第8話

コンコンと軽いノックが数回鳴り、ドアが開く音が聞こえたアキは目を覚ますと、眩しい光が目の前を真っ白に染めた。


「おはようアキ、ここで寝てたのか」


椅子で寝たせいで痛めたからだを伸ばしてヘルジールを見ると、目が合った。


「おはよう王様」


「昨日も思ったが、王様はやめてくれ」


「じゃあなんて呼べばいい」


「名前で呼んでくれないか」


「名前」


「そうだな、友は皆ジールと呼んでいた。」


「…俺にその名前を呼ぶ資格は無い。」


ヘルジールは寂しそうに苦笑いした。


「そうか、アキの好きなように呼んでくれ、朝食はここで一緒に取ろう。」


アキは頷くとヘルジールに尋ねた。


「俺は、これからどうなるんだ?」


「そうだな、アキはどうしたい」


「俺は、静かに暮らしたい」


元の世界に帰ってまたあの日々を繰り返し送ると思うと怖くなり少し顔を歪めたが、その表情を悟られぬようにアキは窓の外の歩いていた兵士を見てそう答えた。


「アキ、少し外を歩くぞ。朝食はその後にしよう。」


アキはヘルジールに手を引かれて部屋の外に連れ出された。




城を出るまでの間、たくさんの人に出会った。メイドに執事、老若男女色んな人達が居たが、皆魔法使いで好きな見た目で成長を止められる為、少女が老婆を叱る場面を見たり、少年が中年の男をボコボコにしてい場面などを見てアキは頭の中がぐるぐる回っていた。

しばらく歩いてやっと庭に出た時、気づけば護衛のシグとシグの部下のリアンとノアが居た。

ヘルジールはたまに屋根の方を指さしたり、大きな気の方を指さして、隠密の護衛が居ることも教えた。


リアンは少しおしゃべりな少年で、アキが気になることを先に説明してくれた。

おかげでヘルジールが喋る隙がないほどだった。


ノアはそんなリアンをニコニコしながらただ見ていた。


アキはそれを聞きながらヘルジールの横を歩いていた。


少し歩き、緑で溢れた庭の中にぽつんと見えガゼボにヘルジールとアキだけで向かいベンチに座って休憩する。


「アキ、魔法を見た事はあるか?」


「無い、俺の世界では魔法なんて空想の話の中の存在だったからな」


「そうか、なら見せてやる」


ヘルジールは得意げに笑いながらそう言うと、目を瞑った。


「レスメ・バル・フロー・ダリア」


ヘルジールが唱えると、庭の緑が一気に白く染まった


アキは言葉が出なかった。


「これが魔法だ」


ヘルジールの白銀の髪が庭中の白い花と共に揺れた





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