。もうこんな時間ですか。すみません、ちょっと門限もう過ぎっちゃってるのでそろそろ帰えりますね」
「うん?あ、そうか。教会に暮らしているだけか」
「ええ、そこのセレス大聖堂で」
「セ、セレス大聖堂!?」
セレス大聖堂って言ったらオルスト王国の国教、セレス教の大本山じゃないか。
星の紋章も持ってるし、それにそんなところで暮らせるって結構身分高いじゃないか、コイツ。
「お兄さんとはまた会いそうな気がします、それじゃあまた!あ、帰りはお気をつけてくださいね!」
「うん?帰り?」
「ええ、不吉の予兆が出てるので」
そう言ってクレスは、時間がないのか急いでその場から立ち去っていった。
何だろうか、不吉の予兆って。なんか夜道で転んじゃったりするとかそんなか?
俺はそう疑問符を持ちながらも、先ほどの占いの結果を思い出してがくりと肩を落としたのだった。
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