第9話

「すごいな…」


アキはしばらく庭から離れられなかった。


ヘルジールはそんなアキをただ静かに隣に座って待っていた。


しばらくして立ち上がったアキにヘルジールは提案した。


「アキ、魔法は戦う為だけの魔法ばかりじゃない、さっきのような魔法も沢山ある、覚えてみるのもいいと思うぞ」


「そうだな、それもいいかもな」


アキは初めて笑ってヘルジールに返した。




部屋に戻るとアキは機嫌良さそうにヘルジールと色んな会話をした。


「魔法には詠唱というものがあり、詠唱をすれば精度と効果は上がるが時間がかかる為、戦闘中は詠唱をしないことが多い。」


「さっき庭で何か言ってたのも詠唱ってやつなのか?」


「そうだ、少し省いたが俺の魔力ならこの街全体に花を咲かせることも出来る。つまり元々の魔力が強ければ詠唱をしなくてもある程度の魔法が使える」


「じゃあ今街は」


「花が咲きまくってるだろうな」


ヘルジールは外を見ながら答えた。


「俺も、できる?」


「もちろん」


「教えて欲しい、魔法について」


「そうだな、アキは今自分の魔力の流れを感じられるか?」


「いや、なにも感じない」


「そうか、なら俺の魔力は感じれるか?」


ヘルジールがアキの手を取る。


「少しピリピリする」


「それが俺の魔力だ」


「もっと強くしてもいいか?」


アキが頷くとヘルジールは一気に魔力をアキに流した。


「ま、待って王様、痛い!」


「我慢して」


「無理だ!王様っ!」


「大丈夫、深呼吸してゆっくり手から脳に流すのをイメージして」


「できなっ」


アキは痛みのあまり唇を噛み締めていた。

血が流れるのを見たヘルジールは魔力を弱めた。


「アキ、これならどうだ?」


「少し、マシになった」


「じゃあさっきのイメージできるか?」


アキは頷いた。


「手から脳に…」


瞬間、アキの身体中がピリピリと弱い電気が流れる感覚が来た。


「うっ…」


ヘルジールが手を離すと、アキの手に暖かい何かが集まっているのが感覚で分かった。


「アキ、今手に意識的に魔力を集めている状態だ、今度はそれを俺に流すイメージをしてみろ」


アキはヘルジールがしたように手を取ると手の中の暖かい何かをヘルジールに送るイメージをした


「流す…」


「くっ」


ヘルジールの声が聞こえたところで視線を手元からヘルジールに移すと、辛そうなヘルジールと目が合った。


「あっ、ごめん、大丈夫か」


「大丈夫だ」


アキは近くのコップに水を注ぎヘルジールに渡す。


「アキ、すごいな」


「なんだよそれ」


「俺には説明できない、どう言っていいのか分からない」


少し曖昧な表情で曖昧な言い方をするヘルジールにアキはムスッとしながら尋ねた


「それってどういうことだよ」


「陛下、食事の準備が整いました」


タイミングよくドアが開かれ、テーブルにたくさんの料理が置かれていく。


「先に食事だな」


「うん」


アキはヘルジールにテーブルマナーもついでに教えて貰いながら朝食を取った。

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