第4話
「アキ、アキ」
優しい声で目を覚ましたアキは寝ぼけた目を開くと、目の前にヘルジールの顔が映った。
「あ、俺寝ちゃってた…」
「疲れてたんだな、食事の準備が出来るが、こっちに持ってきた方が良さそうだな」
「ありがとう」
「いや…」
アキは礼を言うと、ヘルジールが小さく笑った。
細長く少しつり上がった目が更に細くなる。
なぜ笑ってるのか分からず首を傾げていたアキの頭にヘルジールが手を伸ばした。
「ここ、跳ねてる」
アキの頭を優しく撫でる手はしばらく止まらなかった。
「そろそろ、恥ずかしいから止めてくれないか?」
最初は撫でられるのに慣れていなかったため新鮮な感覚に驚いていたアキだったが、段々と恥ずかしくなってヘルジールの腕を掴んで止めさせた。
「すまない、ついな」
「こういうの慣れてなくて、ごめん」
「……アキ、すまない」
「ん?もういいって、そういえば、なんで俺の名前知ってるんだ?」
「それは…」
ヘルジールの言葉の続きを待っていると扉がノックされた。
「お食事をお持ちしました」
「入れ」
ドアを開けて入ってくるメイド達は素早く食事を運び入れる
「いっぱい食べてくれアキ」
見たことも無い食事にアキは少し困惑していると、ヘルジールが小皿に取り分けてそれを渡した。
アキはそれでも手をつけようとはしなかった。
チラチラとヘルジールを見て様子を伺うように何かを待っていた。
ヘルジールもそれに気づきアキに声をかける
「なにか、嫌いなものでもあったか?」
「あ、いや、そういうのじゃなくて」
ヘルジールはアキの考えていることは全く分からず、困惑しているとアキは小さく話し出した。
「悪いな 俺なんかの為に」
それを聞いた時、ヘルジールは何となく察した。
それは自分も過去に似た経験をしたことがあったからだった。
ヘルジールはたくさんの料理を乗せた皿をどんどんアキに渡した。
「悪いなんて思うな、あと俺のことは気にしなくていい。ほら、早く食べてみろ」
口調は少しきついが、顔は優しく微笑んでいた。
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