第13話
アリスはあからさまに顔に嫌悪感を表し、そのまま部屋を出て行ってしまった。
「アキ様、アリス様と何かありましたか?」
「別に何も無い」
アリスと入れ替わるように入ってきたリアンとノアは、アキの顔色を伺いながら尋ねてきたが直ぐに何かを察してそれ以上は聞かなかった。
窓際の椅子に導かれるようにアキは座ると、外の景色を見ながら動かなくなった。
2人の護衛はただそれを見守ることしか出来ず、結局アキはその椅子に膝を抱き抱えた体勢をつくるとそのまま眠ってしまった。
「あのままだと身体痛めますよね、運びますか?」
ノアがリアンに耳打ちで尋ねるとリアンは少し考えた後、首を横に振った。
2人はそのままヘルジールが来るまでアキの睡眠を見守っていた。
数時間ほど経ちヘルジールが扉を開け入ってくると、リアンとノアは頭を下げ部屋から出た。
ヘルジールは窓際に丸まって眠っているアキの姿を見ると少し笑った。
(またあそこで寝てる、気に入ったのかな)
ヘルジールは大きなソファに座ると、テーブルに置かれたままの3つのカップのうち1つのカップの中身を見ると、少しだけ残された赤茶色の紅茶はヘルジールの顔を映した。
ヘルジールは会議の内容を頭を抱えて思い返していた。
「陛下、あの者をどうにか説得できませんか?このままでは我々は…」
「あぁ今までこんなことは無かったのに、とうとう我々の運は尽きたのか…」
「しかし、今までの異世界人とは違い今回はなんと言うか…」
「魔力を感じられませんでしたね」
皆が言葉をにごらせる中、はっきりとそう言った青年はヘルジールを見て答えを求めた。
ヘルジールは1回大きなため息を着くと短く答えた
「1週間様子を見る、それでもアキの意思が変わらなければ、もう一度儀式を行う。」
ヘルジールの言葉を聞いた他の者は皆口々に異議を唱え始めた。
「陛下!お忘れですか!?儀式には、ヘイズレイドの血が必要なんですよ!?もう陛下しか残っていないんですよ!」
「陛下がいなくなればこの国は終わりです!どうしろと!?」
「…この話はここまで、みんな解散だ。」
ヘルジールは早々に立ち上がり部屋を出た。
ヘルジールは朝の魔力供給の様子を思い出しながら頭を抱えた。
「アキには魔力が無い…」
朝の魔力を流す作業は実はヘルジールがアキの魔力を測るためだったのだが、魔力の流れを感じなかったアキに疑問を抱き、自分の魔力を少し貸しただけだった。
その時の反応は、『拒絶反応』だった。
つまり耐性がなく元々魔力を持たないことを示していた。
今までそんなことは無かったためヘルジールは困惑した。
まさか、ただの人間が送られてくるとは思ってもいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます