第10話

「俺はこれから会議があるから、好きにしていてくれ、この2人をアキにつける、何かあれば2人に言ってくれ、じゃあまた後で」


「ありがとう」


礼を言ったアキにヘルジールは軽く手を挙げて部屋から出ていった。


「アキ様、なにか必要なものはありますか?」


「…特に無い」


リアンの問いに少し考えてから答えたアキは、2人をさっきまでヘルジールが座っていた場所へ手招いた。


「アキ様、身分の高いお方と同じ席に座るのはダメなんです。」


「俺は貴族でもないしただの一般人だ、話し相手も欲しいし、知りたいこともある。だからゆっくり座って話そう」


アキがそう言うと渋々といった顔で2人はアキの正面のソファーに座った。


「聞きたいこととは」


「2人のこと」


「私達は陛下の護衛騎士です、上司はご存知の通りシグ団長です。」


ノアが淡々と説明をする。


「ちなみに俺が副団長です、こいつは俺の部下なんですよー」


ノアの横でにこにこしながら手を挙げたリアンにアキは固まった。


どう見てもノアの方が歳上に見えるしガタイも良い。


「今、そんな風には見えない、なんて思ってるでしょ、こいつ見た目だけは俺よりいいから、よく逆に思われるんですよね、まぁ、俺の方が強いんですけど」


リアンがヘラヘラしながらそう言っている間、ノアが目を細めてリアンを睨んでいた。


「2人は、仲がいいんだな」


「そうですね、俺たち40年位の付き合いなんで」


アキは思わず口にしていた紅茶を吹き出した。


「40年?2人は今何歳?てか、王様何歳?」


「俺は76歳です」


「私は72歳です」


「陛下は120歳ですね」


「…」


アキは言葉を失った。せいぜいリアンが20代前半、ノアが30代前半、ヘルジールが20代後半だろうと思っていたのが、まさかの高齢者とその先までいっている人達だったとは思ってもいなかった。


「アキ様は60歳くらいですかね?」


「…俺16歳、です」


アキは急にタメ口で話していたのが申し訳なくなり、つい敬語になってしまった。


「え、わっかーい!産まれたてじゃないですか!」


「俺のいた世界の平均寿命は80前後だから、俺にとっては王様と2人はおじいちゃんです。」


「え、おじいちゃん」


「…おじいちゃん」


「魔法使いってみんな長生きなのか?」


「平均300歳くらいですかね」


「…ファンタジーすごい」


「俺たちからしたらアキ様の方がファンタジーですよ」


アキは改めて異世界に来たんだと実感した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る