第12話
「アキ!大丈夫か!?」
扉が勢いよく開き、入ってきたヘルジールはアキの姿を見ると心配そうな顔で駆け寄って来た。
「ただふらついただけ、みんな大袈裟なんだよ。」
「そうなのか?アリス」
アリスは尋ねられアキの背中の痕について話すか迷い、ちらっとアキに視線をやると、アキの話すなと訴えてくる視線と目が合ってしまった。
「…貧血で一時的に意識を失っていたのかと思います。アキ様はもう少し栄養値の高い食事を摂るべきですね。」
栄養不足なのは間違いではなかった為、アリスは嘘はついてはいなかった。
「そうか、料理長に言っておく。俺もアキは少し痩せすぎだと思っていたんだ。」
ヘルジールがアキの腕を持ち上げながら言うと、一緒に入ってきたシグも頷いて同意していた。
「陛下!!」
「ディグヴァ、もう少し遅く来てくれてもいいんだが」
「何言ってるんですか!会議中に急に転移魔法なんて、みんなびっくりしてますよ!早くお戻りください!」
ディグヴァと呼ばれた男は名前に似合わず小柄で可愛らしい、女の子のような少年だった。
「アキ、今日はゆっくり休むように、王様命令。」
ヘルジールはそう言ってアキの頭を撫でるとディグヴァと出ていってしまった。
扉が閉まる直前、ディグヴァがアキに悪意を込めた視線を寄こしたことに気づかぬまま、アキはアリスと改めて話の続きをした。
「アキ様、なぜ陛下に相談なさらないのですか?」
「別に、俺の事で王様には関係ないから、変に大事になると面倒だし。」
アリスはその言い方に少しムッとしながらアキに強く言い聞かせた
「アキ様、はっきり言っておきます。過去の傷は消えませんが、その傷を理由に差し伸べられている手を払い除けるのはバカですよ。」
アキはその言葉の意味がわからず逆に言い返した。
「払い除けてない、元々視界に入らないから。」
誰かの好意を受け取るどころか見る事さえしたくない、アリスが完全に拒絶されたことは明白だった。
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