第15話

アキは顔には出さないが、内心ワクワクしながら本を読んでいた。


「アキ様、何かいい事でもありましたか?」


リアンがニコニコしながらたずねると、アキは1度瞬きしてから首を縦に振った。


「王様と夜、祭りに行く」


「なるほど!!」


「はい!?」


リアンとノアは驚いていたが、2人は別の意味で驚いていた。


「アキ様、今日は...」


「いいですね!楽しんでくださいね!俺のおすすめは...」


ノアの言葉に被せるようリアンはアキにティーカップを渡して話題を変えた。

それからリアンとノアに祈祷祭について詳しく教えて貰っていると、外から軽快なラッパの音が鳴り響いた。


「始まりますよ!祈祷祭!」


本来は異世界人が表に立って国の為に祈祷をするのだが、アキは戦争に参加しないため特に出る必要がなく、大人しく外の音に耳を傾けた。


リアンとノアも静かに聞いていた。


『まずは、今日を迎えられたことを心から喜ぼう、今までこの国を護ってくれた英雄たち、そして歴代の異世界から来た英雄達に祈りを捧げる。』


ヘルジールの低く力強い声が城中に満遍なく響く。


『今回は止むを得ない事情があり異世界のお方は姿を出せない、 が、とても神聖な力が宿ったお方だ、次の戦争も皆を護ってくれるお力を十分に発揮してくれる事だろう。恐れることは無い!次こそ、我々の勝利を皆に約束しよう!』


『ヘルジール陛下に勝利を!ヘイズレイド国に勝利を!!』


ヘルジールが声を張り上げ高らかに宣言すると場内でそれを聞いていた騎士たちが剣をヘルジールに掲げた。

その剣の先に立っているヘルジールは、王様の風格を惜しみなく放っていた。


少しの間を起き、あちこちから大きな花火が上げられた。

それは綺麗な花のような形になってキラキラと光を放つと少しずつ消えていった。


「あの花...」


アキは窓から見えた花火を見て思い出した。


それは場内を埋めつくしたあの白い花だった。


「あの花はこの国の象徴なんです。イレイって名前で、咲かせられるのは陛下だけなんですよ。」


「そして、この花火はここにいる騎士の数だけ上がります、今年は2068発ですね。」


リアンとノアはアキの後ろで剣をヘルジールの方に向け掲げながら説明した。


アキは花火が終わるまでそれをただじっと見ていた。





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世界平和 @kasumi_02

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